AmamiyaMaako、SNSの批判に対する憤りを音楽に 「多様性が叫ばれているけど全然認め合っていない」

SNSやサブスクでいかに飽きさせないかの工夫

――映画はどういう系統がお好きなんですか?

Amamiya:暗ければ暗いほどいいです(笑)。最近は、『誰も知らない』と『MOTHER マザー』を一気に観て、衝撃を受けました。

――どうして暗いのが好きなんでしょうね。

Amamiya:うちの家庭環境も決して褒められたものではなかったので、救いを求めるじゃないけど、自分と同じ気持ちを共有できるものをどこかで探しているのかもしれません。そもそも人の気持ちにすごく興味があって、こういう境遇の人はどういう考えを持っているんだろう……とか。これは暗い映画とは関係ない話ですけど、以前自動運転の車に初めて乗った時、これだけの技術を開発するのに、どれだけの人が寝ずに会議をして開発したのか想像したら泣けてきちゃって。開発の途中ではダメ出しがあって一度ポシャったりもしたのかな? とか、その時はどういう気持ちだったのかな? と、勝手な妄想をしてしまって。

――人の心のこもっているものだからこそ、人の胸を打つものになるんでしょうね。

Amamiya:そうですね。でも、AIもすごいから、私たちも負けないようにしないといけないですね。私はAI肯定派で、自分にはできないと思って諦めていた人がAIの力を借りてできるようになるのなら、それはすごくハッピーなことだと思うから。

――楽曲の話に戻りますが、楽曲の中盤以降にトラップっぽいヘヴィなビートになって、その後にギターソロがあったりとかしますが、曲の構成とかで意識したこととかありましたか?

Amamiya:トラップっぽいところの歌詞にはタイトルのフレーズも入っているし、一番伝えたいところでもあったから、あえて音数をすごく少なくしました。いかに言葉が伝わるかを意識して音作りをしたのと、ちょっとダークっぽいところを出して、ああいう感じになりました。そこのラップは、ちょっとK-POPを意識しています。以前KEN THE 390さんにインタビューをさせてもらった時、「K-POPのラップをどう思うか」という質問をしたら「ラップに正解はない。自分のやりたいようにやって、自分のスタイルを作って追求するのがいい」と答えてくださって、すごく自分の中で響いたんです。そこで自分らしくやろうと思って、K-POPのラップにある独特のメロディみたいな、曲のキーに対して不思議な音程でフロウするような感じをやっています。ただ漠然とラップするのではなく、どこの音程でラップするかは、結構強く意識して作りました。

――ラップにも、コードとメロディの関係みたいなものがあるんですね。

Amamiya:ラッパーの方に聞くと意識していないと答える方が多いんですけど、やっぱり曲のキーやコードに対する音というのがあって、ラップが面白いのはキーの音階にはまればいいというものでもなくて、はまっていないからかっこよく聴こえる場合も多いということです。そこは日々研究中です。

――不協和音的なほうが、耳に残ったりインパクトが出たりする場合がありますからね。

Amamiya:そういうのはあると思います。この曲も、もともとはもっと高い音程でラップをしていたんですけど、私の声質的に「もう少し低い成分を出したほうがいい」とプロデューサーから言われて、一度低めでラップを録ったんですけど、「何か違うな」となって。そこのバランスとか言葉の発音の仕方は、すごく研究しながらレコーディングしました。平歌のところも、あえて滑舌を悪くしたりとか。

――サビの歌パートは、甘くてフワフワした感じを出すために、わざと滑舌を悪くしているんですね。

Amamiya:はい。わざとです(笑)。あと構成に関してですけど、私の曲ってもともと単調ではないものが多いんです。ジャンルにもよりますけど、他のアーティストも展開が多かったり、曲が短かったり、メロディ展開がたくさんあったり、1番と2番で全く違っていたりするなど、昔のJ-POPのようにAメロBメロ、サビを2周するみたいな、型にはまった曲は少なくなっているんじゃないですかね。SNSやサブスクでいかに飽きさせないかの工夫を私も含め、皆さんされていると思います。

――長めのギターソロもかっこいいですね。

Amamiya:ギターソロは私も好きですね。ずっと言葉ばかりだから一回休憩してもらうじゃないけど、余白みたいなものを入れたいなと思いました。ベースも打ち込みで作ったデモをお渡しして、生で弾いていただいているので、とてもかっこいいベースになりました。

――今回はバンドサウンドにこだわったということでしたが、もともとバンドの経験はあったのですか?

Amamiya:中学〜高校で軽音部に所属していて、椎名林檎さんとかGLAYさん、YUKIさんやaikoさんなどをカバーしていました。

――その時の担当パートは?

Amamiya:基本はドラムだったんですけど、部の方針で定期的に組むメンバーが替わって担当楽器も変わるというやり方で、ギターやキーボードを担当した時期もありました。振り返ると、文化祭レベルの実力だったと思うんですけど、いろんな楽器をやったことで、楽器がどう重なってアンサンブルが構成されるか理解できていたから、DTMにもスムーズに入れたのかなと思います。あの時の経験は決して無駄じゃなかったなと思います。

――今後については?

Amamiya:シンガーとかアイドルグループなど、よくコンペで楽曲を募集してその中から歌う曲を決めたりすることがありますけど、今はそういう楽曲コンペに積極的に挑戦しています。そしていつでも提出できるように、いろんなタイプの楽曲を作り溜めているところです。

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