KANA-BOON、困難乗り越え“4人”で始める新しい物語 希望に満ちたホールワンマン東京公演
4月15日にLINE CUBE SHIBUYAでKANA-BOONのホールワンマンライブ『「Honey & Darling」-Tokyo Honey, Osaka Darling-』東京公演が開催された。本稿ではその模様をレポートしていく。
この日の公演、および、4月23日に開催を控えた大阪公演は、3月末に約4年半ぶりにリリースされたニューアルバム『Honey & Darling』を掲げて行われるものである。彼らがこの新作を完成させるに至るまでの間には、メンバーの脱退や、谷口鮪の休養、現在進行形で続くコロナ禍など、バンドにとって数々の大きな困難があった。しかし、『Honey & Darling』を聴いたリスナーなら、その音と言葉からすでに感じ取っている通り、この新作は結果として、そうした困難や逆境と向き合い、時に傷付きながら、それでもバンドとして走り続ける覚悟を示した作品となっている。実際に、アルバムの特設サイト上には、「KANA-BOONにとってのひとつの到達点であり、新たな幕開けでもある渾身の自信作が完成しました」という谷口鮪(Vo/Gt)のコメントが掲載されており、今作に懸けるメンバーたちの想いは非常に強い。そしてその必然として、同作の楽曲を軸とした今回のライブも、そうした想いが熱くダイレクトに伝わってくる約2時間となった。
アルバムのオープニングナンバーである「Re:Pray」では、ライブ序盤にもかかわらず、クライマックス級の祝祭感がホール全体を満たしていく。冒頭から感慨深い気持ちになり、この曲が数多くのファンが集まったワンマンライブの場で披露された光景は、とても感動的なものであったと思う。休養中、谷口は、深い絶望の底から這い出すために、自らにとっての希望となる音と言葉を紡いでいった。そして、そのようにして生まれた楽曲は、そのまま、「君」や「あなた」、つまり、KANA-BOONの音楽を受け取るリスナーに向けられた渾身のメッセージとなった。
〈いつまでも いつまでも君に/最後まで離れない覚悟で紡いだ/新しい希望 日々の合いの手〉
もちろん、この曲だけではない。自分たちを支えてくれる大切な人への想いを綴った「alone」が特に象徴的なように、今回のアルバムに収録され、そしてライブで披露された数々のナンバーは、まさに、KANA-BOONからファンへ向けた手紙のような楽曲である。渾身の自信作が完成した今だからこそ、こうして直接的に新曲を届けることができる機会は、メンバーたちにとって、とてもかけがえのないものだったはずだ。MCを含め、リスナーと直接コミュニケーションできる喜びを深く噛み締めるようなメンバーたちの表情が、とても印象的だった。
そして今回のライブには、遠藤昌巳(Ba)を迎えた新体制初ライブという大切な意義があった。彼は2020年から、ライブやレコーディングにおいてKANA-BOONの活動をサポートしてきたため、4人でステージに立って演奏すること自体は今回が初めてではない。しかし、『Honey & Darling』を完成させたこのタイミングで、「4人」で再出発することを宣言したことの意義はとても大きい。彼は、谷口、古賀隼斗(Gt)、小泉貴裕(Dr)にとって高校時代からの気心の知れた友人であり、音楽性だけではなく人間性を含めて深く理解し合える遠藤と共に歩み出せたことは、バンドにとってとても幸福なことなのだと思う。実際に、アイコンタクトを交わし合ったり、4人で向き合ったりしながら演奏する姿を見て、ここから始まる新しい物語は、きっと晴れやかなものになるだろうと確信した。遠藤のプレイは、非常にしなやかでありながらも、躍動するバンドサウンドをしっかりと支える骨太さも兼ね備えており、また、時に古賀のギタープレイに負けじと随所に挟み込む鮮やかなフレーズも印象的だ。新生KANA-BOONのさらなる進化への期待が高まる。