MIYAVI、活動20周年で打ち出す新たなロックスター像 アジア圏ツアーで強めた平和への願い

 MIYAVIの20周年特集がWOWOWにてオンエアされる。サムライギタリストとしてワールドワイドな人気を獲得し、音楽活動はもちろん、俳優やモデルなど様々なフィールドで活躍を見せてきたMIYAVI。本特集では、MIYAVIが20年間の軌跡を語る『MIYAVI Interview & Document』をはじめ、2023年9月18日にLINE CUBE SHIBUYAで行われた20周年記念ライブ『MIYAVI "20th & Beyond" Japan Tour 2023』東京公演の映像、これまでのMVからセレクトしたものを一挙公開する『MIYAVI Music Video Collection』が放送される。

 今回の特集に先立ち、リアルサウンドではMIYAVIにインタビュー。20周年記念ライブ『MIYAVI "20th & Beyond" Japan Tour 2023』の振り返りから、その後に行われた海外ツアーでの手応え、2024年以降の活動の展望についてなどを語ってもらった。『UNHCR』親善大使として世界情勢に目線を向けながらも、MIYAVIがいちアーティストとして音楽に託す願いとは。(編集部)

音さえ出せれば、目の前にいる人たちを完全にロックできる

MIYAVI

ーー9月に大阪と東京で開催された『MIYAVI "20th & Beyond" Japan Tour 2023』は、MIYAVIさんがデビューしてからの20年を振り返る内容でした。選曲はかなり大変だったのではないでしょうか?

MIYAVI:そうですね、これまでに発表した楽曲すべてをやれるわけではないし、でも、やっぱりできる限りやりたいし、非常に悩みました。そんななかで一番肝になったのは「20th & Beyond」の「Beyond(=これから)」。この未来感ってすごく大きいというか、むしろMIYAVIというアーティストの特色というか強みだと思うんです。なので、昔の曲をアレンジして演りながら過去を感じながらも「ああ、僕たちは未来に向かっているんだ」っていうことを感じてもらえるようなライブにしたいなと思っていました。

 具体的には、「Selfish love -愛してくれ、愛してるから-」「WHAT'S MY NAME?」「SURVIVE」という最初の3曲はギターオリエンテッドで、自分にとってはギタリストとしてのある種自分のスタイルと在り方みたいなものを確立した楽曲でもあるので、そこをフィーチャーした形でオープニングが始まるのはすごく理にかなっているなと思って。あとはメッセージ性の強い楽曲たち、それこそ僕はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使としても活動しているので、難民キャンプに行って感じた無力さとか思いみたいなものを歌った「Tears On Fire」と「Long Nights」も入れつつ、アコースティックアレンジを施した「君に願いを」など懐かしい楽曲も織り交ぜて。あとは、ソロデビューしたときの楽曲「Girls,be ambitious.」を、20年前と同じ場所(LINE CUBE SHIBUYA - 当時は渋谷公会堂)で演奏したことも感慨深かったですね。もちろん、今と演奏スタイルは全然違うんですけど、ファンのみんなへ向けてのメッセージとしては過去からあまり変わってないです。例えば、「Under The Same Sky」。僕らはコロナ禍を体験し、今は中東で戦争が行われている。日本でも日々さまざまな問題が起こっていますが、そんな中で僕たちはみんな同じ時代、同じ空の下で生きているというメッセージがこの曲には込められています。

 例えば、「Girls,be ambitious.」では〈道しるべなんていらないから〉と歌っていたんですけど、独立する直前に発表した「陽の光さえ届かないこの場所で」では〈道しるべはないけど もう自分で作れるから〉〈目つむったままでも 耳をすまして歩いていけるさ〉と歌っていて。音の鳴る方へ進んでいくということなんですけど、すごく感慨深いというか、こんなこと考えてたんだなあと。

ーーMIYAVIさんのライブを拝見していると、初期の楽曲もその都度その都度のスタイルに合わせることで、常に現代的にブラッシュアップされていて。どこか新曲に触れているような感覚もあるんです。

MIYAVI:それは、ライブ会場での音作りも影響しているからかも。例えば、今回のツアーでも改めてローエンドの整理をしていて。メタル系のロックバンドってドラムのキックに、よくトリガーを使ってキックをブーストしたりして、僕のチームもやっていました。僕の場合はDJセットもやるから、クラブでのサブのロー感も出したい。今までトリガーを使ったりいろいろ試しましたが、どうしてもタイミングがカチッとハマらなかったりベロシティが思うように出なかったりで、今回はトラックにも新たに共通で打ち込んだキックを仕込んでいて、そこから出てくるキックにはローエンドをブーストさせてハイカットした形で、アタックはドラムの方で補い、完全に同期するようにしました。演者の技術力も問われます。ボボくんやUSチームのアンソニーなどタイトなドラマーだからできることでもあります。それと、シンセベースの整理。うちのバンド編成にはベースがいないので、同期させるシンセベースによって楽曲のキャラクターが決まったりするんですけど、改めてMIDIを打ち込んだり、ライブ全体を通して整理しました。

ーーなるほど。

MIYAVI:とはいえ、そこらへんはあまりお客さんは気付いてくれないけど(笑)。気付けばいろいろとありました。20年前の僕はいきなりソロデビューして、それまではバンドでギタリストだったので真ん中に立ったこともなければ歌ったこともなかったので、ソロデビューのステージでは何をしていいかわからなかったですから。それでよく当時、渋谷公会堂でワンマンをやったなと今では思うんですけど(笑)。今は場所がどこだろうが音さえ出せれば、目の前にいる人たちを完全にロックできますし、そういう意味では過去の曲も今の自分が歌うことで逆にもっと説得力が出せているという自信はあります。

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