リュックと添い寝ごはん、出会いを経て深めた音楽への愛 新体制の変化と絆が詰まった『四季』に至るまで
バンドの集大成が曲になった「Thank you for the Music」
ーーそのなかでも新曲中心に話を聞いていきたいんですが、まずアルバムのオープニングを飾る「everyday」はどういうふうにできたんですか?
松本:これは最近というか、今年の2月に千葉の方で合宿をしたんですけど、そこで作った曲です。最初は10秒ぐらいの曲というかオープニングSEみたいになる予定だったんです。でもこんなにいいメロなのにもったいないってなって、その場でセッションみたいな感じで作り上げたらこうなりました。
ーーこの曲でアルバムが始まるわけですけど、これを聴いただけで今のリュックと添い寝ごはんがめちゃくちゃいい状態であることがすごくよくわかるじゃないですか。みんなで音楽を楽しんで、声を上げて、手を叩いて。
松本:うん。やっぱりそこはすり合わせがすごく大事だったなと思います。昔もバンドの状況がいい時期があったりしたんですけど、お互いがお互いのことを知りきれてない感じではあったんです。でも今はもう、家族みたいな距離感で接することができる。だからギュッとまとまったのかなって。バンドとして、本当に何気ない毎日をずっと積み重ねてきたからこういうふうになれたのかなって思います。
ーーしかも〈僕らの曲をお供にして〉っていうキラーフレーズがこの曲にはあって。バンド内で楽しんでいるだけじゃなくて、それを届けるというところまでがつながっている感じがするのがいいですよね。
松本:僕にとって「音楽」はずっとそうやって寄り添うというか、自分が日々を過ごしているなかに流れているものだったので。僕らの音楽もそうなったらいいなというか。
ーー「疾走」でも〈今を歌えば/少し遠い街も晴れる〉と歌っていますし、リュックと添い寝ごはんにとっての「音楽」というのはそういうものであると宣言している感じがする。
松本:「疾走」は、最初は本当に勢いで作ったんです。でも最後に歌詞を書いたら、このアルバムのなかでも自分の内面が一番出ているものになりました。〈完璧なんて求めない/ちょうどいい半分がいい〉っていうのも僕が完璧主義なので、そういう自分への助言というか、言い聞かせている言葉なんです。高校時代に曲を作っていたときのような感覚で自分に向けて歌詞を書いていたので、そういうパッションみたいなものはすごく詰め込まれていると思います。
ーー「アップルパイ」もいい曲なんですが、これは?
松本:「アップルパイ」は、僕一番好きかも。ライブではずっとやってたんですけど、ようやく音源化できてめちゃめちゃ嬉しいです。「くだらないまま」の頃に作った曲なんですけど、幸せを詰め込みたいと思って作りました。
ーーこの曲はまさに「歌」と「愛」を歌っているわけで、このアルバムに至るまでのテーマを先取りしていたような感じもありますよね。
堂免:うん。この曲がじつはこのアルバムの幹、核なんじゃないかなって思っています。「ここから始まった」っていう感覚がやっぱりあって。いい感じに力が抜けているし、聴いていると自然と口角が上がってしまう感じというか。
ーー「Familia」も「home」に通じるような曲だと思うんですけど、「home」よりも踏み込んで日常にある愛を歌っている感じがする。
松本:家族への愛みたいなものをすごく書きたいってずっと思っていたんですけど、それがうまく表現できずにいて。「Familia」はそういう歌ができたなって思います。
ーー〈愛を伝う 日々が恋しい 日々が愛しい〉って歌っていて。リュックと添い寝ごはんは「くだらないまま」以降、ずっと生活や日常みたいなものの大切さを描いてきたじゃないですか。これまでは「愛」という言葉はあまり使わなかったけど、「それこそが愛だったんだ」って改めて言う感じがあって。答え合わせのような感覚もあるんですよね。
松本:そうですね。改めてこうしてアルバムにして振り返ってみて「愛の曲が多い」って感覚なんですよね。しかもそれも、曲を書いていくなかで「こういう愛もあるんだ」と気づいていってるというか。ずっと漠然としていたものを「自分の思う愛はこういうものだ」と歌詞に起こせたのがよかったなと思います。
ーーだからこのアルバムに入ると「東京少女」も「わたし」も、全部そのことを歌っていたんだなって思いますね。松本ユウはずっと愛を歌う人だったっていう。
松本:恥ずかしい(笑)。それに今回、作っていくなかで気づいていきました。
ーーそうするとアルバムの最後の曲「Thank you for the Music」がテーマソングのように聞こえてくるんですけど。これは本当に名曲だと思います。
松本:できた瞬間から手応えはあったんですけど、じつはずっと自信がなかったんです。でもいろいろな人が聴いてくれたので、めちゃめちゃ自信が湧きました。一番嬉しかったのは母が「これは売れるよ!」って言ってくれたこと(笑)。今まであんまりそういうことは言わなかったんですけど。
ーー「売れるよ!」って(笑)。
宮澤:これは曲をもらって聴いた瞬間から、情景が浮かぶなって思っていて。みんな思い浮かべた情景が一緒で、野外でのライブの終盤の曲っていうイメージでした。私はもう「ありがとう!」って言いながら叩きたいくらいの感じ。ライブでもずっとやりたいなって思うし、たくさん聴いてほしいと思います。
沼田:最近はライブでもよくやっているんですけど、バンド全体としても、お客さんとっていう意味でも一体になれる曲で。僕自身も「この曲と一緒に成長していきたい」と思える楽曲ができたなと思いました。
堂免:これも確か最初は合宿でできていったんですけど、初めて合わせるとき、全員思うがままに弾いてとりあえず曲を形にして、演奏し終えてなぜかみんなで拍手をしたんですよ。そういう状態でも手応えを感じられるような曲をアルバムの最後にできて……「音楽にありがとう」っていう感じです。
ーー歌詞がすごいですよね。研ぎ澄まされて、これしかないという言葉が書かれている。「愛」とか「音楽」とか、アルバムを通して歌ってきたテーマをよりエッセンシャルにしていったのがこの曲だと思う。一生歌っていける曲だと思いますし、バンドとしてこれを歌っていくんだっていうテーマにわずか2年でパッとたどり着いてしまったのはすごいなと思います。
松本:ありがとうございます。でも個人的にはそのなかでも結構紆余曲折があったので。本当に大変だったなっていう。でもそれが身になったというか。
ーーミュージックビデオでも最後、新しい車に乗り換えて走り去っていくじゃないですか。やっぱり未来が開けていく感覚があるんだろうなって思って。リュックと添い寝ごはんとしてはこれから先、どんな未来像を描いていますか?
松本:そうですね……常に新しいものを取り入れていくっていうのもそうなんですけど、それだけじゃなくて、昔を振り返りながら歩んでいきたいなって思っていて。
宮澤:素敵ですね(笑)。これからもずっと4人でやっていきたいです。それにずっとお客さんにもついてきてもらいたいし、もっとたくさん聴いてもらいたいですね。
ーー変わっていくだけじゃなくて、自分たちのやってきたこともちゃんと愛しながら進んでいくということですね。
堂免:だから古い車から新しい車まで、じゃないですけど、幅広い人に愛されるような存在になりたいと思います。
沼田:うん、老若男女みんなに愛されるようなバンドになりたいです。
■リリース情報
2nd Album『四季』
2022年11月9日(水)リリース
・VOS限定盤:4,950 (税込)
※四色展開のSpecial Tシャツ付き(サイズ:M、L、XLの3サイズ展開)
※数量限定
・通常盤CD:2,640円(税込)
ダウンロード&ストリーミングはこちら
<収録内容>
1.everyday
2.くだらないまま
3.疾走
4.わたし
5.アップルパイ
6.サマーブルーム
7.はっぴいえんど
8.Familia
9.東京少女
10.home
11.みんなのうた
12.Thank you for the Music
■ライブ情報
リュックと添い寝ごはん『2nd album release tour "四季"』
2023.1.28(土)愛知 THE BOTTOM LINE
2023.2.5(日)宮城 LIVE HOUSE enn2nd
2023.2.12(日)福岡 INSA
2023.2.19(日)大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
2023.2.26(日)北海道 SPiCE
2023.3.1(水)東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO