2022.08.10 06:00

梶裕貴、小野賢章らが歌う誰もが知る“青春の1曲”　声優によるJ-POPカバー最前線

文＝榑林史章

　そういった背景の中、冒頭でも触れた『[Re:collection] HIT SONG cover series feat.voice actors』には世代も様々な30名の男性声優が参加し、J-POPの名曲をカバーした。

　『90’s-00’s EDITION』は、小野賢章が優しいボーカルで「ロビンソン」（スピッツ）を聴かせ、新垣樽助は男性キーで「Hello,Again～昔からある場所～」（My Little Lover）の新たな魅力を引き出した。また、近藤孝行がハイトーンで歌った「TOMORROW」（岡本真夜）、前野智昭の世界観あふれる歌い回しが印象的な「Another Orion」（藤井フミヤ）、岸尾だいすけによるパワフルな「田園」（玉置浩二）、KENNの哀愁漂うボーカルが魅力の「今宵の月のように」（エレファントカシマシ）、柿原徹也が魂を込めて歌うロックバラード「HOWEVER」（GLAY）と、長年活躍する彼らの歌声はどれも原曲愛と個性が感じられて聴き応えがある。さらに濱野大輝は低音ボイスで「あの紙ヒコーキくもり空わって」（19）を歌唱した他、野島健児は情熱的な「サウダージ」（ポルノグラフィティ）、田丸篤志は「secret base ～君がくれたもの～」（ZONE）でノスタルジックな思いにひたらせてくれる。

[Re:collection]全曲試聴動画第1弾（90's-00's）

　『00’s-10’s EDITION』は、大河元気の「大切なもの」（ロードオブメジャー）で元気いっぱいに幕を開ける。梶裕貴の「雪の華」（中島美嘉）はハイトーンと儚さでさすがの歌唱力。立花慎之介はシンプルで真っ直ぐな歌声で「明日への扉」（I WiSH）を聴かせる。日野聡の「花」（ORANGE RANGE）は、高音・中音・低音の3種類のボーカルを見事に一人で歌い分けていて、本作の聴き所の一つだ。また、入野自由は「青いベンチ」（サスケ）を透明感あふれる歌声で披露。ヒプノシスマイクの三郎でお馴染みの天﨑滉平による「さくらんぼ」（大塚愛）は可愛い声とユーモアたっぷりの歌い回しで個性を発揮。『東京リベンジャーズ』マイキー役で人気沸騰の林勇は、「全力少年」（スキマスイッチ）を自分のものにしている印象。浅沼晋太郎はどこか気だるさのある「粉雪」（レミオロメン）を聴かせ、森田成一は「蕾（つぼみ）」（コブクロ）でエモーショナルな歌声を、千葉翔也は「キセキ」（GReeeeN）でラップも披露し、青春の汗とピュアな気持ちを蘇らせてくれる。

[Re:collection]全曲試聴動画第2弾（00's-10's）

　『10’s-20’s EDITION』の1曲目は、『呪術廻戦』でブレイクした榎木淳弥による「ずっと好きだった」（斉藤和義）。不器用な男性のピュアな思いが榎木のキャラクターとも重なり、スッと胸に入ってくる。バンド活動も行う沢城千春は、「あとひとつ」（FUNKY MONKEY BABYS）を独特のハスキーボイスでエモーショナルに歌い上げた。浪川大輔は自身が主人公・風早翔太を務めたアニメ『君に届け』の実写映画版主題歌「君に届け」（flumpool）を歌唱。矢野奨吾による「オリオンをなぞる」（UNISON SQUARE GARDEN）は難曲を見事に完コピ。石谷春貴は「海の声」（浦島太郎／桐谷健太）で、空に広がるような壮大な歌声。狩野翔の「ひまわりの約束」は、優しく親近感あふれる歌声でファルセットも披露する。近年の楽曲も多数収録され、TikTokで大ヒットした「魔法の絨毯」（川崎鷹也）を鈴木崚汰、「恋」（星野源）を梶原岳人、「夜に駆ける」（YOASOBI）を山下誠一郎、「白日」（King Gnu）を榊原優希が担当。それぞれ見事なボーカルセンスで、若手声優の歌唱力の高さを改めて実感させる。

[Re:collection]全曲試聴動画第3弾（10's-20's）

　今もなお鮮烈な輝きを放つ懐かしのJ-POPと同時代を生きた声優たち、そして新たな時代を支える名曲と声優たち。30人の歌声の魅力が発揮された他、声優たちの声によって各楽曲のメッセージが如実に伝わってくる本作。「音楽とともに、ふとよみがえる、大切な思い出。笑ったり、泣いたり、誰かに会いたくなったり…宝物のような瞬間とめぐり逢う。“青春”の1曲を、あなたへ。」（※1）とのコンセプト通り、あの日あの時の自分と再び出会うことができる。

　ジャケットイラストは人気のイラストレーター「春泥」「読」「問七」がそれぞれ担当し、レトロでエモーションあふれるタッチによってシリーズが表現され、全種そろえたくなる。また、YouTubeではレコーディング風景の動画が観ることができ、本作の裏側も楽しむことができる。さらに2023年1月22日には、ライブ『[Re:collection] HIT SONG cover series feat.voice actors 1st Live』の開催が決定している。声優によるJ-POPカバーの楽しみが、ますます広がっている。

（※1）https://recollection-songs.com/