MAMAMOO ムンビョルからNiziU RIMA、XGまで K-POP周辺ガールズグループは有能なラッパーの宝庫
やはり韓国のヒップホップはすごい。そんなことをあらためて実感させてくれたのが、今年11月28日・29日に開催された授賞式『2023 MAMA AWARDS』における女性ラッパーのイ・ヨンジのパフォーマンスだった。披露したラップはほんの少しだったが、言葉の一つひとつに説得力があるせいか、あっという間に観客の心をつかんでいた。
彼女のようにヒップホップのメインストリートを迷わずに歩くタイプもいれば、違った角度からヒップホップへの愛情を示すアーティストも目立つのが現在の韓国の音楽シーンだ。ヒットチャートの常連であるHeizeやKassyといった女性シンガーが良い例だろう。どちらも“バラードの女王”のイメージが強いものの、過去にヒップホップのサバイバル番組で実力を磨いていた時期がある。その点を意識しながら両者の人気曲を聴くと、表現や拍の取り方にヒップホップ的な感性が生かされていることに気づくはずだ。
違った角度でヒップホップにアプローチするケースは、K-POPグループでも見られる。彼ら・彼女らはバラードや歌謡曲であってもラップパートで独自のカラーを鮮明にアピールする場合がめずらしくない。不思議ではあるが、個人的に印象に残ったK-POPグループのラッパーを思い浮かべると、女性メンバーの印象が強い。もしかするとそれこそが隣国のヒップホップを独自なものにしている一因なのかもしれない。
こうした視点でK-POPガールズグループを振り返ってみると、2006年に登場したBrown Eyed Girls(以下、BEG)が後進に与えた影響の大きさに気づく。この女性4人組はR&B系の実力派として出発し、のちにアイドル的な華やかさを身につけてスターダムにのし上がったが、メンバーのMiryo(ミリョ)のラップもかなり貢献したように思う。
彼女は大学時代にラッパーとしての活動を始め、BEG加入前にヒップホップユニット・Honey Familyのゲストラッパーとして参加した経験もあり、以前からリズム感の良さやワードチョイスには定評がある。どんなに短いラップパートでも存在感を発揮する、その良さが最もよく表れたのが大ヒットナンバー「Abracadabra」(2009年)だ。近未来感のあるエレクトロニックサウンドに寄り添うクールなフロウは、多くのK-POPグループのラッパーのお手本になったに違いない。
Miryoのスタイルを出発点にしてより幅広い表現を目指したアーティストと言えば、Moonbyul(ムンビョル)だ。彼女が在籍するMAMAMOOもBEGと同じく実力派として出発後、アイドルとしてのポジションを手に入れており、Moonbyulのラップも初期はMiryoに近い味わいがあった。しかしながら彼女の場合はメロディアスなパートとラップをスムーズに絡ませる点で独自性を見い出す。2018年にリリースしたRed VelvetのSEULGI(スルギ)をフィーチャリングしたソロデビュー曲「SELFISH」は成功例のひとつだろう。
上記2組に代表される、アイドル的なオーラを放ちながら実力も発揮するガールズグループのなかでも、今が旬と言えるのが(G)I-DLEである。その中心人物となるSOYEON(ソヨン)はグループのオリジナル曲を手掛けるほか、ライミングでも過去にオーディション番組『UNPRETTY RAPSTAR Vol.3』(2016年)に出演したほどのスキルを持つ。(G)I-DLE参加前のソロデビュー曲「Jelly」(2017年)を聴けばそのレベルの高さがすぐに分かるが、年を追うごとに表現力は進化しており、aespaのWINTER(ウィンター)、IVEのLIZ(リズ)とコラボレーションしたシングル「NOBODY」(2023年)におけるシンギングラップは彼女でしか出せない味わいがある。