Chilli Beans.、三者三様の感性が溶け合う音楽制作のメカニズム “自由”で連帯する絶妙なトライアングル
みんなと一緒に、みんなで目立ちたい。(Lily)
ーーあと、どの曲でも3人で歌うのが面白いですよね。「School」もまさにそういう曲ですが、歌わないという選択肢もあるわけですよね。
Maika:コーラスは必ず入れますね。バンドとしては全員で歌わなくても成立すると思いますが、絶対に歌いたいんです。
ーーそれは単純に歌が好きだからっていうのもあると思いますが、チリビの曲として3人の声が重なったり、入れ替わり立ち替わり出てきたりするところに、面白さや自分たちらしさを感じていると思うんです。
Maika:全員がボーカルをとれるのは強みだと思ってます。3人とも歌うことが好きで、コーラスワークはもちろん、曲によってはリードボーカルを変えて、またちょっと違う面を見せることができる。あと、単純に歌うのがめっちゃ楽しいです。
ーーそうですよね。初期曲である「It's ME」も「This Way」も、サビの構造が一緒なんですよ。英語のフレーズと日本語のフレーズの掛け合いのようになっていて。
Maika:あ、確かに!
Lily:今気づいた。
ーーそれは意識的にやっていたわけではないんだ。
Moto:でも、この一言キメが来たら、その次は返しで、みたいなことを話していた記憶はあるよ。
Maika:ああ、コール・アンド・レスポンスみたいな。
ーーまさにコール・アンド・レスポンスというか。初期の曲のほうがその感じは強いけど、今もチリビは必ずやっている感じがするんです。それってどういうことかっていうと、要するにChilli Beans.は曲の中で3人で会話しているんですよね。
Maika:ああー!
Lily:もともと、それぞれがシンガーソングライターだったというのはあるよね。みんなの声が入っているほうが自然な感じがする。作るのも、みんなで作る方が自然。よく珍しいですねと言われるけど、それが私たちにとっての当たり前なのかもしれないです。
ーー「ボーカルはこの人です、あなたはいいベースを弾いてください」みたいに分けられたら嫌だと思うんですよね。
Maika:絶対嫌だ!
ーーですよね。だからこの3人でこうやって会話をしながら音楽を作るところに喜びを感じているというか、それしかないと思っている。
Lily:そうですね。1人だとここまでできないと思うんですよ。
Maika:私もできないと思う。
Lily:3人ともバンド全体で目立ちたいと思っているんですよ。それはきっと、自分だけだとたぶん無理だから。しっくりこないんです。みんなと一緒に、みんなで目立ちたい。
Moto:なんていうんだろう。プチデモ的な?
ーーデモ?
Maika:デモ行進のデモ。
Lily:ああ、確かにそういう気持ちはあるかも。
Moto:「自由にいこうぜ!」みたいな感じ。
Lily:仲間とゲームするみたいな、連帯していることの楽しさというか。
ーーその「1人じゃ無理だから」っていうのが本質な気がするんですよね。もともとシンガーソングライターを志向していたんだから、1人でやれるなら1人でやってるよっていう、そういう集まり。ちょっと言い方が悪いですけど。
Maika:いや、大正解です。
Lily:その通りだと思います。
Moto:それに、「私の言うとおりにしてよ」とか言わなくても、汲み取って話し合える3人なんです。
Lily:相手の言っていることをちゃんと聞こうっていう姿勢は学んだというか(笑)。気持ちが高ぶって「これはこっちの方がいいでしょ」っていう初期衝動みたいなものはそれぞれにあるけど、それが3人にとってどうなのかというとまた違う話になるから。それに対しての言葉は絶対聞こうって思っていますね。バンドは自分だけのものじゃないから、そっちのほうが確実に良いものができる。
Maika:3人とも、上に立つのも下につくのもそんなに好きじゃないと思うんです。そんな3人だから、自然と今みたいなフラットな関係性になったと思います。
ーー歌詞を見ても、道を切り開くぜとか、世界を変えてやるぜみたいなフレーズは1回も出てこない。「みんなはどうかわからないけど、私たちはここで楽しくやるよ」っていうのが基本的なスタンスじゃないですか。
Maika:本当にそうだと思います。3人とも、そういう歌詞を書けるようなタイプではないんですよ。それはネガティブな意味ではなくて、私たちのスタイルとしてはそうすることが一番楽しいんです。