リアクション ザ ブッタ、刺さる恋愛ソングを武器にメジャーリリース “人に言えない感情”を歌にする喜び

 リアクション ザ ブッタが、2007年の結成からの軌跡をまとめたベストアルバム『REACTION THE BEST』でメジャーリリースを果たした。精力的なライブ活動で着実にファン層を拡大し、「ドラマのあとで」によってTikTokを中心に近年大きな反響を集めた彼ら。ベストアルバムには、その再録版「ドラマのあとで - retake」を皮切りにバンドのターニングポイントを彩ってきた13曲(CDはボーナストラック付の14曲入り)が収録されている。改めて振り返る「ドラマのあとで」の制作秘話から、そのアンサーソング「恋を脱ぎ捨てて」や各々の思い入れの深い曲のエピソードまで、佐々木直人(Vo/Ba)、木田健太郎(Gt/Cho)、大野宏二朗(Dr)に語ってもらった。(編集部)

ライブにまで波及した「ドラマのあとで」バズの影響

佐々木直人(Vo/Ba)

――今作『REACTION THE BEST』は初のメジャーレーベルからのリリースとなります。率直なお気持ちはいかがですか。

佐々木直人(以下、佐々木):単純にすごく嬉しかったですね。

木田健太郎(以下、木田):メジャーリリースはずっと目指していて。本当は20代前半のうちにメジャーと契約して世の中にバンッと出ていくのを想像していたんですが、今32歳。「ようやく」という気持ちです。

大野宏二朗(以下、大野):逆にもうメジャーリリースはないかもしれないとも思っていたので、「できるんだ!?」って思いました。

リアクション ザ ブッタ「ドラマのあとで」 LIVE MV / Reaction The Buttha - Dorama no atode (After the drama)

――そんなリアクション ザ ブッタの人気を改めて押し上げたきっかけは、「ドラマのあとで」。2017年リリースの7thミニアルバム『After drama』の収録曲ですが、2022年頃からTikTokで話題を集め、今の人気につながっていきました。リリースから時が経って改めて話題になるという状況をどう捉えていますか?

佐々木:「こういうことが起こるんだ!」とすごく驚きましたね。TikTokやSNSを通して何かを起こしたいとは思っていましたけど、実際に起こるなんて。しかもライブ映像が広まるという一番いい形で聴いてもらえたので、嬉しかったです。実際にライブに来てくれる人たちも変わったんですよ。それまで来てくれていたお客さんに加えて、10代の人たちが来てくれるようになったり、男の子の割合も増えて。ライブにまで影響するんだなと。しかもこの曲をきっかけに初めてライブハウスに来たとか、「彼女に振られたばっかりなんです」とかいう子もいて。「この曲を作ってよかったな」と、より思いました。

――では改めてですが、この曲ができた経緯を教えてください。

佐々木:確か、2013〜2014年くらいにはワンコーラスくらいの形はあって、そこからなんとか形にしたいなと思っていたけど、なかなか形にならなかった。その後でメンバーチェンジも挟んだりして。木田とアレンジを考えていたけど、最初は全然うまくいかなかったよね。

木田:うん。

佐々木:プロデュースもしてくれている松本ジュン、通称“マツジュン”というピアニストがいるんですが、彼と一緒に構築していったんだよね、確か。

木田:いや、最初マツジュン抜きでベースを作って、「いい感じだね」となったけど、「ピアノ入れたいよね」という話からマツジュンの家に行ってピアノを入れてもらったんだったと思う。最初、AメロとBメロは今とは違うものがついていたんですけど、佐々木もしっくりきていないし、俺もアレンジがうまくいかなくて。いろいろ手探りで考えていく中で、今の形になりました。

佐々木:そうだ。当時の自分たちの曲にしてはBメロが長くて「長いかな、大丈夫かな」とすごく悩んでいたのを思い出しました。

――難産だったんですね。歌詞はどういったところから?

佐々木:当時の自分たちは20代半ばで、周りにサラリーマンになった友達がたくさんいて。そんなみんなの生活を想像しながら書きました。なんとなく頭の中で「疲れたなと思いながら21時くらいに電車に乗って、駅から家まで歩いて、その間にコンビニ寄って、玄関の鍵開けて」みたいな。

「恋を脱ぎ捨てて」は“上書き保存”できる女性の歌

リアクション ザ ブッタ「恋を脱ぎ捨てて」Music Video

――そこから今回、アンサーソングとして「恋を脱ぎ捨てて」が収録されました。これは「ドラマのあとで」のアンサーソングを作ろうと思って作り始めたのでしょうか? それとも作っているうちにアンサーソングだなと気づいた?

佐々木:アンサーソングを作りたいなと思って作り始めました。ただ、アンサーソングといっても、時系列でだいぶ曲が変わるんですよね。別れる前の付き合っていたときの曲にしようかとか、別れると決めたときの曲にしようかなとか、いろいろ考えました。この曲は別れた後の曲です。どうして別れようと思ったのかとか、そういうことも考えながら書きました。

――「恋を脱ぎ捨てて」ができたことで、「ドラマのあとで」がより切なく聴こえますよね。

佐々木:そうかもしれません。解像度が上がったというか。

木田:より鮮明になった感じがありますよね。

――この曲のアレンジやレコーディング時に意識したこと、大切にしたことはどのようなことですか?

木田:「ドラマのあとで」のアンサーソングということがわかりやすくなるといいなと思って、曲の構成は「ドラマのあとで」と全く一緒にしました。テンポもほぼ一緒、イントロもかなり近いものです。“同じ世界観だけど、微妙に違う、でも重なる部分もある”ということを意識しながらアレンジしました。すごく楽しかったですね。

大野:「ドラマのあとで」はナチュラルでポップス感が強いので、差別化を図るために、演奏する上ではエッジを効かせられたらいいなとは考えていたかもしれない。大人っぽさというか。

木田:「ドラマのあとで」の主人公は女々しい部分のある男性ということもあって、新たに収録した「ドラマのあとで - retake」はストリングスを入れた華やかでフェミニンなアレンジになっています。対照的に「恋を脱ぎ捨てて」の主人公の女性はロマンチストというよりは現実主義で凛としている。だからバンドサウンドでソリッドな感じにしようというのは、プロデューサーの宮田'レフティ'リョウさんも含めて話しました。

――確かに「ドラマのあとで」の主人公は未練を感じているけれど、「恋を脱ぎ捨てて」の主人公はその感情を振り切って前に進んでいます。

佐々木:そうそう。「恋を脱ぎ捨てて」では“ああしていればよかった”、“こうすればよかった”っていうことを入れないようにしたんです。振り返ることはあっても、“あなたとの日々はよかったよ、でも次に行く”っていう。それは意識して書いていました。“後悔はしてないよ”って。

――それはどうしてですか?

佐々木:僕の中の恋愛においての女性像なんですが……いろんな人がいるとは思いますけど、きっぱり次に進む方が多いなというイメージがありまして。男の人のほうが引きずっていて、連絡先を消したり、ブロックしたりできないなって。女性のほうが、いわゆる“名前をつけて保存”じゃなくて、上書き保存できる。だから、ここで歌うべきは後悔じゃなくて、ただ振り返っているんだっていう。だからタイトルも「恋を脱ぎ捨てて」になりました。

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