“BiSH以降のWACK”はロックからダンスミュージックへ? ExWHYZを起点に考えるサウンドの変化

 今年6月、BiSHが東京ドームでのライブを最後に解散して以降、所属事務所のWACKは転換期を迎えているように見える。本稿ではBiSH以降のWACKが目指す音楽について概観し、今後の可能性について考えたい。

 BiSHは2015年に“楽器を持たないパンクバンド”としてスタートし、強烈な個性とカリスマでもって、『NHK紅白歌合戦』や東京ドームにまで到達した。エキセントリックな発言と過激なパフォーマンスは、まさに“パンク”であり、音楽性としてもそういったスタンスを反映したようなバンドサウンドが印象的だった。

 WACKに所属する他のグループも、方向性は違えど何かに対するアンチズムやそれに類するルサンチマンを持っているように見え、音楽性よりもコンセプトが先行しているように思えた。「みんなの遊び場」を標榜するGANG PARADEや、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の企画「MONSTER IDOL」にて誕生した豆柴の大群、同番組の別企画「MONSTER LOVE」によって生まれた都内某所。その多くが、世界観によって差別化を図っているように感じられた。そしてやはり、そういった感情を乗せるのに有用なのはロックだった。

 冒頭で触れた“転換期”について、より正確な見方をしようと試みると、2022年6月にEMPiREが解散し、同一メンバー6人でExWHYZが結成された頃と言えるかもしれない。同時期に現行のWACK的サウンドプロダクションが決定づけられた印象がある。ロックを基調としたWACK所属グループにおいて、明らかにダンスミュージックやエレクトロニックミュージックをリファレンスにしたExWHYZの台頭はセンセーショナルに見え、コンセプトでなく音楽が彼女たちの世界観を拡張しているように思えた。これはいささか主観的な見方かもしれないが、2022年11月にリリースされた1stアルバム『xYZ』に参加しているプロデューサーたちの名前を見ると、その根拠として正当性を見出すことができよう。

ExWHYZ / Wanna Dance [Music Video]

  Shinichi Osawa(MONDO GROSSO)がThe Chemical Brothersばりのプログレッシブハウス/アシッドテクノに乗せ、圧倒的なサウンドスケープを実現。さらに本作には80KIDZやMaika Loubté、Shin Sakiuraなどが参加し、いずれの楽曲もダンサブルな4つ打ちが鳴っている。

 今年の4月に発表された2ndアルバム『xANADU』でもまた、やはりダンスミュージックが重要なモチーフとして採用されていた。前作に引き続きShinichi Osawa、Shin Sakiuraが参加し、yahyelから山田健人と篠田ミル、プロデューサー/DJのSeihoらもクレジットに加わった。しかもサウンドのアイデアが極めて明確だ。yahyelの2人が参加した「BLAZE」はEBM的アプローチのテクノだし、Shinichi Osawaが制作した「Des Speeching」はスピードガラージだ。

ExWHYZ / BLAZE [Dance Movie:Full]

 ExWHYZがそういった方向性で進もうとしているのは明らかなのだが、恐らくこれは彼女たちだけではない。現在、ほとんど全社的にWACKの所属アーティストたちは、ロックではなくダンス/エレクトロニックミュージックのサウンドにフォーカスしているように思われる。

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