崎山蒼志、鮮やかに鳴り響くバンドサウンドで魅了 石崎ひゅーいも登場した『Face To Time Case』ツアー東京公演

 再びギターを持った崎山が「昔やってた曲を」と演奏したのは「平行する夜を」。〈平行する夜を、泳いでいたんだ僕も。〉。この前に披露された「waterfall in me」然り、崎山の詞には度々水が登場する。水のように自由にうねり、美しい揺らぎや深海の暗く怪しい雰囲気も描くことができる崎山のボーカルとギターさばきと非常にマッチしていた。

 再びバンドメンバーを迎えると、リバービーな音色のギターから「find fuse in youth」を披露。続く「嘘じゃない」ではアウトロでギターソロをかき鳴らす。ドラムとベースの濃厚な絡みから始まる「通り雨、うつつのナラカ」でも崎山はパワフルなギターソロを展開。バンドとの演奏で漲る感情をソロに昇華させているような力強さだった。「花火」でバンドメンバーもコーラスで参加し明るくパフォーマンスすると、「Helix」では息の合ったバンドサウンドがサビ直前のブレイクを経て炸裂した。

 アルバムタイトルの一部でもあり、本作の最後を飾る楽曲でもある「タイムケース」について、「場所が、その場所に流れている時間を保管しているということで、場所が時間のケースになるという意味」と説明すると、「O-EASTにはO-EASTのタイムケースがあると思うので、今日は対面して届けようと思います」と告げて同曲へ。テンポを自在に変えながら、ときに呟くように、ときに語りかけるように歌う。終盤、かき鳴らして低く響くギターの音色に崎山のファルセットが美しく融合した。

 アンコールに応えた崎山はスペシャルゲストとして石崎ひゅーいを迎える。コラボ曲「告白」の〈ありがとう さよなら こんにちは また明日 会えるかな〉という崎山の歌いだしが優しくもはっきりとした意思を感じさせ、続く石崎の〈おめでとう うれしいよ〉は包み込むような柔らかさと微笑みを感じさせる。1サビは崎山が主旋律、石崎がコーラスで2サビではその逆となっており、互いのよさを引き立て合っているようであった。特に崎山がコーラスをつとめた2サビでは、石崎の柔らかい歌声の輪郭を縁取るようなコーラスを聴かせた。さらに2人は石崎の楽曲「ひまわり畑の夜」も披露。2人の穏やかなハーモニーを響かせた。

 バンドメンバーを呼び込んだ崎山は「潜水」でライブを締めくくる。手数を増やしラストスパートをかけるドラムと縦横無尽に動き回るシンセとベース、崎山のギターがヒートアップし、音色の渦が鳴り響く。

 様々な珠玉のプレイヤーたちとのコラボレーションによって、そしてそれを経て再び自身と向き合うことによって、崎山の個性と演奏力がさらに強力になったと感じるステージとなった。

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