吉柳咲良、音楽はありのままの姿を表現できる場所 『ピーター・パン』『ブギウギ』を経て念願の歌手に

『ブギウギ』共演者の趣里からもらったエール

ーーそのくらい歌うことが好きな咲良さんのキャリアがミュージカルからスタートしたっていうことは、今、振り返るとどう感じてますか。

吉柳:良かったと思っています。初めてのお仕事がピーター・パンだったんですけど、みんなの真ん中に立つっていう重みを13歳の時にすごく感じて。「あなた自身が一番に覚悟を持って立たないと、お客さんはきっと見に来ないよ」と言われていたので、この役を果たすための責任というものをそのときから肝に銘じてました。

ーーコロナ禍で1年間、公演ができなかった年もありましたが、中1から高3までの6年間、主役のピーター・パンを務めました。ご自身にとってはどんな経験になりましたか。

吉柳:責任や、周りの方がいてくださることへの感謝や大切さを学びましたし、お芝居の楽しさや発見、探究心も全部そこで見つけたと思います。他のお仕事も並行してやらせていただいてる中で、ピーター・パンを演じてるときだけは、子供でいることが許されたんですよね。役を演じている最中はいろんな重圧や責任を忘れて、心から子供の役を楽しめていた。ある種の逃げられる場所というか、支えでもあった。私がお仕事を続けてこられた場所でもあるし、なくてはならない場所でもあったし、原点ですね。そこから得た学びは今でも生きてるなと思います。

ーーピーター・パンのイメージが強すぎることに心配はなかった?

吉柳:でも、未だに言われるんですよ。「素が本当にピーター・パンみたいな子だな」って(笑)。

ーーあはははは。そうなんですね!?

吉柳:私もそう思っています(笑)。だから、ある意味、本当に嘘がなかったんですよね。心から楽しんでいたし、稽古の休憩中も子役ちゃんたちと一緒に走り回って側転したりして。演出家さんから「お前は危ないから本当にやめてくれ」って言われたりして(笑)。根本は、ピーター・パンを卒業して2年経った今でも変わらないし、きっと似てるんだろうなと思います。私にピーター・パンのイメージがついているのであれば、それは勝ちだなと思います。私のピーター・パン、記憶に残ってるんだ! って誇らしく思いますね。

ーー先ほど、山口百恵さんの名前も出ましたが、ミュージカルはもちろん、ドラマでも歌やダンスにまつわる役柄をたくさん演じられていることはどう感じてますか。

吉柳:やっと得意だと思っているものが仕事にできるようになってきたなと感じてます。私自身、歌うことが好きだから、歌える役をいただけるというのは、自分のやりたかったことが少しずつ実っていく感じがしてます。

ーーNHKの夜ドラ『褒めるひと褒められるひと』ではシンガーソングライターの川崎鷹也さんと共演してました。

吉柳:一緒に歌をセッションしたときに「私、歌が好きで、歌がやりたいんです」っていう話をしたら、川崎さんが「絶対にやった方がいいよ」と言ってくださって。「これからいろんな曲に出会っていくのが楽しみだね」と言ってくださったので、今回のデビューが決まったときに、真っ先に頭に浮かびましたね。あのとき、ああ言ってくださったなって。

ーー初の朝ドラ出演となった『ブギウギ』での経験はどうでしたか。

吉柳:もともとヒロインのオーディションを受けさせていただいたんですけど、結果としては、水城アユミという役をいただいて。10代の最後にまさかそんなサプライズが待っているなんてっていう驚きがありました。台本を読んでみたら、挑戦的でまっすぐな人物像だったので、反感をかいそうな子でもあるのかもしれないと思って。演じ方が問われそうな役だなと思いながらも、初めての朝ドラ出演にワクワクしてました。どうしたらこの役が霞まずにすむかなって考えてました。

ーー歌唱シーンもありましたね。

吉柳:「ラッパと娘」を歌うときは、爆発力があって、喧嘩腰で、どんどん暴れ回ってくださいというオーダーを受けて。水城アユミが1人で暴れ回って、どうだ! ってやるんですけど、後から趣里さんが歌う福来スズ子の「ヘイヘイブギー」はお客さんを巻き込んでいくんですよね。水城アユミは、あの場で、アーティストにとって、お客さんに対してどのように歌うことが大事なのかを知っていく。彼女がそこで成長する部分もあったので、私も学びが多かったです。

ーー先ほど、低音域の迫力のあるロングトーンの印象が強い山口百恵や中森明菜のキーが合うっておっしゃってましたけど、咲良さんは話し声も低めですもんね。

吉柳:だいぶ低いです。でも、ジュリエットの時は今の3倍くらい高めの声で演じてます(笑)。今年の私の抱負は「固定概念を壊す」というテーマにしてて。朝ドラの撮影中にも趣里さんに「私っていうイメージをとにかく壊していく1年にしたいんです」と話したら、「そっちの方がいいよ。全然取り繕わなくていいし、咲良は咲良でいればいるほど面白いから。もっと自分を前に出していいんだよ。それをわかってくれる人がいるよ」と言ってくださって。その会話があったからこそ、変に遠慮をすることなく、水城アユミを演じることができたし、励みになった部分もありますね。

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