SOMETIME’S、ライブに対する気持ちの高まり 新曲「Somebody」、YAJICO GIRLとの2マンに向けた思いを語る
SOMETIME'Sが新曲「Somebody」を4月8日に配信リリースした。
「Somebody」は、向井理と北村有起哉が出演するテレビ東京ドラマ25『先生のおとりよせ』オープニングテーマに起用。また、今年は対バンライブシリーズ『SOMETIME’S Presents 2022 2man Live Series “League”』を軸に活動していくSOMETIME’Sが、4月、6月、8月にあるライブに合わせて1曲ずつリリースする新曲の第1弾。打ち込みと温かみのある生音のサウンドを融合させたフロア映えする1曲が完成した。4月は16日に渋谷WWWXにてYAJICO GIRLを迎えてライブを開催する彼ら。本インタビューでは新曲「Somebody」と対バンライブについてSOTAとTAKKIにじっくり話を聞いた。なお、YAJICO GIRLのメンバーにはライブに向けていくつかの質問に答えてもらった。(編集部)
「Somebody」は自ずとライブを意識した曲に
ーー「Somebody」は華やかなブラスやファンキーなギターが気持ちいい楽曲ですね。制作はどんなところから始まっていきましたか。
SOTA:今年はツーマンを軸に活動していこうという中で、4月、6月、8月にあるライブに合わせて、1曲ずつリリースしていきたいよねという話になりました。その第1弾の曲として書いたのが「Somebody」です。
TAKKI:今までの僕らの制作では、SOTAが出してくれたデモをチーム内のなるべく多くの人に聴いてもらって、みんなが盛り上がった曲をやるという工程だったんですけど。今回は自分達で曲を決め込んでから持ってきてほしいと言われたので、SOTAに聴かせてもらった3、4曲のデモの中から、今のSOMETIME'Sに良さそうな、これまでにありそうでなかった曲を選びました。
ーーありそうでなさそうというのは?
TAKKI:昨年リリースしたアルバム『CIRCLE & CIRCUS』もそうですけど、四つ打ちで速い曲が意外となかったんですよね。そこで今年はライブをいっぱいやりたいという話もしていたので、自ずとライブを意識した曲になりました。あと、これまで作った四つ打ちの曲って、どちらかと言うと打ち込みで作っているものが多いというか、エッジの効いたサウンドで攻めるような曲が多かったんです。そこで今回は、SOMETIME'Sの温かい方のサウンドで四つ打ちの曲を作ることで、これまで二極化していた部分を融合させた曲にしようと思いました。
ーー生音主体から打ち込み主体の音に変化する間奏部分は、良いスパイスになっていると思います。
TAKKI:そこはアレンジャーの藤田道哉のアイデアですね。完成形が見えていない段階で「好きなことやっていいよ」という感じでお願いしたので。
SOTA:僕らもこの部分はミックスチェックで初めて聴きました(笑)。
ーー曲の景色がガラッと変わりますよね。
TAKKI:管のサウンドをずっと引っ張っていると、全体的にありがちな楽曲の印象になってしまうので、どうやって個性を入れ込んでいくかを考えるんですけど。この曲ではシンセをブラッシュアップして融合させていくイメージがありました。楽曲のテーマとしても、打ち込みのシンセっぽいサウンドと、SOMETIME'Sの代表曲である「Morning」や「Slow Dance」のような、温かい生音のサウンドを融合させていくというのがあったので、サウンド面ではそういう展開を意識しました。
ーーSOTAさんはこの曲を歌う上で意識したことはありますか?
SOTA:僕はこの曲の可愛らしいニュアンスを大事にしたいと思いました。
ーーというのは?
SOTA:「Somebody」はキーの高い曲なんですけど、コーラスをさらにその上で2本積んでいます。歌うのはけっこうハードルが高いんですけど、この曲が持つ可愛らしさというか、元気の良さみたいなところをなるべく尊重して歌を録りました。それも僕らが持っている一面だし、たぶんTAKKIもそういうところを汲んでこの曲を選んだんだと思ったんですよね。
ーー冒頭のブラスも印象的です。
TAKKI:ブラスのメインメロはSOTAが考えてくれたものですね。デモの時から入っていたものを、ほとんどそのまま使っています。
SOTA:自分としては第一感で気持ちよさそうな音を入れていたら、それがそのまま生き残ったという感じなんですけど。デモの時からなんとなく、この曲はトランペットに頑張ってもらうことになるんだろうなというイメージはありましたね。実際、レコーディングでも僕のコーラスと同じく、ペットも人間の限界みたいなラインをかなり攻めていったものになりました。とまり(大泊久栄/Tp)がハイトーンのセクションに向かっていくところは、その波を超えられるか超えられないか、そこに何度もフィジカルでぶち当たっていくようなレコーディングでした。
ーーちなみに制作する上で、インスピレーションを受けた楽曲や、ここ最近よく聴いている音楽などはありますか?
TAKKI:僕はシャッフルで聴くことが多いんですけど、最近はJP Saxeさんのバラードが刺さりまくっています。他には佐藤千亜妃さんや、アイナ・ジ・エンドさんの曲も、声が好きで聴いていますね。
ーーなるほど。
TAKKI:勉強で音楽を聴くタイプなんですけど、アレンジャーの家に行ってふたりで3時間くらいお互いのリファレンスを出し合うんです。そこでベースの音を提案してもらったり、スネアの音ひとつでいろんなサウンドを模索していくんですけど、たとえば今回の「Somebody」に関しては、Brasstracksがリファレンスのひとつになりました。他にもシンセのサウンドでは、re:plusさんのような空間的な作り方を落としこもうとしたり、デモが上がってきた時にバーっといろんな音楽を聴きました。
ーーSOTAさんはどうですか?
SOTA:今年出たものでよく聴いているのはJP Cooper『She』です。元々去年出る作品だったと記憶していたんですが、それが今年の2月に出てきて。焦らされたのもあってめちゃくちゃ聴いています。
ーーなぜSOTAさんの琴線に触れるんだと思いますか?
SOTA:彼は抜群に歌が上手いです。日本に来た時にはふたりでLIQUIDROOMまで観に行ったんですけど、ライブもべらぼーに良くて、JP Cooperはずっと前から好きですね。あと、今回のアルバムには、ゴスペルアレンジを数曲、アコースティックアレンジを数曲パッケージしてあるんですけど、そのゴスペルアレンジが鳥肌ものなんです。
ーーゴスペルミュージックに惹かれているところもありますか?
SOTA:好きですね。昔ボイトレでお世話になっていた先生も、ゴスペル出身の人でした。ボイトレに行くと、言ってることがわからない先生もいっぱいいるんですけど、その先生の言葉は自分にもピッタリハマる感覚があって。ゴスペルからの影響は大分あると思います。
下の世代との間に感じたギャップから得た学び
ーー歌詞についても聞かせてください。TAKKIさんは「Somebody」の歌詞を、どんなところから書いていきましたか?
TAKKI:SOTAから送られてくるデモにはめちゃくちゃな英語だとか、言葉っぽいものが入っているので、毎回歌詞はデモのワードを拾って書いていくスタンスです。そこでなんとなく「ここは日本語で行きたいんだろうな」とか、「英語で行きたいんだろうな」っていうのが伝わってくるので、同じフレーズがリフレインしていたら、なるべくその韻は尊重するように作っています。
ーーなるほど。
TAKKI:今回はその中でも使えるフレーズが1個だけ決まっていて、それがサビの〈I wanna play the piano〉というところでした。なのでそこから景色を膨らませて書いていったんですけど、自分の中で書きたいことはありつつも、1回詰まっちゃったんですよね。
ーーどこで開けていったんですか?
TAKKI:僕が音楽活動と並行して働いている職場で若い子と接することが多くて。いわゆるZ世代の感覚というものに、ギャップを感じる毎日なんですよね(笑)。で、僕は歴がめっちゃ長いので、すぐ若い奴らに説教するんですけど。
SOTA:(笑)。
TAKKI:今の若い子も夢や目指したいものを持ってはいるけど、自分の目線で言えば、ちょっとエネルギー量のギャップを感じちゃう瞬間があるんですよね。やるかやらないかの二者択一みたいな話になっても、「別にそこだけじゃなくないですか?」みたいな感じで。「何かを犠牲にして夢を追うことだけが、叶える方法だけじゃないですよね?」という感じだったりするし……「これ好きかも」でめちゃくちゃフランクに辞めていくんですよ。
ーーなるほど(笑)。
TAKKI:ただ、そうやって仕事をどんどん変えていく姿には、すごく可能性があるなとも思うんです。苦しい世の中に打ち勝って何かを成し遂げるのではなく、何か転がっているものを自分で感じたり探したりしながら自分の理想に近づいていく。そういうストーリーを歌詞にできたらいいなと思い、出来上がった感じです。
ーーそれで〈I wanna be “Somebody”〉と書かれているんですね。
TAKKI:やりたいこととかなりたいものを指折り数えている感じって、楽しみな未来を数えている感覚みたいですよね。その瞬間がすごく幸せだと思うし、そういう部分を肯定するような歌詞の結びにしようと思いました。で、ちょうど歌録りの前にタイアップの話をいただいたので、それに伴ってちょっとだけドラマの内容に沿ったものにしようと思って。ドラマのテーマでもある食事の風景を若干落とし込めないかなと思い、一番のAメロを直して書き上げました。
ーー今回の歌詞について、ボーカルとして感じることはありましたか?
SOTA:常々僕のデモから母音を抽出してくれているんですけど、今回は韻の量が今までよりも全然多くて。最初に歌ってみた時からすごく気持ちよかったです。「Somebody」は、今話していたようなメッセージがTAKKIなりにあるんですけど、やっぱり第一感の気持ちよさがあるのがいいなと思います。ピアノとシカゴのところなんかはすごく気持ちがいいし、僕が出したなんとなくの譜割を、二段階ぐらい上の遊び心で体現してくれた感じがありますね。