宮本浩次から吉井和哉、Ado、優里まで……カバーで味わう歌声と原曲の奇跡的な調和
圧倒的な歌声を持つシンガーはオリジナル曲のみならず、カバー曲でその実力が発揮されることも多い。親しまれてきたメロディだからこそ、歌声の魅力を存分に味わえるのだ。本稿ではここ最近で注目を集めるカバー曲を紹介していきたい。
宮本浩次(エレファントカシマシ)は11月20日に薬師丸ひろ子「Woman “Wの悲劇”より」のカバーをリリース。原曲よりもダークさを強めたサウンドの中で宮本は緩急豊かな歌声を披露している。まるで囁くように歌うパートから、サビで一気にダイナミクスを上昇させる、強弱自在な表現はこれまでソロ活動で培ってきた歌唱の最新型と言える。
宮本は『ROMANCE』や『秋の日に』といったカバー作品を多く発表してきた。「自分の曲でも何でもない大名曲をテレビで歌ったりすることで、自分が解放される感覚があるんです」(※1)とインタビューで語っていることからも自身の歌声と向き合う上でカバー曲は最適な手段の一つなのだろう。どんな楽曲も自身の身体へ還元する底知れない歌唱力は進化し続けている。
THE YELLOW MONKEYの吉井和哉が10月にYouTubeにアップしたのはかつてのレーベルメイト・THEE MICHELLE GUN ELEPHANT「世界の終わり」のカバーライブ映像。荒々しくも華やかな歌唱はチバユウスケを彷彿とさせ、吉井和哉の表現力の高さを強く実感できる。このライブ音源はカバー曲を集めたプレイリスト「吉井和哉 20 COVER Songs」でも聴くことができる。
このプレイリストでは日本の昭和歌謡から演歌、デヴィッド・ボウイ、宇多田ヒカル、ユニコーンといった幅広いジャンルのカバーを聴くことができる。そのどれもが吉井の艶めかしい歌声によって新たな表情が与えられている。中でもOasis「Don't Look Back in Anger」のカバーでは自身が書き下ろした日本語詞で歌唱(※2)。その類まれなる言語感覚とロックスターとしての気迫を堪能できる。原曲へと寄り添うアプローチの歌唱は彼の巧みなボーカリゼーションの証明と言えるだろう。