岩田剛典、新たな挑戦=ソロステージで届けた“体温” これまでの歩みと可能性が詰まった1stツアーを振り返る

俳優としての活動とのリンクも

――「人生観が集約された楽曲」とおっしゃっていた「Keep It Up」の後は、朗読劇を挟みながら、「Distance」や「言えない」といったミディアムテンポの楽曲が披露されました。朗読劇では、プラネタリウムクリエイターが主人公の切ないラブストーリーを演じられましたが、曲作りの段階から、その構想はあったのでしょうか?

岩田:曲を作っている時は、朗読をすることすら考えていなかったですね。「Distance」は2021年にリリースした曲なので、ライブのことも見えていない状況でしたけど、「言えない」(2022年/アルバム『The Chocolate Box』収録曲)を録っている時も「一番のバラード曲だから、真っ暗な中、スポットライトに照らされながら歌うんだろうなぁ」くらいのイメージでした。でも、ツアーに向けてセットリストを決めて、「このバラードセクションを際立たせる演出は何だろう?」って考えた時に、2021年12月にブルーノート東京でやらせてもらったファンミーティング(『Takanori Iwata 1st Fan Meeting “Be My guest”-vol.0-』)を思い出して。そこでも朗読劇からの楽曲披露をやらせてもらったんですけど、あの会場にはお客さんが300人くらいしかいなかったので、改めてツアーでやることに意味があるなと思いました。新たに脚本も書き下ろしてもらって、披露するに至りましたね。

――朗読劇の主人公の名前が“若宮樹”なのは、岩田さんの遊び心ですか? 『シャーロック』(フジテレビ系)で演じられた役名“若宮”と、映画『植物図鑑』や『一橋桐子の犯罪日記』(NHK総合)で演じられた役名“樹”が思い浮かぶなぁと。

岩田:おお~! まさに、そういうことです(笑)。今回のライブは、僕のこれまでの活動を観てくださっているであろう方々に届けたいという想いで作りましたし、いらっしゃるみなさんも、きっとそういう期待を抱えて足を運んでくださると思ったので、ちょっとしたおもてなし精神を役名に込めてみました。

――お芝居がきっかけで岩田さんのファンになった方も多いでしょうし、素敵なおもてなしだと思います。朗読劇のセクションは、特に反響が大きかったんじゃないですか?

岩田:実際、ファンの方からも「朗読劇のセクションがすごく印象に残った」っていう声がたくさん届いて、やってよかったなって思いましたね。あと、三代目JSBのメンバーには「あんなに長尺で朗読やる人、あまりいないよね」って言われました。「あれだけ長々と喋った後で、休憩もせずにまた歌うなんて、よくやるよね」って(笑)。

――確かにノンストップですもんね。演技→歌→演技→歌という展開の中では、どのように俳優とアーティストのスイッチを切り替えていたんですか?

岩田:意図的にスイッチを切り替えるというよりは、その都度やるべきことを必死にやっていましたね。途中で水も飲めないし、次の展開を考えると今やっていることに集中しきれない自分もいて。ツアー中、「なんで、これをやろうと思ったんだろう……」って、ちょっと後悔することもありました(笑)。でも、今まで自分はさまざまな分野の活動をやってきましたから。それを集約した流れを作れたのかなと思いますし、結果的にはすごく満足の行く作品になったなと感じています。今回は朗読だけじゃなく、スクリーンに映像を映すことでストーリーを肉づけできたので、それに助けられた部分も大きかったですね。

――朗読や映像が加わることで、聴き慣れた楽曲の中に新たなストーリーや情景が見えてくるのも、この演出の魅力だと思いました。「言えない」を歌う前の朗読では、岩田さんも瞳に涙を溜めていましたね。

岩田:ええ……。やっぱり、芝居と歌では違うスイッチが入ってるんでしょうね。かと言って、泣きすぎると呼吸が整わなくなっちゃうので、そこは気をつけてやっていました。

Takanori Iwata LIVE TOUR 2022 “THE CHOCOLATE BOX” DOCUMENT (Official Digest)

――普段やっているお芝居との違いや、朗読劇ならではの難しさは感じましたか?

岩田:朗読劇は1人で何役も演じる必要があるので、その演じ分けが難しいなと思いますね。しかも、会場中の視線が僕1人に集中しているので、緊張感がすごくて。空気がピリッと張り詰めているというか、研ぎ澄まされた空間なんです。その環境下で1人で表現することが、一番の難所でした。

――でも、そこを乗り切ればホッとできる?

岩田:そうですね。これより先には、心から楽しんでいる様子が収録されています(笑)。

――それこそ「Rain Drop」では、観客と一緒にジャンプをして楽しんでいましたね。赤い傘を使った演出から始まったので、こんなに盛り上がる曲なんだっていう驚きもありましたけど。

岩田:それはお客さんからも言われました。音源を聴いて、もっとソフトな曲だと思っていたみたいで、「意外!」って。でも僕の中では、曲を作っている段階から画が見えていたんですよ。縦ハネ系で会場の一体感を作る曲だなって。

――「“雨だー!”ってテンションが上がる曲を作ろうと思ってできた曲」(※2)だと話していましたもんね。

岩田:だから、僕としては狙い通りだし、みんなにとってはいい意味で予想を裏切る曲になったんじゃないかなと思います。

――そして本編ラストを飾るのは、アーティストとしての葛藤や決意を込めた「The Way」と、ファンの方への感謝を乗せた「Only One For Me」。ご自分の歌に合わせてゆったりとペンライトが揺れる光景を、どんな気持ちで見ていたのでしょうか?

岩田:インタビューの冒頭でも言ったように、今回は10都市11公演を廻らせていただき、たくさんの笑顔をいただいたんですけど、中には涙を流しながら観てくれているお客さんもいて……。特にこのセクションは、これだけ多くの方に、少なからず影響を与える自分なんだということを再認識した瞬間でした。だからこそ、発信していく内容や表現するものに対して、もっとプライドを持って活動していかないと! と、気が引き締まる想いで客席を見ていましたね。それは映像に収録されている公演だけじゃなくて、全公演そうで。今回のツアーはチケットが激戦だったと聞いていますし、残念ながら会場に来られなかった方もたくさんいると思うんですが、僕のそんな想いを映像からも感じてもらえたらと思います。

関連記事