V.W.P、5人の魔女が音楽と共に届けた壮大な物語 Vシンガーのライブ体験を更新する圧巻のステージ
1月13日、1万人超の収容人数を誇るアリーナ・代々木第一体育館に、「現実」と「仮想」の境界を超えた魔法のような空間が顕現した。ネットカルチャー発のクリエイティブレーベル「KAMITSUBAKI STUDIO」が史上最大規模で送るアリーナ公演2デイズ『神椿代々木決戦二〇二四』の初日、V.W.P(Virtual Witch Phenomenon)による2ndワンマンライブ『現象II-魔女拡成-』が開催されたのだ。
V.W.Pは、それぞれソロでも活動する、花譜、理芽、春猿火、ヰ世界情緒、幸祜の5人で結成されたバーチャルアーティストグループ。本グループにおいて彼女たちは“電脳の魔女”と呼ばれ、KAMITSUBAKI STUDIO発のIPプロジェクト「神椿市建設中。」や、その舞台となる仮想都市「神椿市」の世界観と連動しながら、独自の物語を音楽やアニメーションMVで展開。メインコンポーザーのカンザキイオリが手掛ける全員歌唱曲“系譜曲”(花譜の代表曲「魔女」の系譜に連なる楽曲を意味する)、カンザキイオリ以外のクリエイターが作詞・作曲した“拡声曲”、メンバーのうち2人がペアで歌う“派生曲”などを届けてきた。
今回のライブは、2022年4月に豊洲PITで開催された初ワンマン『現象』以来となる、5人揃ってのステージ。なおかつ、2023年3月に行われた花譜の3rdワンマンライブ『不可解参(想)』を“EP. 0”としてスタートしたコンセプトライブシリーズ「SINKA LIVE SERIES」の“EP. 5”にあたる公演で、各メンバーが神椿市を舞台に行ってきたバーチャルライブの物語を引き継ぐ内容になっている。つまりは、仮想都市/バーチャル空間である神椿市と地続きの世界が、リアルライブで展開されたわけだ。まるで夢物語のような話だが、それを可能にしたのが、巨大なLEDスクリーンに映し出される映像や照明によって作り込まれたステージと、5人の魔女たちによる歌の“魔法”の力だ。
ライブはオープニングムービーと共に幕を開ける。花譜、理芽、春猿火、ヰ世界情緒、幸祜がこれまでの「SINKA LIVE SERIES」で入手した5本の鍵が揃ったことで物語は進展。5人が声を合わせて「僕らで“現象”を巻き起こそう!」と宣言すると、ギター、ベース、ドラム、キーボード、シンセサイザーに弦カルテット(バイオリン2名、ヴィオラ、チェロ)を加えた大編成のバンドが物々しい雰囲気のイントロダクションを奏で始め、そこからピアノを軸にした穏やかなサウンドに転換。ステージ下段の横長なLEDスクリーンに5人の魔女たちが光の粒子を纏って登場し、花譜の「My Name is 花譜」という声を皮切りに1人ずつ名乗りを上げる。会場を埋め尽くした観測者(V.W.Pのファンネーム)たちは、早くもどの楽曲が歌われるかを察知し、大きな歓声で応える。5人の名乗りと共に始まる楽曲といえば、V.W.P屈指のパーティーチューン「共鳴」。花譜をセンターにして5人横並びでステージに立つ彼女たちは、腕をシャンシャン振ったりとかわいらしい振り付けを踊りながら楽しそうにパフォーマンスする。
そこからシリアスなロックナンバー「輪廻」、理芽がセンターにポジションチェンジしてワイルドに弾けた「玩具」(ラストで5人が背中を向けるなか、理芽だけ振り向いて「センキュー!」と言い放つのがキマっていた)、スピードメタル調のサウンドと炎の上がる演出、メンバーによるクラップや声出しの呼びかけによって会場をさらに熱くさせた幸祜のセンター曲「秘密」を連続で歌唱。ステージ上段のひと際大きなLEDスクリーンには各楽曲のMVが映し出され、魔女たちの歌が紡ぐ物語の世界観を視覚でも補足していく。また、ステージのセットで特に目を惹いたのは、観葉植物や大きな木があちこちに置かれていたこと。スクリーンを通して表現される仮想都市/電脳空間の情報と、バンドによる生演奏や植物の生命力から伝わるリアルの感覚。その両方を繋ぐものとして、バーチャルシンガーである5人の魔女のパフォーマンスがあるのだ。
MCでは、5人揃って「ウィーアー、V.W.P~!」と名乗って戦隊もの風のポーズを取るなど、ライブ中とは打って変わってお茶目な一面も見せる魔女たち。ヰ世界情緒のセンター曲「変身」でライブを再開すると、彼女の力強いファルセットボイスとスクリーンに投影されたMVのストーリーが重なり合って胸を抉った「再会」、客席からV.W.Pコールが巻き起こるなか、春猿火をセンターに据えて5人が勇ましい姿を見せてくれた「定命」を披露。プログラムによると、ここまでのブロックが本公演の第一部“WE ARE V.W.P”にあたるとのことで、いわゆる全体曲の“系譜曲”で固めつつ、メンバー5人それぞれの見せ場を作る自己紹介的な選曲になっていた。
そして第二部“仮想世界より”は、メンバーのうち2人によるデュエット曲を中心に構成。しかも理芽だけ固定で、残りのメンバー4人とのコラボ曲を1コーラスずつメドレー形式で披露していく、この日だけの特別なセットリストだ。花譜とのドラマチックなナンバー「魔的」を皮切りに、幸祜と揺らぐように歌声を交わした「素的」、ヰ世界情緒と壮大な世界観を広げた「不的」、春猿火とのぶつかり合うような歌合戦を繰り広げた「私的」をノンストップで立て続け、最後は再び5人揃って「飛翔」を歌唱。ここでも理芽がセンターを担い、橙色の照明演出とペンライトがまるで日の出のような光景を描き出すなか、5人の歌声が絡み合ってどこまでも飛翔していく。このブロックで歌われた5曲はいずれも笹川真生のペンによるもので、連続でパフォーマンスされることで一貫したストーリーが浮かび上がっていたように感じた。