Chilli Beans.が業界内外から集める熱視線　Vaundyコラボ曲「rose」スマッシュヒット、各種アワード首位に輝く求心力

　3rd EP『mixtape』をリリースしたChilli Beans.（以下、チリビ）。これまでの作品とは違い、さまざまなアーティストとコラボレーションして生み出された今作は、ファンにとっても、そしておそらくは本人たちにとっても、今まで気づいていなかった新しい引き出しを開け、チリビというバンドの魅力や芯の強さを感じさせるという意味でかなりフレッシュな作品になっている。

　昨年は1stフルアルバム『Chilli Beans.』を携えた初の全国ワンマンツアー『Hi, TOUR』を開催し、ファイナルでは彼女たちにとって過去最大キャパシティとなる豊洲PITでのライブをソールドアウトという形で成功裏に終わらせたチリビ。同公演でも披露された“Chilli Beans.なりのクリスマスソング”「daylight」から『mixtape』は始まる。その後に収録された楽曲とは異なり完全に3人だけで作られたこの曲は、その成り立ちという意味ではこれまでの彼女たちの楽曲と変わらない。だが、どっしりとしたスケール感を感じさせるサウンドのトーン、個々の楽器のアレンジや楽曲の構成にふんだんに盛り込まれたアイデア、そして強い意思を感じさせる歌詞の内容（〈皆振り向くような／自信に満ち溢れてる／誰にも止められやしない／人混みかき分けて進め〉）など、ガラリとアップデートされた「新しいチリビ」がぎゅうぎゅうに詰め込まれているという意味で、今このタイミングで打ち出されるにふさわしい意欲的な楽曲だといえる。

　その「daylight」に続いて聴こえてくるのが、彼女たちにとっては音楽塾ヴォイスの同窓生であり、これまでも一緒に制作を行ったこともあるVaundyをフィーチャーした「rose feat. Vaundy」だ。この曲は今まさに飛ぶ鳥を落とす勢いであるVaundyとの相乗効果もあって「Billboard JAPAN」のチャート“JAPAN Heatseekers Songs”でもチリビ初の1位を獲得、全国総合ラジオオンエアチャートやUSENランキングでも首位を獲得するほか、キャッチーなMVも話題となっている。

　チリビとVaundyといえば1st EP『d a n c i n g a l o n e』収録の「lemonade」での共作が思い浮かぶが、そのときは共作とはいえどちらかといえば「Vaundyがチリビのデビュー曲をプロデュースする」という言い方のほうがしっくりくる関係性だった。しかしこの「rose」は違う。チリビらしい生バンドのグルーヴ感とVaundyのセンスがうまく混じり合ったトラックも、Moto（Vo）とVaundy、両者のボーカルがときに絡み合い、ときにぶつかり合うデュエットのスリルも、文字どおりがっぷり四つのコラボレーションになっている。制作作業の中では実際にチリビの3人にVaundyを加えた4人でスタジオに入り楽曲を練り上げていくといくプロセスもあったそうで、結果としてチリビのよさもVaundyのよさも組み入れながら、一緒にまったく新しい場所に到達するような1曲になった。

　上記の2曲はいわばこのEPの「顔」のような曲たちであり、この2曲を聴くだけでもチリビが今どれだけよいコンディションにあるかというのはわかるだろう。コラボレーションを軸にした作品を作るというアイデアはスタッフを含めたチームでの議論の中で生まれたものだったようだが、逆にいえば、本人たちもスタッフ陣も、今のチリビであればそうした形で作品作りをしてもアイデンティティは揺らがないという自信や自負があったからこそこうしたやり方をチョイスできたのかもしれない。その証拠に、3人だけで作り上げた「daylight」も、Vaundyとのコラボで生まれた「rose」も同じくらいの強度でEPを牽引する楽曲になっている。