4s4ki、強烈な二面性によって高まる求心力 ポーター・ロビンソンとの共演はボーダーレスな存在感の新たな象徴に

 筆者が4s4kiの音楽に初めて触れたのは今から約2年前、Spotifyの『hyperpop』のプレイリストを何気なく聴いていた時のことで、「Sugar Junky」の楽曲・アートワークの両面におけるストリート的な感覚と歪に突き抜けたポップ性のハイブリッドさにすぐに夢中になったのを覚えている。その後もロックバンド CVLTEとのコラボレーションによって生まれた「kuromi. (feat. 4s4ki, sacha online)」におけるロックサウンドとも高い親和性を発揮する姿に対して、100 gecsやnothing, nowhere.、underscoresといった海外のアーティストにも通ずるような、様々なジャンルを越境する現代のアーティストらしい佇まいを感じていた。

4s4ki - Sugar Junky (Official Music Video)

 「Sugar Junky」も収録されているメジャー1stアルバム『Castle in Madness』(2021年)には、その時点でオーストラリア在住のZheaniやニューヨーク在住のPuppetといった海外のクリエイターとのコラボレーション楽曲や、初期から4s4kiをフックアップしてきたことでも知られる釈迦坊主との楽曲が収録されており、同作はメジャーという(ともすればむしろドメスティックな方へ向かう可能性もある)フィールドでも構わずに国境やジャンルを超えて繋がる4s4kiの存在感を音楽シーンに印象づける作品だったとも言えるだろう(Zheani、Puppetらとは2022年に自身の主催イベント『NEW ALTERNATIVE FESTIVAL “AREA 44 vol.1”』でも共演を果たしている)。

4s4ki - FAIRYTALE feat. Zheani (Official Music Video)
4s4ki - gemstone feat. Puppet(Official Music Video)

 2022年はまさに4s4kiにとって飛躍の年となり、前年末にリリースした『Here or Heaven』との連作EP『Here or Hell』を年始に発表して熱烈な支持を集め、3月にはかの『SXSW 2022』へのオンライン出演を果たし、現時点における最新アルバムとなる『Killer in Neverland』がアメリカの著名音楽メディア『Pitchfork』にも取り上げられ、同メディアの「The 100 Best Songs of 2022」に「Punish」(『Here or Hell』収録)が名を連ねるなど、4s4kiの音楽は日本国内に留まらず世界各国の音楽リスナーの元へと届けられていった。

4s4ki - Punish (Official Lyric Video / Music Video)

 興味深いのは、その音楽やアートワークが尖れば尖るほどにその求心力が大きくなっていくことだろう。『Killer in Neverland』を象徴する楽曲でもある「Freedom Kingdom feat. Swervy」では、韓国のラッパーであるSwervyと以前から親交の深い日本のDJ・トラックメイカーであるMasayoshi Iimoriを迎え、煌びやかでバブルガムな輝きを放つポップなトラップとゴリゴリのゴアトランスを往復しながら、融解しそうなくらい甘い歌声とメロディで、分かった気になって接してくる連中を嘲笑う。アートワークにおけるデスメタルバンドのロゴを想起させるほどに鋭利で、それでいてひと目で引き込まれるほどにポップなデザインが示すように、4s4kiは光と闇、天国と地獄、躁と鬱、リアルとバーチャル、ピンクとメタリックシルバー、シンセサイザーとパンクロックと、様々な二面性を表現し続け、その極端さは作品を重ねるごとにますます加速していく。

4s4ki - Freedom Kingdom feat. Swervy (Official Music Video)

 そして、その感覚こそが支持を集める理由なのだろう。そもそも、「ハイパーポップ」という商業的なワードが貼りつけられる以前から、様々なアーティストが情報過多な音楽を志向していたことがその流れの発端であったように、2000年代のポップパンクや近年のヒップホップ、EDMの感覚とナード的なムード、SoundCloudのインターフェースをミックスしてDTMで作り上げられた音楽性やビジュアルセンスは、これまでの音楽やカルチャーの流れを踏まえれば突然変異ではなく、むしろ必然的なものである。日々押し寄せるおびただしい情報の洪水に溺れながら生きていると、ゆったりとしたチルい音楽よりも、4s4kiの鳴らす音楽に詰め込まれた大量の音を浴びる方がよっぽどリラックスできる。

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