AmamiyaMaakoが伝える、怒りや葛藤を経たポジティブな想い DTMの広まり方に変化も

常に「中指を立てる」気持ちでいます(笑)

──冒頭曲「Drops」では、〈気張りすぎて 気疲れして 背伸びして かしこまるのやめた〉と歌っています。つい周囲に気を使って「いい子」を演じてしまう自分への葛藤を描いた歌詞なのかなと思いました。

AmamiyaMaako:本当はみんなはしゃいだりワクワクしたりしたいけど、もう大人だし「いい子」にしてないと怒られてしまう。でも、失いかけていた心を取り戻す「ドロップ(飴)」を見つけよう、というメッセージソングですね。

──ちなみにMaakoさんにとって、本来の自分を取り戻すための「ドロップ」というと?

AmamiyaMaako:旅行ですかね。もともと旅行は好きだったんですけど、今までは自分の創作活動とは関係ないと思っていたんです。でも最近コロナ禍が少し落ち着いて、いろんなところへ旅行できるようになってきたじゃないですか。そうするとそのあとの制作が捗ることに最近気づいたんです。自分にとっての「ドロップ」は、心を解放してくれる旅行だと思いますね。

──「それぞれのストーリーを」は、〈描いた未来と違っても 選んだ道が正解と信じていなきゃ やってられないじゃん〉というラインが個人的にとても印象に残りました。

AmamiyaMaako:最近、知り合いから「女の子の幸せを大事にした方がいいよ?」みたいなことを言われたことがあり、「うるさーい!」って思っちゃったんです(笑)。でも、先日母を連れて旅行へ行った時に「自分がやりたいことを見つけて、一生懸命やっているのが私は誇りだよ」って言ってくれて。その時に思ったことも、この曲の歌詞には反映されているかもしれないです。なんていうか、他人の幸せを自分のものさしでしか測れない人って結構多いし、私と同じような気持ちでいる人に「そんな声、無視していこうよ!」と呼びかけたかったんですよね。

──「Girl's worry」も他者、特に男性からのネガティブな振る舞いに対して中指を立てるような楽曲ですよね。

AmamiyaMaako:(笑)。「中指を立てる」っていい表現ですね。でも実際に「女性」ということで下に見ているのか、「DTMとか本当に自分でやってるの?」みたいな、失礼な質問をしてくる人はいるんですよね。この曲は特にはるかりまあこでの経験が活かされたと思っています。はるかりまあこは、「踊れる曲」を意識して作っていたことが多かったのですが、今まで自分のソロにそういうタイプの曲はなかったのかなと。

──仮谷せいらさんを迎えた「今夜はブギー・バック」はいうまでもなく、たくさんの人がカバーした不朽の名曲です。

「今夜はブギー・バック」cover by ”AmamiyaMaako feat. 仮谷せいら”

AmamiyaMaako:私もこの曲は大好きで、ライブでもよくカバーをしていたのですが、3月9日が「ブギー・バック」のリリース日だったらしく、その日に合わせて小沢健二さんとスチャダラパーさんが、「ブギー・バック」のカバーを募集する企画があって。「ご本人たちが聴いてくれるならやろうよ!」って、せいらちゃんに声をかけたんです。小沢健二さんの「ラブリー」のギターリフを曲の中で引用したりしています。最初、この曲をK-POPっぽい雰囲気でカバーしてみようと思ったんです。でも、作っているうちにだんだん方向が変わっていって、今やK-POPっぽさはほとんどないですね(笑)。

──先行シングルとして配信リリースされた「東京一望」をはじめ、今作はラップを導入した楽曲が多いですよね。『サイゾー』の企画でもヒップホップ界隈のクリエイターをインタビューすることが多かったそうですが、Maakoさんはヒップホップにどんな魅力を感じていますか?

AmamiyaMaako:ヒップホップって必ずしも音楽理論が必要ではなくて、サンプリングのセンスだけで成立するところがかっこいいなと。サンプリングって、ある意味「異色な要素を組み合わせる」ことでもありますよね。それによって新たな価値を生み出すというか。

ーーそれに「怒り」や「反骨精神」はMaakoさんの歌詞にも多分に内包されているように思います。

AmamiyaMaako:それはめちゃめちゃありますね。それこそ常に「中指を立てる」気持ちでいます(笑)。

──やっぱり。実は、はるかりまあこのインタビューの時からMaakoさんにそういうパンク精神は感じていました。

AmamiyaMaako:本当ですか? 出していないつもりだったんですけど……(笑)。でも、言っていただいたように私自身、反骨精神というか「見返してやりたい」と思っていた時期もあったんですよね。まだDTMを始める前に、ある人から「どうせバンドがすごいからやっていけてるんでしょ」みたいに言われたこともあって。今となっては誰が言ったのかなんてもう覚えてもいないんですけど、「なんだこいつ!」と思ったことは今も忘れてないです(笑)。

 ただ、自分の中の「怒り」をストレートに表現しても、結局は誰かを傷つけることになってしまうじゃないですか。それはしたくないので、言葉を変えてみたり、視点をズラしてみたり、いろんな解釈ができるような角度をつけたり、自分なりに気を付けていますね。そうやって作った曲が、誰かの自信に繋がったり、いい方向に向かってくれたりしたらいいなという気持ちでいつも書いています。あくまでも、最後はポジティブな気持ちでいてほしいと思っていますね。

──「PADDLE PUDDLE」はどんな思いを込めた曲ですか?

AmamiyaMaako:私の知り合いで、大学に進学したけどコロナ禍で友人がなかなかできず、気持ちが塞ぎがちになって結局は地元に戻ることになった女の子がいるんですよ。そういう子を見ていると、私たちが彼女たちと同じ年代だった頃とは、また違った悩みを抱えているんだなと思ったんですよね。それを目の当たりにしたこともあって「救ってあげられたらよかったのに」みたいな気持ちになりました。

──「Half of Me」は、自分の「分身」のような親友についての曲ですよね。

AmamiyaMaako:そうです。実在する一人の友人についての曲というよりは、今まで仲が良かった友人たちのことを思い出しながら書きました。もちろん、せいらちゃんやHALLCAちゃんのことも入っていて。これまでずっと私は、いい友達に巡り合えてきたし、そういう人たちに恩返しをしたいという気持ちで作りました。サウンド面では、私が大好きなCaravanさんにインタビューさせてもらったときに、旅が好きなCaravanさんが旅先でiPhoneを使って録音した音を入れていると聞いて、私も宮古島で録った波の音を入れています。

──アルバムを作り終えて、今後はどんなことをやってみたいですか?

AmamiyaMaako:上半期は自分の作品作りに集中したので、下半期は楽曲提供やプロデュースなどやれたらいいなと思っています。私自身、すごく大切にしている言葉があるんです。学生時代、老後施設へ訪問した際に95歳の男性の方が勉強をしていて。「すごいですね」って言ったら、「人生で何かを始める上で『遅すぎる』ということはない。『Never too late』だよ」とおっしゃったのが「かっこいい!!」と思ってとても印象的でした。誰に何を言われようが、自分でやりたいことが見つかった時には、いつでもそれに夢中になれるような人になりたいですね。

※1:https://realsound.jp/2021/03/post-719986.html
※2:https://realsound.jp/2018/12/post-297179.html

AmamiyaMaako『Drops』

■リリース情報
AmamiyaMaako
『Drops』
7月6日(水)リリース

■ライブ情報
AmamiyaMaako ”Drops”リリースワンマンライブ
日時:7月18日(月・祝)Open 17:00 / Start 17:30
会場:代々木LODGE
ゲスト:仮谷せいら
チケット代:¥4,000(+Drink)
チケットURL:https://tiget.net/events/185527

■関連リンク
ホームページ:https://amamiyamaako.tokyo
Twitter:https://twitter.com/AmamiyaMaako

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