XG、『NEW DNA』がチャート初登場で2位に 高い歌唱技術に裏打ちされたスタイルを徹底した一枚
しかし何と言っても特筆すべきは、5曲目の「NEW DANCE」であろう。
爽やかなラテン風味のギターリフ、軽快にうねるベースライン、所々に挟まれる人々の楽しそうな掛け声や自由なガヤのサンプリング。それだけでなく多種多様な音が一曲を通してそこかしこで鳴っている。こうした賑やかなサウンドから想起される世界観は、さながらカジュアルなパーティー会場だ。イントロの数秒だけで新しい何かが始まりそうな期待感があり、そこからディスコやハウス、アシッドジャズなどを彷彿とさせるオルタナティブなダンスサウンドを展開。途中でディーヴァ系のポップスを思わせる大胆な構成を挟み、再度ダンサブルなビートへと回帰する。まさに“ニューダンス”としか形容できない逸品である。
メンバー7人の個性的なボーカルも楽曲に彩りを与えている。喉を潰して聴き手の耳を刺激するような歌い方をするメンバーもいれば、透き通る伸びやかな美しい歌声を響かせるメンバーもいる。あるいは、低いトーンであっても重さを感じさせない独特の浮遊感のあるラップが心地よく、軽やかにリズムを乗りこなすようなこのドライブ感のあるラップ表現が、楽曲に推進力を与えるアクセル的役割を果たしている。この曲ではそうしたそれぞれのボーカルが適材適所で配置されていると言えるだろう。
ラストを飾る「PUPPET SHOW」では、高速のビートの上でそのスピード感に動じない雰囲気を持った強気なボーカルが印象的。だからこそ、一転してビートを排したピアノとボーカルだけの世界に移った際のカタルシスはこの上ないものがある。緩急を織り交ぜた曲作りによって、終始リスナーを飽きさせない。
総じて、新しい時代を切り拓く強い意志のあるコンセプトと、現代のダンスポップを幅広く吸収した洗練された音楽性、そして高い歌唱技術に裏打ちされた楽曲スタイルが、この一枚に徹底されている。
XGはK-POPでもJ-POPでもない“X-POP”を掲げているという。アジア発のアーティストが世界を賑わすようになった昨今、その流れを決定付ける作品になり得るリリースだ。
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