ハルカミライ、心の穴を埋める音楽 普通の1日をドラマティックに彩った2度目の武道館

 〈眠れない夜に私 日本武道館に集まったんだ/独り占め出来るドキドキがあるんだ〉と歌詞を変えながら始まった「アストロビスタ」では、橋本が「こんなデカい会場だし、テレビとかつないでさドラクエとかやりたいんだよね。ドッジボールとかもしたい」と突然言い始める。ドッジボールにまつわる思い出を回想したあと、「まあでも、これだけ人が集まってくれるんだったら、俺はやっぱみんなでガーって歌いまくるのが一番いいなと思ってます」と、日本武道館でライブができる喜びを伝えた。さらに「〈まーるい光の舞台で〉ーーこの曲書いた時に、別に武道館のことなんか、こういうステージのことなんか想像してなかったけど、今歌いながらこの曲にぴったりだなって思ったわ」と噛みしめた「つばさ」、「つまずきながら 汗かきながら たまーに勝ちながら ボロボロになっていく靴を履きながら ジーパンを履きながら 一生ものの革ジャンを羽織りながら 俺たち強く生きていかなきゃね」と歌い締めた「僕らは街を光らせた」……と、バンドを続けられていることを噛みしめる楽曲を続けたあと、橋本が12月21日が初めてハルカミライがライブをした日だと明かす。そして初めてハルカミライが作ったという「燦拍子」を披露するという“特別”も。タイトルの通り、優しい三拍子に合わせ場内にはゆっくりとミラーボールが回り、ドラマチックにライブを彩った。

須藤俊(写真=小杉歩)

 オレンジ色のライトがステージを照らした「パレード」では橋本が「いい日だわ!」と破顔し、客席の照明がつき明るい中で演奏された「世界を終わらせて」では橋本が曲中に、「昨日の『チンチロ』(前日の武道館で行われた霜降り明星 粗品の「粗品 Official Channel」イベント)観に来た人いる?」と観客に問いかけるなど、たわいもない話で笑う。さらに「1曲増やしていい?」と言って急きょ「それいけステアーズ」が選曲されれば、大きな「ワン ツー」の掛け声が響き渡った。

 「駆けぬけようぜ!」の言葉通り「THE BAND STAR」「BOYSISM」「Tough to be a Hugh」「エース」「To Bring BACK MEMORIES」とファストチューンを勢いよく続けたあと、橋本はマイクをセンターステージのさらに真ん中に持っていく。そして「また……人気がガタ落ちしなければ、(武道館公演)やるね!」と挨拶すると、4人は向かい合って、地元を歌った「ヨーロービル、朝」でエモーショナルに本編を締めくくった。アンコールには「赤青緑で白いうた」「春はあけぼの」の2曲をチョイス。演奏を終えると4人は肩を組み、全方向へお辞儀をしながら周り、「元気でね〜!」とまるで、友達のような親しみやすさとラフさを持って、ステージをあとにした。

関大地(写真=Taka_nekoze photo)

 この日のタイトルは『A CRATER』。月面のクレーターの多くは隕石の衝突の際の爆発からできるものだという。橋本は「春のテーマ」のあとに、こう言っていた。

「音楽に、衝撃に殴られた。それと同時に、心の中の寂しいとかそういう思い、心の中のぽっかり空いた穴、それを埋めてくれるのも音楽。今日俺たちが歌う音楽。ハルカミライだ。みんな楽しんで帰ってくれ」

 だとするならば、この日の武道館には、ハルカミライという音楽の衝撃が生み出したクレーターが、間違いなくでき上がったことだろう。そしてそのぽっかり空いた穴には、この日のハルカミライの音楽と、観客の歌声がたっぷり注がれたに違いない。

(写真=小杉歩)

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