C&K、初のバンドセッションに閉じ込めたライブの熱量 歌と向き合う先で拓けた新境地とは

「歪さもちゃんと言葉にするから、メッセージが軽くならない」(KEEN)

――そして「自由に」はツアーの横浜公演でもやられていたと思うんですけど、ずっと前からのレパートリーみたいな馴染み方だなと思いました。

CLIEVY:「幸せのディスタンス」みたいな雰囲気もありますね。でも、この曲を作っていた時のマインドとしては「世の中ゴチャゴチャ言うやつは多いけど、その不満を改善させたり、目標を実現させるやつは少ない」みたいなことで。人のことを気にしたり、ああだこうだと文句を言うなら「自分で自由にやったらいいじゃん」みたいなことを思っていましたね。

――歌詞に〈AAO〉と繰り返し出てきますが、自分たちに喝を入れるみたいなテーマもあるんでしょうか。C&Kの曲には応援歌的な楽曲が多い印象がありますが。

KEEN:特にCLIEVYが作る応援歌は、シンプルでストレートな応援歌じゃなくて……例えば世の中は綺麗事だけじゃなくて、裏から見れば腐っているところもあったりするじゃないですか。そういう歪な部分についてもちゃんと言葉にするからこそ、そのメッセージが軽くならないんですよ。

CLIEVY:“自分から頑張らなきゃ”みたいな思いも込めて、ですね。たまにイベントとかでファンの方に「頑張れって言ってください」って言われるんですけど、それに対応するのも結構、躊躇したりするんですよ。そんなに簡単に人に「頑張れ」って言えるほどの自分であるのか? みたいなことを考えてしまって。そういう、いろんな角度からの応援であり、「自発的になれているか?」という問いかけでもあり。

――そういう風に聴くと、曲のイメージも変わってきますね。次の新曲が「血出す見出す精出す」ですが、この曲の演奏は本当に迫力がありますね。AKB55じゃなければ、なかなかあのグルーヴは出せないだろうと思います。

KEEN:もともと入っている音源に対して、リズム隊がどういう立ち位置で絡むかということをメンバーもすごく考えてくれて、めちゃくちゃかっこよくなったので、聴いていてこちらも熱くなります。あと「血出す見出す精出す」が全部“ジーザス”に聴こえるのもポイントです。

――途中でラップが入ったり、起伏に富んだ構成も聴きごたえがありました。

CLIEVY:現行のゴスペルだと、割とああいうトラップみたいなパートが入っていることもあるんですよ。このバンドでそれをやりたかったという感じですね。

――心の叫び的なパッションを、歌からも演奏からもすごく感じます。

CLIEVY:みんなの中に同じように血が流れていて、みんないつかは死にますよね。でも死なない限り、何に心血を注ぐかは自分で決められるという自由があるじゃないですか。その自由を使っていろんなものに価値を見出したり、これをやろうと決めて精を出していく。そんな風に心に何かを燃やして生きている人とそうじゃない人が平等に扱われる世界は、僕は嫌だなと思っていて……シンプルに言えば、頑張っている人が足を引っ張られるような世界にはなってほしくない。ただ権利ばかり主張するような人にお伺いを立てるような世界にはなってほしくない、みたいなメッセージですね。

――ソウルフルなサウンドに乗せて世相を斬るというか。

KEEN:僕らが歳を取ったからというのもあると思います。

CLIEVY:でも考え方としては、あまり変わってないですけどね。さっき話に出た「にわとりのうた」も「王様ゲーム」も、その時々にある怒りを曲にしたというニュアンスだったので。

――ラストの「DAN」はバンドマスターの栗本修さんが飼っていた愛犬をイメージして書かれた曲とのことで。

KEEN:歌詞の中に犬というワードは出てこないですし、普通にバラードとして聴くこともできるんですけど、やっぱり聴く人それぞれの環境によって曲はいろいろ形を変えるものなので、僕は栗さんのダンっていう犬のことを思い浮かべながら、残された栗さんの孤独にすごく感情移入してしまいますね。アルバムの中で個人的に一番好きな曲です。

CLIEVY:たまたまマイケル・ジャクソンの「Ben(ベンのテーマ)」を思い出してこのタイトルをつけて、後々にペットの話になったんですけれども。僕の中ではその人がいてくれるからこそ今の僕がいる、という大切な存在の話なんですよね。僕は母方と父方のおばあちゃん2人を思い出しながら作った感じです。

KEEN:この曲はキー的にCLIEVYの歌声の綺麗な部分が出ていて、優しく歌っているけど哀愁も感じさせるんですよ。その空気を壊したくないけれども、僕が歌うと結構声を張らないと出ないキーでもあるので、極力押さえながら歌うのが大変でした。

「自然体で歌って説得力のあるものを作らないといけない」(CLIEVY)

――話が戻るんですが「みかんハート(CK PEAS ver.)」の楽曲解説で「このアレンジは、、最もやってはいけないことだったかもしれない」(※2)とあったのが気になっていたんですが、それについてお伺いしてもいいですか?

CLIEVY:歌い回しやアレンジを“〇〇風”と表現することがありますよね。それが音楽的にさらっと聴けるものだったとしても、本来の歌とマッチしていなければヤドカリみたいな状態だと思うんですよ。でもいつの間にかその“〇〇風”に寄せようとする自分がいて、「いや、これは違うな?」と気づいたんです。今まで自分たちがやってきたことで間違っていたこと、これからやらなきゃいけないことが、実はこの1曲に詰まっていたんですよね。さっき言ったキーの問題も、ライブ本番じゃなくスナックみたいな場であっても無理なくさらっと歌えるキーの曲が、これからの僕らには大事になってくる気がしますし。

KEEN:誰が見ても本物だと思えるような人たちって、そもそも歌うのに準備がいらないんですよ。

CLIEVY:いわゆる“歌ウマ”的に聴かせたいわけではなくて、自然体で歌って説得力のあるものを作っていかないといけないという、新たな境地が開けた曲でした。

――「みかんハート」といえばお二人の代名詞の1つといえる曲で、ライブでも相当な回数で披露されてきたと思うんですが、また新しい課題が見えたんですね。

CLIEVY:もう、課題だらけですね。そういう意味ではこのタイトル(PEAS=土の中から芽が出た豆のこと)がぴったりというか、問題点、課題の芽がたくさん出てきたみたいな。

KEEN:アサガオの種を植えたはずだったのにチューリップが生えてきたくらいの驚きが随所にありましたね。あとレコーディングを通して、単純に僕ら、歌が下手だなと思いました。

――そんなことはないと思いますけど、お二人が思い描く境地にはまだたどり着けていないということですよね。個人的にこのCK PEAS ver.の中では「嗚呼、麗しき人生」が好きなんですよ。オリジナルの音源も素晴らしかったですが、お二人の歌やバンドの演奏からもこの曲に込めた情熱やメッセージが色濃く伝わってきて震えました。

KEEN:僕的には発売した時よりも今の方がこの曲をうまく背中で表現できるんだろうなと思っていて、歳を重ねるごとにどんどん自分にしっくりくる曲になってきているんですよ。きっと死ぬまで熟成が終わらないんじゃないですかね。長い付き合いになりそうな曲です。

――AKB55ツアー(取材は11月中旬)についても少し振り返っていただけますか。個人的には後藤輝夫さん(Sax)と田中菜緒子さん(Key)、中山浩佑さん(Trp)がレオタードで踊る「上を行くメイク」がすごくツボに入ってしまって。

CLIEVY:普段はそういうのやらない人たちなのに(笑)。嬉しかったのが、ライブ前にあの3人がめちゃくちゃ真剣にダンスの打ち合わせをしているのが聞こえてきて、KEENと「これが“C&Kウイルス”だな」って、ニヤニヤしてましたね。

KEEN:あと大阪の会場(味園ユニバース)は幕が下ろせなかったので、他の会場と演出を変えて1曲目を「C&K IV」にしたんですけど、ザンドレ(ザンドレ・Y/Gt)のギターの音色が、本来は出だしからバースに入るまでのイントロの途中で変わるんですよね。エフェクターのボタンを1個踏むだけでいいのに、なぜかリハでは1回も成功しなくて。

CLIEVY:ギターだけで始まる曲なのにリハで毎回失敗して、そのたびにバンド全員ずっこけるという。それで本番前に「ミスるかミスらないか賭けよう!」ということになったんですけど、本番ではしっかり成功していて、全員負けました。

――ザンドレさんのネタだったという可能性は?

CLIEVY:いや、彼はそういうキャラじゃないんですよ。でも「めちゃくちゃ緊張した」って言ってました。もっと緊張するとこあるでしょ! って(笑)。

――12月19日の『発売記念パーティー』(東京キネマ倶楽部)はどうなりそうですか?

CLIEVY:ツアーとほとんど変わらない感じではあるんですけど、次に僕らが見ているところを表現できたらいいかなと。例えば「上をいくメイク」みたいな曲は今までDJスタイルで披露していて、“おしゃれ”とか“大人っぽい”をコンセプトにしたバンドのライブではやらなかったんですよ。でも、そういうかっこつけって、実はかっこよくないかもと思えてきたので、今回のツアーではDJのセットに近しい部分も残しつつ、バンドのクールさとかいろんな要素をバランス考えながら盛り込みました。この『発売記念パーティー』でバンドでの初披露を目論んでいる曲もあるので、音の楽しみ方は自由なんだと伝えていけたらいいなと。

――それは楽しみです! 2024年はどういう年にしようと計画されているんですか?

KEEN:ツアーについても大まかには決めているんですけど、それ以外は2023年の延長でいくイメージですね。

CLIEVY:フジロック(『FUJIROCK FESTIVAL』)とか、デカいフェスに出たいですね。かつ、お客さんに一番“刺さる”形を考えて、例えばフェスにバンドで出るとか、一つひとつのステージにもっと熱量を注いでいきたいんですよ。2023年で見えた課題に丁寧に向き合っていく2024年になるかなと予想しています。

※1、2:https://c-and-k.info/contents/688611

■リリース情報
C&K ニューアルバム「 CK PEAS」
2023年12月6日(水)発売
【収録曲】全15曲収録
01. C&K XV
02. EVERYBODY (CK PEAS ver.)
03. APAP (CK PEAS ver.)
04. メーデー
05. 青青青
06. 挿入歌
07. 寝ている顔を見ている
08. みかんハート (CK PEAS ver.)
09. スナック十八番 
10. believe
11. 自由に
12. 揮発油 (CK PEAS ver.)
13. 血出す見出す精出す 
14. 嗚呼、麗しき人生 (CK PEAS ver.)
15. DAN
*完全生産限定盤、通常盤、共通
曲順未定・新曲9曲含む全15曲収録予定

【完全生産限定盤】[2CD+1DVD+BOOK]
¥11,000(税込)UPCH-29468
・DVD〈ドキュメンタリー&ライブ映像〉
「裏側密着約二ヶ月間〜album制作からtour開始、そして、その先へ」
※プレイパス(R)対応 
・CD〈本編収録全曲のオフボーカル(インスト)収録〉
・フォトブック(100P、ライブレコーディングオフショット etc…)
・オリジナルピース封入(ナンバリング付カード)
・オリジナルパッケージBOX仕様

■ライブ情報
ニューアルバム『CK PEAS』発売記念パーティー〈SPECIAL ONE MAN〉
12月19日(火)東京・キネマ倶楽部

C&K Official HP

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