ラストアイドル、最初で最後のアルバムがチャート首位 メンバーの語りと鮮やかなメロディで描かれる“これまでの物語”

 現代的なエンタメの多くにあてはまることではあるものの、アイドルはその活動の軌跡自体が一種のリアリティショー的な物語として受容される傾向がやはり強い。サバイバルオーディション番組から始まったグループとなるとなおさらだ。その意味では不測の事態に伴う活動終了もまたひとつのドラマであって、『ラストアルバム』は楽曲だけではなく、アイドル自身の声にそれを物語らせる。おそらく最善ではなかったかもしれないが、プロジェクトに対するひとつの決着の付け方ではあろう。

 というのはあくまで活動のラストを飾るにあたっての建付けの話。音楽的には、前述したようにシングル表題曲が連なっているだけあって、インパクトの強い楽曲が次々繰り出される。楽曲のテイストは多彩だが、およそ共通するのは、起伏に富んだ展開とアップテンポな曲調に、基本的に楽曲のストーリーを最優先としつつ、惹きの強い言葉をメロディのここぞというところにすっぽりはめこんでキャッチーさを確保する詞、といったところか(ラストアイドルに固有というよりも、秋元康の志向のような気もするが)。その観点からするとサビのほとんどを〈好きだ〉と〈ごめん〉のリフレインに費やす「好きで好きでしょうがない」は特異なようで象徴的な1曲かもしれない。

ラストアイドル「好きで好きでしょうがない」MV

 しかし、一番印象に残ったのは、そうした作法とやや距離のある2期生アンダー曲の「なんか、好きだよ」だった。BPMの速い曲が続いた先にふっとスローダウンするから余計にそう感じられるのかもしれないけれど、やけに良い。言ってしまえば王道のラブソングなのだが、アコースティックギターやストリングスがきらきらとして、歌メロもハモりもメロディアスな、いい意味でのJ-POP感が不思議と居心地良く響く。8分の6拍子の平歌がサビで4分の4拍子の16ビートにメトリックモジュレーションする展開も洒落ている。たまにふと思い出して聴いてしまいそうな一曲だ。

※1:https://www.oricon.co.jp/prof/193854/products/1437534/1/
※2:https://lastidol.com/news/1170

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