indigo la End、『哀愁演劇』で見せる“あたらしい”姿 歴史と今を示したフリーライブ
10月26日、indigo la Endが東京・豊洲PITにてフリーライブを開催した。このフリーライブは、前日10月25日に通算8作目、メジャー7作目のフルアルバム『哀愁演劇』が発売されたことを記念して開催されたもので、会場には抽選により招待された観客たちが集まった。
ライブは二部制となっており、17時開演の『マチネ(After school):はじめてのindigo』には学生が、20時開演の『ソワレ(After work):あたらしいindigo』には社会人が、それぞれ優先的に招待された。また、応募が殺到したため二部の「ソワレ(After work):あたらしいindigo」は、YouTubeとTikTokを通じて生配信も行われた(11月12日までワーナーミュージック・ジャパンのオフィシャルYouTubeチャンネルにてアーカイブが残されている)。ここでは、その「二部」の模様をレポートする。
約50分間にわたるライブパフォーマンスと、演奏後のメンバーによるトークセッションという構成で行われたこのフリーライブは、力強くも鮮やかなバンドのアンサンブルを体感できるというだけでなく、メンバーのカジュアルな人となりにも触れることができる貴重な機会となった。ライブでは計9曲を披露。
幕開けを飾った「カンナ」、さらに「名前は片想い」や「プルシュカ」などの新作『哀愁演劇』収録曲に加え、「チューリップ」や「夏夜のマジック」といった代表曲たち、さらに「抱きしめて」や「楽園」などの初期楽曲も演奏された。
楽器と共に植物のようなものが中心に据えられたステージ。曲によってはステージのバックスクリーンにミュージックビデオが映し出されながら、そうでない曲は見事な照明演出に照らされながらパフォーマンスは披露された。
メンバーである川谷絵音(Vo/Gt)、長田カーティス(Gt)、後鳥亮介(Ba)、佐藤栄太郎(Dr)の4人、さらに、お馴染みのサポートメンバーである佐々木みお(Cho)、えつこ(Key/Cho)のふたりも加えた6人編成による演奏は、バンド音楽としての大胆かつしなやかな肉体的ダイナミズムを感じさせながら、音の重なりや動きに宿る繊細さ、グラデーションの豊かさも同時に感じさせ、その深く濃密な叙情世界に観る者を没入させる。
透明感のなかに「叫び」を内包しているような川谷の稀有な歌声も含め、indigo la Endというバンドが抱く激しさや静けさ、それらを両立させる奇跡的なバランス感覚を強く実感させる演奏。自らの生み出す音楽が「バンド音楽」であること、そして、人間を、あるいは人間の哀しみを表現すること――そうしたバンドの本質に深く向き合ったアルバム『哀愁演劇』を生み出した“今”のindigo la Endの凄みを強く体感することができた。