MO MOMAは“遊び場”であり“実験場”でもある 「普通はNG」を全肯定する特異な活動スタンスに迫る

CHVRCHES、Battles、The Chemical Brothers…MO MOMAを構成する音楽

ーーLILI LIMITからMO MOMAへと移行するにあたって、それぞれがプレイヤーとして、シンガーとして、コンポーザーとして、どんなアーティストに影響を受けながら、現在のスタンスを作り上げていったのかをお伺いしたいです。

黒瀬:LILI LIMITのときは基本ベースとコーラスで、ちょっとシンセベースも弾くくらいの感じだったんですけど、MO MOMAではシンセを弾きながら歌うことも多くなって。なので、エレクトロだけどちゃんとポップスに昇華してるようなユニットだったり、歌声のポップさとサウンドの鋭さをあわせ持ったアーティストを意識して聴くようになって、BROODSは結構参考にしました。ただ、今回の「Game」もそうなんですけど、活動していく中でやっぱりベースが印象的な曲も多くなってきて、改めてやばい歪みを出してるバンドを聴こうと思って、Museを聴いたりもしてて。単純に、ベースでかっこいい音を出すためにはどうしたらいいのかに立ち返って、いろいろ聴くようにもなってます。

志水:自分のボーカルのルーツはthe cabsの首藤(義勝)さんで、あの歌い方が自分の中での理想なのは変わらないんですけど、MO MOMAの音楽性にはあんまり合わなくて。なので、どういうボーカルが合うんだろうって探す中で、LILI LIMITのときから参考にしてる人ではあるんですけど、CHVRCHESのローレン・メイベリーさんみたいな歌い方もできるようになったらいいなと思ってます。シンセの音色に関しては、自分は新しいものよりちょっと古めの、80年代くらいのレトロな感じが好きなので、そういう要素を融合させることも考えつつ、でもMO MOMAにはMO MOMAの良さがあるので、そこはある程度委ねて、自分がいることでどう化学反応が起きるのかを楽しんでるような感覚もありますね。

土器:自分の中にはオルタナな部分と、電子的なサウンドの部分と、歌もののポップスの部分と、大きく3つの要素があって、それぞれのバックボーンがあるんですけど、最近は耳触りの新鮮な音を作りたいっていうのがマイブームになっていて。その点で言うと、BattlesとかAdebisi Shankとか、ああいうエフェクターを使った変な音作りというか、ちょっと気味が悪いような、あんまり聴いたことがないような音を作りたいっていうのがあります。あと最近Corneliusを聴き返して、「Drop」とかはめちゃくちゃ影響受けてるなって、改めて思ったりもしました。

ーー新曲のタイトルが「Point」なのは面白いリンクですね。高橋くんは曲作りにどのように関わっているのでしょうか?

高橋:僕は土器さんからデモが送られてきた時点で、全体像がどうなったらかっこいいかを考えて、そこから音楽を探しまくる工程があって。リファレンスになるような曲をいろいろ聴いて、引き出しを増やす作業を、実際に手を動かすよりも前にまずやるんです。そういうことで言うと、「Game」はもともと好きなThe Chemical Brothersの影響があって、僕の中ではあの人たちも一個一個の音は間抜けというか、変な音が使われてたりするけど、全体で聴くとめちゃめちゃかっこいい。そういう要素を落とし込みたいと思ってました。

MO MOMA - Game【Official Music Video】

ーー「Game」はもともとオンラインゲームにインスパイアされて制作したそうですね。

土器:周りでやってる人が多くて、全然タイプの違う人同士がゲームの中ではチームになって、倒し合ってるっていうのが面白いなと思って。

ーー土器くんもやってるんですか?

土器:僕はやってないんですけど、この2人(志水と高橋)がめっちゃやってて。

志水:私は「Apex」を狂ったようにやってます(笑)。

土器:曲によって、「この曲は意味を込めたい」っていう曲と、そうじゃない曲があって。「Game」はサウンド重視で作ったので、これに合いそうなテーマが何かないかと思ったときに、音色からゲームっぽさというか、銃撃みたいな印象を受けたので、オンラインゲームをテーマにしたら合いそうだなと思って。

ーー攻撃的なトラックとアンニュイな歌声の組み合わせはMO MOMAのひとつの「らしさ」だと思いますが、もともとはどういうアイデアで作り始めたのでしょうか?

土器:もともとは、好きなことを何回も延々と繰り返す男子的な感じの曲が作りたいと思って(笑)。

ーーどういうこと(笑)?

土器:「これ好き!」ってなったら、そればっかりやっちゃう男子みたいな曲っていうか……曲の中で毎回シンコペーションしてて、それをメンバーと演奏して、ニヤニヤしながら楽しんでる。その感じをひたすらやる曲にしたいっていうのが始まりだったんです。最初はやりたいノリだけ伝えてスタジオで一回合わせて、その中で志水が弾いた間奏のベルみたいなフレーズがよかったからそれを入れたり、大枠はセッションでできた曲ですね。

ーー途中の話でもあったように、ベースはかなり歪んでますね。

黒瀬:LITEの井澤(惇)さんをイメージしました(笑)。

土器:黒瀬に対して、「こういうベース弾きたいでしょ?」っていう気持ちもありましたね。

ーーメンバーへの当て書き的な側面もあったと。ビートに関してはどうですか?

高橋:デモのときは普通にドラム三点のトラックが入ってたんですけど、とりあえずそれはミュートさせてもらって、もっと奇抜なことをやりたいっていうのがあったんですよね。この曲でやりたかったのは、「シンセとビートの間」みたいなイメージで、ビートの一個一個にちゃんと音程がついていて、シンセともとれるようなビートで間を埋めていく、みたいなことがやりたくて。そもそもドラムを叩いてレコーディングをしないので、打ち込みである必然性はいつも意識していて。ドラムっぽい音を打ち込みで作るなら、ドラムでいいじゃんと思っちゃうので、そこは割り切って、打ち込みでしか出せない良さを意識してます。

ーー生ドラムを録音したことは一回もないんですか?

高橋:やってないです。

土器:シンバルだけとかはあるんですけど、がっつり組んで録ったことはないですね。「Game」はスネアやキックの音が3~4種類あって、それは普通のドラムだったら絶対できないというか、考えもしないことなので。

高橋:そのうえでライブだと生ドラムを入れることで肉体性が追加されて、より楽曲を進化させられる楽しさもあるんです。

ーーボーカルに関してはどうでしょうか?

志水:Aメロはあんまりやったことのない歌い方をしているので、レコーディングはかなり難しかったです。デモのときは結構埋もれてしまったので、本番では少し歌い方を変えて、ライブでやる中でもう少し変えたり、かなり試行錯誤の一曲ではあります。

土器:語尾のニュアンスのけだるい感じとかは結構意識してもらった記憶があります。この曲はメロディが単調で、Aメロとかはほぼ一音で構成されているので、ただまっすぐに歌っちゃうと、本当に単調になっちゃうので。

志水:でも歌詞が英語なので、アクセントがしっかりしてないとベタっとしちゃうんです。「けだるく歌いつつ、でも発音ははっきり」みたいな、そこがすごく難しかったですね。ただ、MO MOMAはボーカル一本だけっていうことはあまりないので、重ねる体で録ったっていうのはあるんですけど。

土器:だから録るときも一本で判断しないで、二本目を録って重ねて聴いてどう聴こえるかから考えるんです。

志水:「Roll」はすごく「歌」っぽく歌ったけど、ノリは別として、「Game」はより楽器っぽく歌ったというか、そういう違いもあると思います。

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