グソクムズ、田中ヤコブ、えんぷてい……最後まで言葉とサウンドに耳を傾けたい、懐かしくも新しい日本語ポップス
Laura day romanceは2017年結成の4ピースバンド。インディーポップを出自としながら昨年の2ndアルバム『roman candles 憧憬蝋燭』ではアイリッシュなアレンジに挑戦。一方で歌詞は日本語中心であり、音像とのギャップがユニークだ。井上花月(Vo)の柔らかな歌声が日本語の硬さを溶かし、時折混ざる英語詞とも見事にマッチしている。「winona rider | ウィノナライダー」の〈振り向かないように忘れなきゃな/君のことと寂しい音楽〉という一節に向かう物語の運びなど、恋や青春の光と影をシアトリカルに表現する卓越したストーリーテーリングが魅力だ。
えんぷていは2020年に名古屋で結成された3ピースバンド。ドリーミーに揺らめくギターワークと小気味よいリズムが印象的な楽曲は陶酔感に満ちている。また生活場面とSF映画のようなシーンが交差した歌詞も不思議な聴き心地をもたらす。〈僕は最後の人 この惑星もそうさ/さみしくはない そういうものと教わったから〉と歌う「Ooparts」など、壮大なスケールとミニマルな感情がひしめく柔軟で自由な日本語の使い手だ。
2020年に北海道で結成された4ピースバンドgoetheはR&B、ネオソウルの影響が色濃いサウンドで新しい日本語ポップスを志向している。〈間違いない私は/心の奥の君に/まだ恋してる〉(「煙管」)、〈妄想してた夜が恋しい/自惚れていないで/側に来てよ〉(「熱りが冷めやらぬうちに」)など、切実な気持ちをストレートに綴るロマンチックな歌詞が、メロウかつ艶やかな歌唱と抜群の相性を誇っている。
言葉へのアプローチや描きたい事柄は様々であり、抽象/具体表現の強弱やサウンド、メロディとの調和などあらゆるこだわりが詰まった日本語詞という表現。キャッチーなわかりやすさは控えめだからこそ、音楽として届いた時の響き方は特別なものになる。短い尺で嗜むのとは異なる、1曲を通してじっくり味わうからこそ感じ取れる特別な情緒があるはずだ。
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