安斉かれん、音楽と飾らない言葉で体現した“アンチヒロイン”の精神 「私のことを“ウザイ”と思う人もいっぱいいる」

 安斉かれんが、1stアルバム『ANTI HEROINE』と『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』を同時リリース。2023年5月でデビュー4周年を迎え、最新の“安斉かれん”を提示するような『ANTI HEROINE』、これまでの足跡を辿るような『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』と、それぞれが異なるアーティスト性を感じられる作品に仕上がっている。

 アーティスト活動を続ける中で、音楽制作への意欲が年々増してきているという安斉かれん。『ANTI HEROINE』では、楽曲によって彼女自身が作詞・作曲を担当しながら、様々なタイプの“ヒロイン像”を音楽として昇華。コンセプチュアルな世界観の中で、共感性がありながらも、鋭く尖ったクリエイティブを届ける。そんなシンガーソングライター/アーティストとしての特性を大いに発揮した2作品となった。(編集部)

「安斉かれんとしてのスタイルが確立してきている」

安斉かれん - ANTI HEROINE - Concept Movie

ーー今年5月に迎えるデビュー4周年を前に、待望のアルバムがリリースされました。しかも2枚同時リリースという大ボリュームで。

安斉かれん(以下、安斉):はい。アルバムが出せるというのは純粋に嬉しいです。当初は1枚の予定だったんですけど、これまでに発表していたものも含め、収録したい曲が多すぎて(笑)。結果的に2枚同時にリリースすることになりました。昔の楽曲から最近の曲までが収録されたバラエティに富んだ内容には、「いろんな曲を歌いたい」とずっと思ってきた私の思いがしっかり反映されていると思います。

ーーこの4年間で本当にたくさんの楽曲をリリースしてきましたもんね。

安斉:曲が増えましたよね。昔はイベントに出るときに持ち曲が足りないこともよくあったんですよ。自分のレパートリーを全部やらないとライブが成り立たないとか。その時期のことを考えるとね、本当にたくさんの曲を歌ってこれたなって実感します。

ーー『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』と題されたアルバムは、デビュー当初の楽曲を中心に編まれたものになっています。

安斉:デビュー当時は右も左もわからず、とにかく自分で作詞だけはしっかりしないとって。ただ、活動を重ねる中でどんどんやりたいことが見えてきたところもあって。そういう変化みたいなものが見えるアルバムかもしれないです。

ーー言わば現在に繋がる過程がまとめられたアルバム。

安斉:そうかも。私はもともとJ-POPを全然聴いてこなかったんですけど、デビュー以降は意識して聴くようになったんです。それによって、「あ、こういう日本の曲もあるんだな」「自分もこういうタイプの曲をやってみたいな」みたいな感情がどんどん沸いてきたというか。だから『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』にはジャンルに富んだ、いろんなタイプの曲が入っているし、それがあったからこそ『ANTI HEROINE』というアルバムにも繋がっていったんだと思います。

ーーデビュー当時は10代だったことを考えると、歌詞の書き方、言葉選びにも変化が感じられる部分もありそうですね。

安斉:そうですね。昔の歌詞はけっこうストレートに書くことが多かったんですよ。でも今は例えば自分から出た造語を盛り込んでみたりとか、けっこう書き方は変わったと思います。歌詞だけでなく、音楽を作ること自体に対してのスタンスもどんどん変わってる気がするんですよね。より自分っぽくなってきてるなと思うし、ちょっとずつ安斉かれんとしてのスタイルが確立してきていると思います。

ーー「キミとボクの歌」ではピアノを、インストの「てくてくカレンダー」ではサックスをご自身で演奏されていて。このあたりからも安斉さんの幅広い音楽性が見えてくるかなと。

安斉:「てくてくカレンダー」は私が番組を持っている、FMヨコハマのジングルとして作った曲なんですよ。それをあらためてフルバージョンにして。そういう意味ではちょっと異色な曲ではありますね。

ーーサックスのレコーディングはいかがでしたか?

安斉:普段からちょこちょこ吹くことはあったんですけど、本格的にやっていたのは中学生の頃なので、だいぶブランクがありました。だからレコーディングにあたっては、リードを新しくしたり、しっかり練習をして。「あーサックスってやっぱり楽しいな」って改めて感じました。

ーーアーティストとして、楽器ができることは大きな強みになりますよね。

安斉:確かにそうですね。今でも譜面をパッと読めたりとか、歌うときにサウンドを耳でちゃんと聴き取れたりとか、そういう部分は楽器をやっていた経験が生きているのかなとは思いますね。

ーー一方、『ANTI HEROINE』と題されたもう1枚のアルバムは、コンセプチュアルな内容になっている印象です。タイトルが示すように、いわゆるステレオタイプなヒロイン像、ヒロイズムに物申しているというか。固定観念にとらわれないヒロイン像がそれぞれの楽曲で描かれていますよね。

安斉:最初からコンセプトを決めて作ったわけではなかったんですけどね。いろんな曲を作っていく中で、今まで書いてこなかったようなちょっと挑発的な歌詞が出てきたりもして。で、そういった曲たちを並べたときに、“ANTI HEROINE”というテーマが出てきたことで全体としてまとまったんです。

ーー“ANTI HEROINE”というテーマで括れる楽曲たちが生まれた背景には、一般的なヒロイズムに対して何か思うところがあったということなんですかね?

安斉:確かにそういう部分があったかもしれないなとは思います。すべての曲の主人公は丸っきり自分のことではないし、それぞれの曲で人物像を作りながら書いてはいるんですけど、でもやっぱり自分かなっていう(笑)。たまに「私って多重人格なのかな⁉」と思うときってあるじゃないですか。元気なときの自分と元気のないときの自分はまったく違うし、1人でいるときの自分とみんなと一緒にいるときの自分もまた全然違うっていう。そういう部分が曲としてポンポンと生まれていったのかなって思いますね。

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