reche、カバー歌唱を通した独自の解釈 『reche cover : JUKEBOX vol.001』の制作を振り返って
歌と対話をすればするほど、歌うことが楽しい
――いろんなアーティストにインタビューをしていると「曲を作ってゴールじゃなくて、ライブで歌うことで曲が育っていくんだ」という話をよくお聞きするんですけど、カバー曲もライブを重ねることで自分の中で育っていく感触ってありますか?
reche:なんか、育てちゃいけないかなって若干思っていて。人の作品なのでどうなのかなと思っていたんですけど、その概念は変わりましたね。ライブを通して自分の中で曲が変わっていくのを見つけるのって楽しいなと思いました。
――新たに歌詞が心に響くようになった体験はありました?
reche:それは存分にありましたね。ライブをやると、やはり歌詞が染み込んでくるというか。引っかかるじゃないですけど、頭に残るワードが結構あって。それを大事に歌いたいという欲も生まれますし、そういった意味で新しい解釈を見つけて歌い込む楽しさを見出せました。それこそ「大丈夫」の歌詞が大好きで、一つひとつをすごく噛み締めちゃうんです。本当に(野田洋次郎さんを)天才だなと思う歌詞があって、〈君を大丈夫にしたいんじゃない 君にとっての「大丈夫」になりたい〉のフレーズがすごく好きなんですね。曲の主人公を自分に降ろした時、精一杯〈君〉に愛情を伝えたいと思うんです。ライブで歌うと、その気持ちがより増幅するんですよ。曲中の〈君〉という存在をお客さんに置き換えられるようになって、より歌詞とともに鮮明に感情が浮かび上がってきました。
――以前のインタビュー(※1)で「もともと自分は何かを伝えたいというよりも、曲から汲み取って、曲と対話しながら、それを表現していくタイプ」と話していましたよね。
reche:そうですね。どの曲も歌えば歌うほど、歌と対話をすればするほど、歌うことって楽しいなと思えるし、歌っていて良かったなと幸せな気持ちになれます。「大丈夫」の話をしましたけど、Kanariaさんの「KING」を歌うと逆に突き離したくなったりして(笑)。楽曲の主人公になれることが、歌っていて楽しいポイントの一つなんですよ。歌詞を読み込むっていうか、本当に降ろすっていう感覚に近いですね。
――その表現方法はいつ培ったものなんですか。
reche:EGOISTに入ってからだと思います。それまでは「歌うのって楽しいな」ぐらいのカラオケが好きな一般人だったんですけど、EGOISTは私個人の純粋な活動ではなくて、ヒロインの女の子がいて、その子の気持ちを通してパフォーマンスするので、歌詞を読んで「楪いのりちゃんならどう歌うか」を考える。そこから身についた力じゃないかなと思いますね。
――アーティストの中には、「自分の生き様をステージに残したい」「自分の考えをお客さんに共感してほしい」と思う方もいれば、自分をフィルターにして楽曲の登場人物や世界観を表現したい方もいらっしゃると思うんです。recheさんの場合は後者ですよね?
reche:ですね。自分で言うのはアレかなと思うんですけど、自分が自分がっていうよりは、曲の主人公が考えていることを表現したいタイプではあります。
――ということは、自分とは違うもう一人の自分が降りてきている感覚なんですかね?
reche:実は私、前々から“イタコ歌手”と言われていて(笑)。
――モロじゃないですか(笑)。
reche:ハハハ。ちょっとイタコという表現は怖いですけど、客観的に見たら割と歌の人物を降ろすタイプなんだなって。自分ではあまり自覚がないんですけどね。
――今回の作品は、思いっきりイタコ感がありましたよ。
reche:ハハハ、そうですか。やっぱり歌っていて楽しいなと思いますし、皆さんにも楽しんでいただけたら一石二鳥かなって(笑)。
――ちなみに、今回ラインナップされた楽曲に共通してることって何だと思います?
reche:そうですね……私とファンの人の好きが入った曲たち。それくらい、皆さんの選曲理由にすごく愛がこもっていて。そこを汲んでカバー曲を決めたりとか、実は私が歌いたい曲もあったり。なので、みんなの愛が詰まってるカバーアルバムですね。
――僕が思ったのは、どの曲も“居場所”がキーワードになっている気がして。「月のワルツ」は森の中を彷徨って大事な人がいる“居場所”を探している。「幽霊東京」は憧れの東京に行ったのはいいものの、自分の思い描いていた理想と現実は違っていて、じゃあ自分が求めている場所ってどこなんだろう? と“居場所”を探している。「みなと」は去って行った大事な人をいつまでも港で待っている。「ビターチョコデコレーション」は、本当の自分でいられる“居場所”を探している。「abnormalize」は〈ここが僕の居場所ならば満たさないから〉という歌詞がありますし。「大丈夫」の〈君の「大丈夫」になりたい〉というのは、君の“居場所”に僕がなる、という曲。どれも“居場所”がキーワードになっているなって。
reche:あぁ……今すごく感動しています。それこそこのアルバムを聴いていただいて「これが一貫したテーマなのかな」と考えてもらうのも意図の一つだったんですよ。バラバラに見えるんですけど、何か共通点がある。そうやって見つけてもらえたらいいなって。そういう意味では万華鏡みたいなアルバムだなって。居場所か……新解釈をありがとうございます。
――今作を完成させたことで、recheさんの中で収穫はありましたか?
reche:曲へのアプローチの仕方もビルドアップしたと思いますし、一曲一曲を磨くというか「私はこういう表現にしたいので、これは絶対にこうしないでください」とか、そんな感じで言えるようになったのが大きいかなって。今までは自分のこだわりを言うことがなくて、初めてのことだったんですよね。最初は「私が意見を言っていいのかな」という感じから「こだわりはどんどん言っていかなきゃ」という状態になって、それがすごく嬉しいですし、自分の中での大きな成長かなって思います。
――特にこだわったところは?
reche:注意して聴いてほしいフレーズとか、何かを感じてほしいフレーズには想いを込めるんですね。そのまま伝わることもあれば、ちょっと変な風に聴こえる時もあって。「ちょっとやりすぎじゃない?」となってしまうので、そこのバランスをどうするか話し合いしながら、「ここに力を入れたんだな」って、そういう細かいところまで聴いてもらえたら嬉しいです。
――受注限定生産盤には、2021年に開催したソロとして初のオンラインライブ 『reche 1st live online : cloud 9+1』の映像が収録したBlu-rayが入っているということで、ライブを振り返っていかがですか?
reche:目も当てられないぐらい緊張していましたね(笑)。私は皆さんの顔をいつもカメラ越しで見ているから知っているんですけど、お客さん側からすると「recheってこういう感じだったんだ」となるわけですよね。そこにすごく緊張していた思い出があります。でも、終わってみたら楽しい記憶しかないなって。一生懸命歌いましたし、お客さんもすごく一生懸命観てくれたおかげで、良い思い出となったライブなのでぜひ観ていただきたいです。
――ちなみにハイライトは?
reche:スペシャルゲストでピアニストのまらしぃさんと、2曲コラボをさせていただいたんですけど、生ピアノと一緒に歌うことがなかったので、「こんなに誰かと一緒に歌うのって気持ちがいいんだ」と体感させていただいて。それで言うと、バンドさんと一緒に歌うことも初めてで。とにかく初めてが詰まったライブでしたね。
――改めて『JUKEBOX vol.001』が完成して、どのような手応えを感じていますか。
reche:“原曲こそ至高”という人もいると思うんですね。でも1回聴いてもらって、原曲に対して私なりの解釈が加わったこの作品を真っ直ぐに聴いてほしい。こだわった部分もありますし、素直に聴いてほしいなって思います。そして目標としては、第2弾のカバーアルバムが出せたらと思っていて。次の歌う予定を立てていますし、今回カバーできなかったリクエスト曲が歌本並みにありますし、何より継続していきたいなと思います。
※1:https://realsound.jp/2021/07/post-806675.html
■リリース情報
『reche cover : JUKEBOX vol.001 × reche 1st live BD : cloud 9+1』
発売:2023年9月9日
販売先URL:https://reche.lnk.to/rechecoverjukebox001
【レギュラー盤(CD)】
価格:¥3,000 (税抜)
〈収録曲〉
1.月のワルツ
2.幽霊東京
3.みなと
4.ビターチョコデコレーション
5.マフィア
6.abnormalize
7.KING
8.命に嫌われている。
9.Pretender
10.大丈夫
*全曲アルバムリマスタリング
【受注生産限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:¥8,500(税抜)
〈Blu-ray収録曲〉
1. 覚醒
2. imagination
3. 女の子は誰でも
4. ビターチョコデコレーション
5. 月のワルツ
6. 桜流し(ft.marasy)
7. 夢、時々…
8. 幽霊東京
9. KING
10. 命に嫌われている。
11. 大丈夫
【FC限定盤(2CD)】
価格:¥4,000(税抜)
2枚目CD内容 : ご挨拶 / 全曲ライナーノーツ / ボーナストラック
15th Digital Single『101 bells ring』
10月1日配信リリース
■ファンクラブイベントツアー情報
『c*take funggs!! : THANXGIVING c*TURKEYS』
11月3日(金・祝) 大阪 YES THEATER
11月17日(金) 東京 大手町三井ホール
12月9日(土) 福岡 ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13
詳細はこちら
https://www.reche-fc.com/posts/news/bajtps
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