NCT、aespa……“SMエンタ推し”が多いのはなぜか 既成概念にとらわれない経営方針と所属アーティストのスタイル

BoA 보아 'Valenti' MV
SHINee 샤이니 'Sherlock•셜록 (Clue + Note)' MV

 H.O.T.やS.E.S.だけでなく、後輩たちも先輩に負けず劣らずのオリジナリティを発揮していて頼もしい。女性シンガーのBoAはSMの念願であった日本での成功を果たしたが、人気に火をつけたのは既存のジェンダー観を超越した歌と踊り、今でいう“ガールクラッシュ”としての魅力であった。サウンド面ではボーイズグループ・SHINeeの奮闘も忘れられない。「Lucifer」(2010年)のサビは一つの音程をひたすら続けるものの、分厚いコーラスや凝ったアレンジが耳を引く。代表曲の「Sherlock(Clue + Note)」(2012年)も聴きものだ。前衛的なイントロに始まり、印象の異なるメロディを組み合わせて一流のポップソングに仕上げている。

TVXQ! 동방신기 '주문 - 「MIROTIC」 MV
Girls' Generation 소녀시대 '소원을 말해봐 「Genie」 MV

 “アイドルらしさとは何か”というテーマに果敢に挑んだ東方神起や少女時代はポップミ
ュージックの歴史に大きな足跡を残したと言えよう。東方神起はH.O.T.の長所を引き継ぎ
ながら独自のカラーを生み出し、一躍スターダムへ。少女時代は既存のアイドルのイメー
ジを保ちながら、メンバーそれぞれが自立した女性としての美しさを提示して、ガールズ
グループの新たな潮流を作った。

NCT 127 엔시티 127 'Sticker' MV

 SHINeeが挑戦した革新的なサウンドメイクは、彼らの後輩たちの楽曲でもしっかりと確認できる。エスニックな笛とノイジーなベース、ジャズ風のピアノで始まるNCT 127の「Sticker」(2021年)は顕著な例だろう。刺激的な音ばかりを並べてヒットソングを作る制作サイドの力量もさることながら、難易度の高いメロディラインを軽々と歌いこなすメンバーに驚いてしまう。

GOT the beat 'Step Back' Stage Video

 2022年の幕開けに、BoAが少女時代やRed Velvet、aespaのメンバーらとともにGOT the beat名義でリリースした「Step Back」もSMらしさを感じさせる1曲であった。オペラの合唱やクラシック風のストリングスといった音の断片で、シャープかつ今風のダンスミュージックに仕立てたのは優れたコンポーザーによるものだが、このようなアグレッシブなサウンドにゴーサインを出したSMと、どんな曲でもメロウに響かせる歌声を持った才能豊かなメンバーたちには感服するしかない。

 SMは以上のように既成の概念にとらわれない姿勢で経営の方針と所属アーティストのスタイルを決めているためか、そこに他にはない魅力を感じる“箱推し”ならぬ“事務所推し”するファンが多いように思う。8月下旬に日本で行われるSM所属の人気アーティストたちによるショーケース『SMTOWN LIVE 2022 : SMCU EXPRESS@TOKYO』も、追加公演が決定するほど好評だ。久しぶりに来日する喜びにあふれたステージで、SMならではの世界をじっくりと味わってもらいたい。

※1 https://www.wowkorea.jp/news/enter/2022/0612/10351659.html

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