『ワンビリ』から誕生のZILLION、Z世代9人が「やめとこっか」で歌うSNSとの向き合い方 制作を通じてさらに深まった絆
清水翔太が審査委員長を務めたオーディション『ONE in a Billion』から誕生したダンスボーカルグループ、ZILLION。2021年12月22日に「Timeless」でプレデビューを果たしてから約3カ月、9通りの個性をさらに強めた彼らは3月30日にプレ2ndシングル「やめとこっか」をリリースした。SNSと親和性の高いZ世代である彼らだからこそのメッセージや表現がたっぷり味わえる「やめとこっか」を通してアウトプットした、“ZILLIONらしさ”についてじっくり話を聞いた。(高橋梓)
「誹謗中傷はよくないよ」と歌で伝えられるのも私たちならでは(モカ)
――昨年末にリリースした「Timeless」は皆さんの同世代を中心に、反響を呼んでいました。ご自身たちも手応えを感じたのではないでしょうか。
リオン:「『Timeless』の振付を踊ってみました」と、SNSにアップしてくださっている方が結構いました。今までは自分たちがそれをやっていた立場だったので初めての経験でしたし、すごく嬉しかったです。
ワタル:カラオケにも配信されたので、「歌ったよ」とSNSを通じて教えてくれる方もいました。
ヒロキ:メンバーのアカウントやZILLIONのアカウントをメンションして投稿してくれるんですよね。なので反響がすごくわかりやすかったですし、ファンの方の温度感も感じやすかったです。
モカ:私は自分でTikTokを見ている時に、「Timeless」の広告が流れてきて。「アーティストになったんだ」って実感しました。
――SNSで手応えを感じることが多かったようですが、プレ2ndシングル「やめとこっか」もSNSについて歌った楽曲です。コンセプトを改めて教えてください。
リオン:SNSを通じて自分を発信したり、誰かに自分の存在を認めてもらいしたいけど、炎上や批判が怖くてなかなか一歩踏み出せないジレンマを歌った曲になっています。
――そのコンセプトを聞いた時、皆さんはどう感じましたか?
カシン:僕たちは「Z世代を代表したい」と言っているんですが、この曲はZ世代なら誰しもが経験したことがあるような内容で、共感できる部分がすごく多かったです。SNSの良いことも悪いこともしっかり表れていると思います。ファンの方も共感してもらえるんじゃないかな。〈このストーリー キラキラ いいね押します〉の部分などは、SNSがテーマの曲ならではですよね。ヒロキの投稿を見るとキラキラしているので、僕もこんな風に思っちゃいます(笑)。
ヒロキ:逆に、僕は中学3年生くらいからインフルエンサー的な活動をしていたので、発信する側のことしかわかっていませんでした。「やめとこっか」はユーザーの視点での表現がたくさんつまっているので、「こういう風に見られているんだ」という発見もありました。
――歌詞に出てくるワードも特徴的ですよね。
モカ:ケイジが作詞をしたラップパートに〈誹謗中傷はStop〉という歌詞があるんです。「誹謗中傷はよくないよ」と歌で伝えられるのも私たちならではかなと思います。
ヒロキ:曲の中で「誹謗中傷」って言葉をストレートにぶつける表現は、あまりないと思うんですよ。濁す表現にしてしまいがちというか。
カシン:歌の部分は「本音を言えない」という内容ですが、ラップ部分は僕らの本心をそのままぶつけています。それと僕のパートに〈ヘラヘラしてるわけやないけ〉という歌詞があるんですが、もともとケイジが作ってくれたのは〈ヘラヘラしてるわけじゃないぜ〉でした。僕は福岡出身なので方言でラップをしてみたいと思って提案したら、ケイジが作ってくれました。
――ケイジさんはラップのリリックにどんな思いを込めたんでしょうか。
ケイジ:こういう時代だからこそ直接的でない、間接的な対話が多いなと日々感じています。そうすると、直接的な対話であれば感じないはずの裏表というか、「本当はこう思っているんだけど言えない」みたいなものがどうしても出てきてしまうと思うんです。はじめは僕もストレート過ぎる歌詞で大丈夫かなと思うところがあったのですが、制作チームの方に相談して、このラップパートではズバッと表に出して言えるフレーズを使おうと思って作りました。例えば〈R U readey?〉から〈逆につまらないね〉までの部分は、その前の〈誹謗中傷はStop〉にかかっているんですよ。やりたい放題やるのも良い面と悪い面があるので、一回ストップして考えてみて、という。
――なるほど。しかもラップパートはスタッフから声掛けをされたわけではなく、ケイジさんが自主的にリリックとフロウを作られたそうですね。それはなぜだったのでしょうか。
ケイジ:結論から言うと、単純にやりたいなって思ったからなんですけど(笑)。新曲のデモをみんなで聴いて感想を言い合ったり、話し合いをしたりしている時に、ラップの部分はまだ制作中というのをちらっと耳にしたんです。僕はインドア派で部屋にこもって作業をしていることが多いので、自分の時間を使ってラップパートを作ることはできそうだなと思って作ってみました。そうしたら嬉しいことに「いいじゃん」と言っていただけて。今回は僕が作詞に参加するというチャンスをつかみましたが、ZILLIONにはみんなにそういったチャンスがあると思うので、他のメンバーも今後何か制作するかもしれません。
リオン:今回ケイジくんがやってくれたので、他のメンバーも負けていられないって良い意味で刺激を受けました。切磋琢磨しつつ挑戦してみようと思っています!
――歌の部分も独特のメロディですよね。歌ってみていかがでしたか?
ルナ:今までこういう曲調を歌う機会がありませんでした。アップテンポだし、スカのリズムが難しくて。サビ前はゆったりしているけどちゃんとリズムが刻んであったり、サビもどんどん早くなっていったり、苦戦した部分もあります。でも挑戦してみて楽しく歌えました。
ケイジ:音楽的に言うと、BPM165くらいでひたすら速いんです。だから歌割りが変わるのも早くて、そこを合わせるのも大変でした。
ワタル:2人で歌う部分も息を合わせて入ったりね。結構苦戦しました。
タイラ:私は頭の歌い出しを担当させていただいていて、歌い方も試行錯誤しながらどう歌ったら皆さんが気になって最後まで聴いてくれるか考えながら歌いました。例えば、〈気ままに過ごしたい〉の部分。普段「気ままに過ごしたい」と口に出すことがないので、どう表現しようかなって。心の奥の感情を出すことに苦戦しましたが、上手く表現できたと思います。
カシン:カオラの〈やめとこっか〉も苦戦してなかった?
カオラ:レコーディングで〈やめとこっか〉をちょっとあざとい感じで歌うようにディレクションを受けたんですが、今までの自分にない表現だったので、苦戦して何パターンも録りました。他にもちょっと呆れた感じとか、かわいい感じとか、別バージョンもたくさんやりました。
タイラ:小声バージョンもあったよね。
カシン:歌番組に出られたら、いろんなバージョンが見せられたらいいね。
カオラ:最終的に採用されたのはかわいいバージョンだったので、聴きどころです!
曲ごとにメインになるメンバーが変わるのも僕らの強み(カシン)
――楽曲自体もダンスボーカルグループにしては珍しいテイストなので、表現で苦戦した部分もあるのでは?
カシン:新しいものを作っていくって難しいことなんだなと、制作期間中に感じました。でも、メンバーでその都度話し合って制作できたので、ZILLIONらしく絆で乗り切ることができたのかなと思います。
リオン:こういう曲をダンスボーカルグループがやるということ自体があまりないので、自分たちでどんどん意見を出して行きました。MVだと、めっちゃ動いているのに顔は真顔、とか(笑)。表情もこだわりがあって、細かく変わっていくのでそこも注目してほしいです。
ヒロキ:ちょっと変態的なかっこよさがある仕上がりになっていると思います。ただのかっこいい、かわいいではなく、「かっこ悪い部分もあるけどなんかかっこよくない?」っていう。そこを極められているのはZILLIONらしいかもしれません。
――話し合いではどんな意見が出たのでしょうか。
ルナ:9人いるので、9個全く違う意見が出るんですよ。
リオン:笑うにしてもニヤッと笑うのか、満面の笑みなのか、とか。
ワタル:ここは笑わない方がいいよ、という意見もあったり。
ヒロキ:それぞれ思い描いている主人公がいて、9通りのストーリーがあるんですよね。
カシン:9人の案があるから、いろんなことに挑戦できた気はする。
――バラバラの意見はどうやってまとめているのですか?
ケイジ:ひたすら話し合いますね。
モカ:自分だけの意見をぶつけるんじゃなくて、相手の意見も聴きつつ、お互い譲り合いつつ。
カオラ:練習中、ダンスや歌についての意見がぶつかることはあるんですけど、練習が終わってスタジオを出た瞬間みんな切り替わっていつも通りになっていて。意見がぶつかることで喧嘩をしたことはないですね。
カシン:それにメンバーみんな優しいんですよ。僕は思ったことをしっかり言えないと嫌なタイプなんですけど、そんな僕でもみんなが包み込んでくれます。僕が9人いたら終わってましたね(笑)。
全員:それは本当に終わってた(笑)!
タイラ:でも、こうやって話し合いながら新しいことに自分たちから足を踏み入れていくのは、ZILLIONにしかできないことなのかなって思います。
モカ:「Timeless」以上に、9人のキャラクターが全面に出せた楽曲だと思います。
カシン:曲ごとにメインになるメンバーが変わるのも僕らの強み。毎回新しいZILLIONをお見せできるのは僕らならではですね。