Benlou、好芻との対バンで聴かせたグッドメロディと抜群の演奏 同じバンドメンバーながら異なる個性を見せた2組

 今年2月に6曲入りの1st EP『煙』をリリースした、ロッキング・オン主催のバンドオーディション『RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 20/21』にて優勝を果たした仙田和輝(Vo)と、元The Cigavettesのギタリストでくるりや銀杏BOYZ、エレファントカシマシらのサポートや様々なプロデュースワークで活躍中の山本幹宗(Gt)によるユニット Benlouが、3月11日に下北沢・近道(旧・下北沢ガレージ)にてライブを行った。

 この日のライブは『好芻×Benlou Night Market vol.1』と称した、山本と中嶋イッキュウ(tricot/ジェニーハイ)が結成したプロジェクト 好芻(スース)との初のツーマンイベント。会場には話題のニューバンド同士の対バンを一目見ようと、20代の男女を中心に多くのオーディエンスが駆けつけていた。

 定刻となり、まずはBenlouのライブからスタート。仙田と山本を支えるのは、Czecho No Republicなどのサポートも務めるSISTERJETのオオナリヤスシ(Ba)と、元andymoriのメンバーで、現在はclassicusの一員として活躍する岡山健二(Dr)。まずはEP『煙』から「深部感覚」を演奏した。ドライな裏打ちのリズムを刻む山本のギターと、メリハリの効いたフレーズでグルーヴするオオナリのベースが印象的。そして何より、クリアで伸びやかな歌声を聴かせる仙田のボーカルに目が釘づけとなった。マイクのシールドを、手元でクルッと一回転させて持つスタイルは、まるで昭和の歌手を彷彿とさせ頬が緩む。

 続く「煙」では、岡山が繰り出す緩やかな16ビートの上で、どこまでも駆け上がっていくようなハイトーンボイスと、ファンキーなギターのカッティングがエモーショナルだ。気づけばオーディエンスもみな、気持ちよさそうに体を揺らしている。そして、間髪入れずに演奏されたのは未発表の新曲「M37(仮タイトル)」。疾走感あふれるリズムとソウルフルかつ抑制の効いたメロディが、The Style Council「My Ever Changing Moods」を思わせる。続く「City Lights」も未発表の新曲で、サビで唐突に転調したり、随所に変拍子を混ぜ込んだり、ポップなようでよく聴くと歪な構成が彼ららしい。サビでは山本が仙田のボーカルにハモリを重ねたり、アームを駆使して歌うようなギターソロを奏でたり、これまで仙田が作った曲に対して、山本が編曲を施しレコーディングをするというBenlouの“完全分業”だった作曲スタイルから徐々に変わりつつあることを予感させるような楽曲だった。

 「フェイク」は、メロトロンによるひなびたホーンのサウンド、どこか不穏な空気が漂う曲調、そしてサビで一転してMiami Sound Machine「Conga」を思わせるラテンっぽいメロディが印象的。〈そんなこと言わなきゃいいじゃん〉という言葉の響きも聴くたび病みつきになる魅力を持っていて、この日も思わず口ずさみ、そのメロディは終演後もしばらく頭から離れなかった。

 そして、仙田の歌謡曲に対する思い入れが全開となった「路地裏」では、まるで往年の歌番組のように彼が「イントロ曲紹介」を行ない、フロアを大いに沸かせていた。どこかスティールパンを思わせるシンセサイザーのひんやりとしたフレーズと、粘り気のあるリズムで刻む山本のギターが、鮮やかなコントラストをなしていた。

 さらに、四つ打ちのキックに導かれてとびきりキャッチーなメロディを歌う「M41(仮タイトル)」、山下達郎「RIDE ON TIME」を彷彿とさせるような、「これぞシティポップ!」と快哉を叫びたくなる「Coast(仮タイトル)」と未発表の新曲を立て続けに披露。そして、Benlouの記念すべきデビュー曲「Ripple Mark」を情感たっぷりに演奏し、ラストは2ndシングル曲「ミラージュ」。アレンジはThe Stone Roses「Waterfall」にインスパイアされたと山本が公言するこの曲は(※1)、後半に進むに従いサイケデリックな様相を見せていく。最後はシューゲイズなウォールオブサウンドを展開し、大きな拍手が鳴り響く中、ステージを後にした。

 全体的に同期を用いたシンセサウンドがフィーチャーされており、それを生身の演奏にしたらさらに良くなりそうだ。が、まだ固さの残る初々しい仙田のパフォーマンスと、それを温かく(時に茶々を入れながら)見守る山本の眼差しに思わず熱いものが込み上げた。

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