YOASOBIとCreepy Nutsはなぜ世代を越えてブレイクしたのか 2020年代音楽シーンを牽引する2組の共通点

 Ayase(YOASOBI)とR-指定(Creepy Nuts)がタッグを組んで、TVアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(フジテレビ系)オープニングテーマである「飛天」をリリースした。作曲はAyaseが手がけ、作詞はAyaseとR-指定が共作した楽曲となっている。

 AyaseとR-指定といえば、これまでにもいくつか関わりのある2人だ。まず印象深いのは2021年の『YOASOBIのオールナイトニッポンX(クロス)』(ニッポン放送)であるという人も多いのではないだろうか。この時は、YOASOBIの番組にCreepy Nutsがゲスト出演する形で放送されたのだが、もともとAyaseがCreepy Nutsファンを公言していたことからこのブッキングが実現したようだ。この時のオンエアでは、Ayaseがとある喫煙所でR-指定を見かけた際のエピソードを披露。曰く、R-指定のファンだったAyaseは人見知りながらも、何とかR-指定にお近づきになろうと声をかけたが、それ以上に人見知りだったR-指定に素っ気ない態度を取られてしまい、友好を深めることに失敗した……ということだった。

 ただ、その番組がきっかけで打ち解けたYOASOBIとCreepy Nutsは、昨年、Creepy Nuts×Ayase×幾田りらとして「ばかまじめ」をリリースし、オールナイトニッポン55周年記念公演『あの夜を覚えてる』の主題歌としても大きな話題を集めた。それから1年以上の月日が流れ、今回はAyaseとR-指定が直接タッグを組むことになるのだった。

Creepy Nuts×Ayase×幾田りら / ばかまじめ 『あの夜を覚えてる』Special Video

 2人がそれぞれ根ざしているジャンル自体は異なる印象があり、AyaseはボカロPとしての一面がありつつ、メタルコアやハードコア、ラウドロックなども愛聴している。一方のR-指定は、ヒップホップを軸にサバイブしながら『フリースタイルダンジョン』で頭角を現した。このようにルーツやアウトプットする音楽ジャンルは異なるが、全くタイプが違うアーティストなのかというとそんなこともなくて、いくつか共通点を見出すこともできる。

 例えば、そのジャンルに精通していない人も「ファン」として巻き込み、自分たちの音楽をポップミュージックとして大衆に届けているところは、共通している部分である。

 YOASOBIの出世作である「夜に駆ける」は、AyaseのボカロPとしてのイロハが多分に落とし込まれた楽曲でもあったため、リリース当時はネット音楽シーンに精通したリスナーを中心に刺さっていた印象だった。だが、TikTokでの楽曲の引用投稿が急増し、『NHK紅白歌合戦』出演や武道館公演などを果たして以降はリスナー層がさらに広がり、今や2020年代J-POPシーンを代表する存在にまで登りつめた。Creepy Nutsも多くの楽曲がヒップホップにカテゴライズされるものだが、独特のユーモアとキャッチーさ、親しみやすいキャラクター的な魅力も相まって、ヒップホップやラップミュージックに馴染みのないリスナーにも刺さっている印象だ。また、ロックフェスに精力的に出演してきたことも、幅広いリスナー層にCreepy Nutsの楽曲が浸透した大きな要因だろう。

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