THE SUPER FLYERSのギタリストでも活躍 田中“TAK”拓也、バークリー進学やSKY-HIとの出会いから生まれたオリジナリティ

フルバンド以上に苦労して形になった“スクワッド編成”

――下の世代のギタリストの中で、TAKさんが特に注目している人はいますか?

TAK:原ゆうまくんは僕と同じバークリーの出身で、ウォーリーズの重鎮 ジェフ・ロックハートの授業を受けていて。彼はプロデュースもするし、エンジニアリングもするし、いろんな楽器も弾けるし、高身長のイケメンで、何ひとつ太刀打ちできないんですけど(笑)。一ギタリストとしても非常に多面的で、クリエイティブで、単純に技術も高くて、以前僕が出られなかったときにSKY-HIのライブにも参加してもらったりして。彼は自分の作品も出してるし、三代目 J SOUL BROTHERSのツアーに参加したり、T-SQUAREのサポートをしたり、すでに売れっ子なんですけど、活動のレンジが広いので、追いかけると楽しいんじゃないかと思います。

――今、多方面で活躍しているプレイヤーの多くは自分の作品もちゃんと作っていて、それが名刺代わりになって「この人とやりたい」っていう熱量に繋がっているから、それがすごくいいですよね。

TAK:(石若)駿がくるりとやったりしているのも素敵なコラボですよね。ギタリストで言うと小川翔も素晴らしいですけど、彼も米津(玄師)さんやWONKとかともやりつつ、自分でLAGHEADSを組んだりしていて、もはやそこに大御所のセッションミュージシャンが介在する余地はないんですよね。King Gnu界隈もそうで、ちゃんと自分たちのサウンドやスタイルを持ってる同世代のミュージシャンたちで構築できていて、すごくオリジナルな質感の音楽を打ち出している。それはすごく幸せな状況なんじゃないかと思います。

――TAKさんは現在SKY-HIさんのサポートをされていて、THE SUPER FLYERSのバンドマスターでもあるわけですが、個人的にはギター、ドラム、DJのみの「スクワッド編成」がとてもかっこいいなと思っていて。あの編成の成り立ちについてお伺いしたいです。

TAK:そう言ってもらえるのはすごく嬉しいですね。スクワッド編成を今の形に持っていくまでは、フルバンドの2~3倍大変だったんですよ。最初が大所帯からスタートしてるので、すごくデカい車に乗ってたのが、いきなり軽自動車になるみたいな感じで(笑)、最初は3人+サックスにしようとか、ギターが忙しくないときにキーボードも弾くとか、いろいろやってみたんです。でも、その場しのぎなことをやっても曲全体のクオリティを上げることにはならないから、もっと根本的な底上げをしないとダメだなと思って。今DJのHIRORONはサンプラーとターンテーブルとコンピューターの3つ操作があるんですけど、HIRORONと「フルバンドは1回忘れよう」っていう話をして。

――別物として考えようと。

TAK:そうですね。俺らの手は3人で6本しかないわけだから、元々のTHE SUPER FLYERSとは別物として考えて、原曲には入ってないベースを入れたりするようになって。そこは聖域というか、手を出しちゃいけないところかなと思ってたけど、サウンドがよくなるならやった方がいいから、継続的にトラックをいじり始めたんです。僕とドラムのもっちー(望月敬史)の演奏にしても、最少人数で最大のパワーが出るようにサウンドデザインをしたいから、フルバンドのときより情報量を増やして、僕のギターも普段の1.5倍くらいの音量にわざとしてるんです。HIRORONは演奏しながらミキシングもしてて、そういう細かい蓄積を集約すると、3人でもあの音が出せる。コロナ禍でも日高くんがスクワッド編成で継続的に動いてくれたから、相談する時間もあって、去年のツアーでやっとこの編成に対する確信が持てた気がします。

――間違いなく、SKY-HIのライブの新たなスタンダードになったなと。

TAK:ある意味幸運だったのが、日高くんの新しい曲がよりUSの現行のヒップホップトラックみたいな感じになっていったから、今は逆にフルバンドの方が難しいというか、「この曲、シンセベースとドラムしかないけどどうする?」みたいな感じになっちゃうんですよね。それって世界のトレンドともリンクしていて、ビリー・アイリッシュのバンドも3人編成だし、この前来日したリナ・サワヤマも3人編成なので、日高くんの先見の明、すごいなって。

――スクワッド編成が始まったのは2019年でしたよね。

TAK:そうですね。『JAPRISON』ツアー(『SKY-HI TOUR 2019 -The JAPRISON-』)が終わって、その後のイベントとかで実験的にやり始めて、そんなに大きくないステージだと、スクワッド+ダンサーで見え方的にもすごくよかったんですよね。『八面六臂』ツアー(『SKY-HI HALL TOUR 2022 -超・八面六臂-』)はクロスリアリティっていう、プロジェクションマッピングのステージ版みたいなものを導入して、バンド3人だけだとビジュアル的にものすごくかっこよくて、シンプルだけど説得力がある。この間の『D.U.N.K. Showcase』にドリカムさん(DREAMS COME TRUE)が出てて、ドリカムさんのバンドには知り合いもたくさんいるんですけど、マニュピレーターの人からも「あの編成、どうやってやってるんですか?」って、驚かれましたね。

SKY-HI / Sky's The Limit [SKY-HI HALL TOUR 2022 -超・八面六臂- 2022.09.01 @国際フォーラムA]

日高くんを構成してるパーツの一つひとつがリッチになった

――ここまでの話を振り返ると、もちろん日高さんや、HIRORONさん、望月さんの存在もありつつ、もともとギターだけじゃなくて、シンセやサンプラーも使いながら、ミクスチャーな音楽を追求してきたTAKさんだからこそ、スクワッド編成も形にすることができたのかもしれないですね。

TAK:そうかもしれない。スクワッド編成に関しては、「この間使ったソフトシンセよかったから、ちょっとだけイコライザーでこうしない?」みたいな、サウンド面の話をすることが多くて。

――ドラマーにしても、技術があるのはもちろん、自分でトラックメイクもして、同期に対応できる人が今は求められていると思うし、サウンド感は大事なポイントですよね。

TAK:ドラムのサウンドはめちゃめちゃ時代を反映するので、スクワッド編成でも細かなピッチの調節からマイクまでかなり気にしながらやってます。下の世代に対してもすごく感じるんですけど、みんなサウンドコンシャスなんですよね。生演奏の音だけじゃなくて、電子音楽のエッセンスも頭の中で鳴った状態でプレイしてる人が多くて、そういうのは……見ててニコニコしちゃいます(笑)。

――もう日高さんとも長い付き合いだと思いますが、BMSG設立以降の日高さんの変化をどんな風に見ていますか?

TAK:あとで彼の本(『晴れるまで踊ろう』)を読んで気づいたというか、なんとなくはわかっていたけど、やっぱり『JAPRISON』を作ってた頃はいろんな悩みがあったんですよね。でもその時期を経て、日高くんがもう1回SKY-HIになったというか、100%の自信を持って、もう一度違うSKY-HIになったような感じはします。ステージングにしても、今までやってきたことにプラスして、今までとは違う自信も感じるし、別人になったわけじゃないけど、もともと日高くんを構成してるパーツの一つひとつがもっとリッチになったというか……それはステージに一緒に立ってても思いますね。もともとお客さんを巻き込むのは上手かったけど、ここ最近のフェスとかでの巻き込み方は本当にすごくて。さすが社長ですよね(笑)。

――日高さん本人も(オーディション『THE FIRST』のテーマソング)「To The First」は第二のデビュー曲だと言ってるし、オーディションを通じて投げかけた言葉が自分にも返ってきて、アーティストとしての成長につながったと話していました(※1)。

TAK:言霊じゃないですけど、自分で言ったことが自分に跳ね返ってきて、血肉になって、それをパフォーマンスで実証できてるのもすごいですよね。あと『BMSG FES』とかで、客演でAile The Shotaくんとかedhiii boiとかRUI、TAIKI、Novel Coreくんとかが来ると、日高くんすごく元気になるんですよ(笑)。「いいところ見せてやろう」みたいな。やっぱりプレイヤー社長だから、そういうこともモチベーションになっていて、それを見て彼らももっと頑張ろうと思うだろうし、すごくポジティブなエネルギーの循環だなって。何より日高くんがニコニコして楽しそうなのがいいんですよね。

――まもなく開催の『SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMー』も楽しみにしています。では最後に、TAKさんご自身が今後のキャリアについて考えていることを話していただけますか?

TAK:この間(エリック・)クラプトンの日本武道館公演を観に行って、初めて生で観たんですけど、最初の一音からすごくて、自分もちゃんと音で表現できるところまでいきたいと思ったんです。100回同じ曲を演奏しても、ちゃんと熱量やエネルギーをそこに注入して、感動してもらいたい。音ってボケッとしてるとすぐ逃げちゃうんですよ。あと何回ステージに立てるかなんてわからないし、雑なことをせず、1回1回の質をちゃんと上げていって、それで一緒に演奏してる人やお客さんから「よかった」って言ってもらえたら、それが自分にとっては最高の幸せなので、これからも追求していきたいと思います。

※1:https://kompass.cinra.net/article/202106-skyhi

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■ツアー情報
『SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMー』
2023年5月27日(土)
[東京] 代々木第一体育館
開場 16:30/開演 18:00

2023年5月28日(日)
[東京] 代々木第一体育館
開場 15:30/開演 17:00

2023年6月17日(土)
[大阪] 大阪城ホール
開場 16:30/開演 18:00

2023年6月18日(日)
[大阪] 大阪城ホール
開場 15:30/開演 17:00

■発売情報
THE SUPER FLYERS『Here, We Live』
価格:¥7,000(税込)

※2021年にリリースした初のオリジナルフルアルバムのアナログ盤
※『SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMー』のライブ会場とオンラインにて販売

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