「もう一度みんなの近くに」SOPHIA、観客に“生まれ変わること”を宣言 4時間にわたる『獅子に翼V』に満ちた幸せな空気

 また、「黒いブーツ ~oh my friend~」「-WOOZ!-」「GJ escAPE」などの楽曲には松岡と都が通っていた専門学校の後輩たちがダンサーとして登場。代表してステージであいさつしたふたりの学生は19歳と20歳ということで、どちらも『獅子に翼』初回公演どころか『獅子に翼II』が行われた頃にも生まれてすらいない。「SOPHIAにもダンスする曲があるよね?」との問いに「黒“の”ブーツ」と答え、「アイツ(黒柳=クロ)のブーツは尖ってないぞ~?」と松岡にイジられる場面もあった。

 さらに極楽とんぼ・山本圭壱も登場し、「(相方の)加藤(浩次)さんが(ドラマで)お世話になったということで……」とメンバーにペットボトルの水を配る。息の合った軽快なやりとりで会場を沸かせる松岡と山本だが、ふたりが会うのはこの日がまだ3回目とのこと。山本はしぶとく松岡に絡もうとするも、時間が押しているため腕を回して「巻いて」とアピールする黒柳に促されてステージを後にした。

 ライブ中盤には「ミサイル」「STRAWBERRY & LION」「HARD WORKER」「進化論 ~GOOD MORNING! -HELLO! 21st-CENTURY~」と華やかな選曲が続く。途中のメンバー紹介では「興奮してる」と話しつつもあまりそうは見えない豊田が松岡を促し、自らの胸を触らせ心拍数が上がっていることを確かめさせる。赤松は都への誕生日プレゼントと称し、キーボードへ七色に光る電飾を取りつけていたが、照れ隠しもあってか当の都には嫌がられてしまった。

 15曲目の「please,please」まで照明をフルに駆使した華々しい演出が続くも、「旅の途中」では空気が一変。シックな白いジャケットを纏った松岡が歌う背景には橙色のライトだけが灯り、濃い闇に沈んだアリーナはさながら陽の落ちた野外フェス会場めいた様相だ。「ALIVE」では燃える炎だけに照らされ、松岡の歌声も炎の揺らめきと共鳴して揺らぐ。

 「未来大人宣言」を終えたところでこれまでのSOPHIAの歩みを振り返り、自分たちが“寄せ集め”から始まったことを語る松岡。デビュー4年目にチャレンジとして初開催した『獅子に翼』の頃には“自分たちをどう見せるか”と考えていた彼らだが、ライブを重ねるうち、そのベクトルは“自分たちがどうなるか”よりも“目の前のファンたちは自分たちをどう見るか”に変わっていったという。9年の休止期間は休息であり、メンバーの中のSOPHIAを見つめなおす期間にもなった。

「もう一度みんなの近くに行こうと思います。わかりやすく言うと、SOPHIAは生まれ変わります」

 その言葉を聞いた会場に緊張が走ったのも束の間、「生まれ変わってもう一度音楽を作る、パートナーが決まりました」とスクリーンに映し出されたのは、SOPHIAとトイズファクトリーのロゴ。観客から嬉しい悲鳴が上がる中、松岡は『獅子に翼』シリーズに終止符を打ち、SOPHIAが“内向きのベクトル”から“外向きのベクトル”に変わっていくことを宣言する。

 デビュー当時の古巣と再契約し新たな船出を迎える彼らは、嬉しい発表に続けて10年ぶりとなる新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」を初披露。憂鬱な世界の中で声を届けたいと渇望する詞は、不安定な世界にも力強く響き渡った。

「音楽不況の時代ですけど、バカの一つ覚えみたいにこのスタイルでやっていこうと思います」

 ライブも終盤に差し掛かり、「街」「Kissing blue memories」では観客たちの歌声が高らかにこだまする。それを眩し気に眺める松岡の姿はスクリーンに映る若き日の彼と重なりつつも、かつての挑発的な空気よりも、ただこの瞬間を観客たちと共にできることへの喜びに満ち溢れていた。

(写真=堀卓郎)

 ラストソングに選ばれた「Believe」では、客席に降りてファンを抱きしめマイクを向ける松岡。スピーカーから聞こえるどの歌声にも笑顔が弾け、飛び出した銀テープを振る仕草にも熱がこもる。その歌声はエンディングの「エンドロール」でも絶えることなく、メンバーもまたステージに残って余韻を深く噛みしめる。

 その中でも特に名残惜しげな松岡が「黒いブーツ」を口ずさみながらゆらりと花道へ歩み出ると、声を張り上げ歌って応える観客たち。巻き起こる大合唱は大の字に寝転んだ松岡を祝福するように流れ落ち、それはやがてバンドの響きを連れてくる。極上のアンコールに拍手が鳴り止まぬ中、全26曲、4時間にもわたるライブは幸せの中で幕を下ろした。

 終演後にはスクリーンを使い、2024年3月10日に大阪・大阪城ホールで『SOPHIA Premium Symphonic Night in 大阪城ホール』が開催されることを予告。さらに30周年を迎える来年には、11年ぶりのニューアルバムをリリース……と思いきや、その文章は「~リリースしたい」と続く。同様に全国ツアーも「したいな」と願望どまりだったが、最後に映った「言ったもん勝ち」「やるだけやっちまえ」という言葉には大きな希望が込められていた。

■『SOPHIA LIVE 2023 獅子に翼V』セットリスト
2023年10月9日(月・祝)神奈川・Kアリーナ横浜
1.ヒマワリ
2.Early summer rain
3.KURU KURU
4.ビューティフル
5.せめて未来だけは…
6.ゴキゲン鳥 ~crawler is crazy~
7.黒いブーツ ~oh my friend~
8.ミサイル
9.STRAWBERRY & LION
10.HARD WORKER
11.進化論 ~GOOD MORNING! -HELLO! 21st-CENTURY~
12.-WOOZ!-
13.GJ escAPE
14.Yes,attention
15.please,please
16.旅の途中
17.花は枯れて また咲く
18.ALIVE
19.未来大人宣言
20.あなたが毎日直面している 世界の憂鬱
21.夢
22.―僕はここにいる―
23.青い季節
24.街
25.Kissing blue memories
26.Believe
En.黒いブーツ ~oh my friend~

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