Red Hot Chili Peppers、1年ぶりのカムバックは最高の仕上がりに 東京ドームを掌握した圧倒的パワー

 中盤のハイライトは「I Like Dirt」と「Parallel Universe」の『Californication』コンボ。前回の来日公演では東京でも大阪でも演奏されていなかったので、これは嬉しい。当然イントロが鳴った瞬間にドームは割れんばかりの歓声に包まれ、オーディエンスは狂喜乱舞。〈I’m a California King〉――アンソニーの熱唱にシンガロングが重なる。そしてその「Parallel Universe」のあと、おもむろにフリーが茶目っ気たっぷりに歌い出した「トーキョードーム~、トーキョードーム~」という歌。なぜそのチョイスなのか、季節外れのクリスマス・キャロル「もみの木」の替え歌だ。気持ちよく歌って興が乗ったのか、続く「Reach Out」での暴れっぷりも最高だった。アンソニーも着ていたシャツを脱ぎ去って、いよいよライブはラストスパートに突入していった。

 結果的にこの後のアンコールへの狼煙となった『Blood Sugar Sex Magic』からの「Suck My Kiss」から、長い長いジャムセッションを経て「Californication」へ。そしてフリーがレイカーズカラーのジャズベースに持ち替え、洗練されたアンサンブルが印象的な「Black Summer」を披露すると、ジョンのギターとフリーのベースがあのリズムを刻み出す。瞬時に察したオーディエンスが歌い始める。「By the Way」だ。音源以上の情感を醸し出すアンソニーの歌、それとチェイスするように炸裂するビートとベースライン。たまらなくスリリングでエモーショナルだ。その「By the Way」が本編のラストチューン。ここまで14曲。密度の高いセットは、終わってみれば一瞬だった。

 その後のアンコール、戻ってきた4人(アンソニーは白いベースボールキャップを後ろ向きに被っていた)は「Under the Bridge」を披露。ドーム中でスマートフォンのライトが揺れ、美しい合唱が広がる。さんざんアグレッシブなライブを展開してきながら、ここに来て泣かせるというのは本当にズルい。語りかけるようなアンソニーの歌がとても美しく響いた。そして本当に本当のラストソングは、これがなければ終われない、「Give It Away」である。最後に爆発的な盛り上がりを生み出し、今回の来日公演はフィナーレを迎えた。

 演奏のスリル、メンバーのキャラクター、そして歴史的スーパーバンドにもかかわらず瑞々しさを失わない4人の情熱。この日の東京ドームには明らかに若いファンも大勢詰めかけていたが、ベテラン洋楽バンドのライブとしては異質ともいえるそんな会場の空気は、このバンドの得難い魅力を雄弁に物語っていた。この後バンドはアメリカに戻りツアーの最後のタームを駆け抜けることになる。その後はきっとしばらくツアーはないだろうが、そうした新たなファンのためにも、またいつか必ず日本に戻ってきてくれることを、心から願っている。

Red Hot Chili Peppers、ジョン・フルシアンテ帰還で轟いた無敵の躍動感 原点と進化を自在に繋ぐ東京ドーム公演に

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