日本ハム ファイターズガール、“可愛すぎる”「きつねダンス」ヒットの理由 チアのアイドル人気と『パ・リーグTV』の成果

 開幕から約2カ月が経過した2022年の日本プロ野球。ここまでの最大の話題は何と言っても、千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希選手の投球だろう。4月10日の対オリックス・バファローズ戦で完全試合を達成したばかりか、日本プロ野球記録となる13者連続奪三振、そしてタイ記録の1試合19奪三振をマーク。さらに翌登板の4月17日の対北海道日本ハムファイターズ戦でも8回まで完全試合投球。筆者は長年、かなり熱心にプロ野球をチェックしてきたが、こんなにすごい選手は観たことがない。

 佐々木選手のインパクトが強いが、中日ドラゴンズ・大野雄大選手は5月6日に延長10回ツーアウトまでパーフェクトピッチングの「完全未遂」、ソフトバンクホークス・東浜巨選手は5月11日にノーヒットノーランを達成するなど、本来であればその年で一番のトピックスになる記録が次々飛び出す異例のシーズンとなっている。

 ただ話題は選手だけではない。北海道日本ハムファイターズの主催試合に登場する公式チア、ファイターズガールが試合の合間などで踊る「きつねダンス」もブレイクした。SNSやYouTubeでその振付のマネをする人が続出し、「可愛い」「中毒性がある」との声も多数あがっている。

ブームの火付け役は『パ・リーグTV』

【完走そして伝説へ】きつねダンス『セ界に平和は訪れた…』

 「きつねダンス」はなぜブームとなったのか。火付け役となったのは、YouTubeで公式チャンネルなどを展開するインターネットテレビサービス『パ・リーグTV』だ。

 日本プロ野球にはセントラルリーグ(セ・リーグ)とパシフィックリーグ(パ・リーグ)の2つのリーグがある。かつては「人気のセ、実力のパ」と言われ、パ・リーグの各チームは実力があるにも関わらず、読売ジャイアンツや阪神タイガースといった花形球団をかかえるセ・リーグに人気面で押されていた。

 しかし現北海道日本ハムファイターズ監督・新庄剛志が現役だった2004年、メジャーから日本球界へ復帰する際「これからはパ・リーグです」と宣言して、ファイターズに入団。華やかなプレーで視線を集めた。またダルビッシュ有選手、田中将大選手、大谷翔平選手らその年のドラフトの目玉選手がパ・リーグ球団に続々と入団。同リーグへの注目度もあがっていった。

 そんななか、2007年にパ・リーグ6球団が出資してパシフィックリーグマーケティング株式会社を設立。2010年からは試合などのライブ配信サービスをおこない、現在の『パ・リーグTV』の形にたどりついた。『パ・リーグTV』は、たとえばYouTubeチャンネルやTikTokでも、各試合中の出来事をテンポ良く見せたり、普段の中継では映らないような選手の違った一面をとらえたりするなど、バラエティ豊かな内容を配信。野球ファンでなくても楽しめるコンテンツ作りをおこない「パ人気」を加速させた。

 ちなみにこの取り組みはパ・リーグ6球団の一致団結があってのこと。あくまでプロ野球はビジネススポーツであるため、各球団の放映権などクリアする課題が多く、こういった媒体はなかなか実現できない(そのためセントラルリーグ(セ・リーグ)にはこういったコンテンツはない)。

 きつねダンスの普及は、パ・リーグ全体でコンテンツを作り、それを成長させた一つの成果であると考えられる。

使用曲「The Fox」はなぜ印象に残るのか

Ylvis - The Fox (What Does The Fox Say?) [Official music video HD]

 きつねダンスは、球界のおもしろい出来事にセンサーを張り巡らせている『パ・リーグTV』が着目したこともあり、ファイターズ内にとどまらず認知が広がっていった。

 『パ・リーグTV』のYouTubeチャンネルやSNSの動画は、とにかく見飽きることがない。独特のカメラの着眼点があり、編集もテンポが良く、また音を出さなくても内容が伝わってくるのでスマホ鑑賞にも最適なのだ。きつねダンスのブームは『パ・リーグTV』のそういった見せ方の賜物である。

熱男も思わず…『踊りたくなるのも仕方ない』

 特に視点がお見事。きつねダンスの取り上げ方のポイントとなったのは、ファイターズガールのダンスの模様だけを映すのではなく、対戦チームのソフトバンクホークス・松田宣浩選手らまで試合中に振りコピする姿をオンエアしたところ。そうすることで「敵味方関係なく、誰もが楽しめて夢中になれる」「きつねダンスが球界全体で話題になっている」という印象を与えられた。

 大人から子どもまで真似ができる振付だけではなく、楽曲のなじみやすさもウケた理由の一つだ。

 使用曲は、ノルウェーの2人組・Ylvis(イルヴィス)が歌う「The Fox (What Does The Fox Say?) 」(2012年)。きつねの鳴き声を題材にし、YouTubeの再生回数は10億回以上。系譜的には、スキャットマン・ジョン「スキャットマン」(1995年)、Me & My「ドゥビ・ドゥビ」(1996年)、O-Zone「恋のマイアヒ」(2005年)といった歌詞の語感に遊び心があるスマッシュヒット曲に近い。また、LMFAO ft.LiL Jon「ショッツ」(2009年)など、誰もが一度は聴いたことがあるEDMの人気曲を連想させるサビの展開も功を奏しているのではないだろうか。振付と楽曲の親しみやすさがうまく噛み合ったように思える。

関連記事