歌声を武器に自由度を広げる注目のシンガーソングライター SUKEROQUE グルーヴに乗って発揮される“人懐っこさ”

 作詞作曲はもちろん、アレンジも行うシンガーソングライター SHOHEIによるソロユニット SUKEROQUE(スケロク)。ロック、ファンク、R&Bなどのジャンルを織り交ぜながら、踊れるアッパーチューンからしっとりと聴けるメロウチューンまで、幅広い楽曲を生み出すことのできるセンスとスキルが、今じわじわとその魅力を世の中に広め始めている。今年7月に「オリーヴの星」「蝸牛」という2曲を同時に配信リリース、続けてこの8月16日には新曲「COOL CHINESE」を発表。立て続けに産み落とされた3曲はどれも違うベクトルを持ち、かついずれもハイクオリティ。SUKEROQUEというアーティストの振れ幅をはっきりと示すものになっている。

 もともとバンドとして活動していた頃から数えると、そのキャリアは決して短いものではない。SUKEROQUEという名義での活動をスタートさせてからも5年ほどが経っているそうだ。その経験値は確実に楽曲に表れていて、どの曲を聴いても自分の武器をしっかりと認識し、かつその使い方を熟知しているという手応えがある。ライブに関しても同様。といっても筆者は一度観ただけなのだが、演奏の安定感はもちろん、初見で様子見の観客さえも巻き込んでライブの空気を作っていく手腕は見事だった。

 さて、ではそんなSUKEROQUEの“武器”とは何だろう。メロディの気持ちよさやアレンジの能力はもちろんだが、パッと聴いて強く印象に残るのはやはりSHOHEIの歌声だろう。柔らかな質感を駆使しながら、語りかけるような中音域から突き抜けるような高音域までを自在に行き来するそのボーカルがあるからこそ、SUKEROQUEはどんなタイプの楽曲でも自分のものにすることができる。その魅力はEP『SUKEROQUE』(2019年)や、『Enjoy Music! New Wave Generations Vol.2』(2021年)に収録された「Ferment」などでもはっきりと感じることができる(ちなみにこれらの作品はサブスクで聴くことができるので、ぜひチェックしてほしい)。

 ロック調のストレートなビートからタメの効いたファンキーなリズムまで、彼の生み出す楽曲のグルーヴは本当に多彩だが、それを難なく乗りこなしていくセンスには特筆すべきものがある。例えば2020年にリリースされた「AQUARIUM」という楽曲がある。抑制の効いたアレンジが歌を引き立たせるミドルチューンだ。リズムや節回しの端々にR&Bやレゲエのコシの強さを感じさせながらも、トータルで見たときに端正なJ-POPとして着地できているのは、彼の歌唱が持つ生来の“人懐っこさ”によるところが大きいのではないかと思う。

【MV】AQUARIUM / SUKEROQUE

 今年リリースされた3曲はどれも、その歌の力に全幅の信頼を置くことでSUKEROQUEとして表現できる領域を一気に拡大したような印象の楽曲だ。とりわけ7月にドロップされた「オリーヴの星」と「蝸牛」は、かたや渋いファンクネスを宿したシティポップ、かたやシンセサイザーの音色が優しく響くR&Bと、まったく違う方向性を有している。しかし、どちらも強度の高い音がドラマティックに展開する一方で、SHOHEIのボーカルにもこれまで以上に光が当たるという、理想的ともいえる相乗効果を生み出しているという点では共通してSUKEROQUEのネクストフェーズを象徴するものになっている。

 まずは「オリーヴの星」。イントロから鳴り響くロックなギターリフがまず耳を奪い、その後もゴリゴリのグルーヴが楽曲を牽引していくが、そこにSHOHEIの声が入ってくると一気にその印象が中和され、軽やかなポップスへと変貌していくダイナミズムがとても興味深い。どちらかといえば、落ち着いた印象のBメロまでの展開から一気に飛翔するサビで訪れる高揚感。ここで歌が主役に躍り出ると、見えている景色がガラリと変わるような感覚を味わえるのだ。

【MV】オリーヴの星 / SUKEROQUE

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