米津玄師、『虎に翼』主題歌「さよーならまたいつか!」の凛とした軽妙さ 寅子の挑戦に併走する楽曲に

 4月1日よりNHK連続テレビ小説『虎に翼』が放送されている。伊藤沙莉が主演し、日本初の女性弁護士が描かれており、その主題歌は米津玄師の「さよーならまたいつか!」である。

 ドラマ『アンナチュラル』主題歌「Lemon」を始め、これまで様々なドラマを彩ってきた米津だが本人も「まさか夜中でばかり生きている自分が朝ドラの曲を作ることになるとは」(※1)と話す通り、この楽曲は新たな挑戦と言える。「『毎日聴けるように』と意気込み作りました」という「さよーならまたいつか!」は一体どのような楽曲だろうか。

 ドラマのオープニングで曲が流れ始めた瞬間、まずその軽やかさに驚いた。まるでステップを踏むようなリズム、それに呼応するように踊るストリングスは新鮮な聴き心地。清廉なサウンドが朝らしい爽やかさを帯びる、米津にとって新境地のトラックである。

 ポップでダンサンブルな楽曲は3rdアルバム『Bremen』(2015年)で大きくフィーチャーされていたが、当時はシンセサイザーや打ち込みを軸にしたサウンドで表現されていた。その後活動を重ね、坂東祐大とのタッグによってストリングスアレンジを育んできた近年の楽曲の延長上に「さよーならまたいつか!」のサウンドメイクがあると言えるだろう。

 一方、メロディはまさに米津玄師と言うべき節回しで紡がれる。淡々としつつも情緒的な唱歌のような部分と、しなやかでメロウな部分がシームレスに繋がる旋律はとても親しみやすくキャッチーだ。さらりとした質感だが強く印象に残る、米津らしいメロディの複合的な魅力が冴え渡る楽曲である。

 そして歌詞に耳を傾けると、ドラマのメッセージが自ずと浮かび上がる。『虎に翼』は伊藤演じる主人公・寅子が家族の反対を押し切って法律学校に入ろうと試行錯誤するエピソードから始まる。女性は結婚することこそが幸せだとされ、学問を究めることなど不必要と決めつけられていた時代に疑問を抱き、固定観念を壊すために寅子の物語の幕が開くのだ。

 「さよーならまたいつか!」には、“もしもわたしに翼があれば 願うたびに悲しみを暮れた”や、“土砂降りでも構わず飛んでいく その力が欲しかった”といったフレーズが登場する。自由に生きようともがく寅子の姿を捉えた言葉たちだ。また“羽を広げ 気ままにどこまでも行け”という鼓舞も描かれ、声を歪めて歌う“空に唾を吐く”という箇所では毅然とした強さも表現しているように聴こえる。寅子の挑戦に併走する頼もしいテーマソングだ。

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