ライブ後半戦は全員が白の衣装を身にまとい、寺田の「これから歌う楽曲たちに今の思いを乗せて、大切な人たちにまっすぐ伝えます」というメッセージとともに「自由の彼方」から開始。山崎センター曲「錆びたコンパス」や寺田センター曲「ブランコ」といった楽曲に加え、「三角の空き地」では伊藤、「別れ際、もっと好きになる」では佐藤楓、「嫉妬の権利」では中村が卒業生した先輩メンバーに代わりセンターに立ち、堂々とした歌とパフォーマンスを披露。その楽曲本来の魅力を大切にしつつも、それぞれの個性もしっかりアピールするという、今ならではの表現で観客を楽しませた。そして最後は、寺田が「歌っていると『青春だったな』と思える曲」という「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」で、ライブ本編を切なくも情熱的に締めくくった。

　アンコールではまず、華やかなドレスを来た寺田ひとりがステージに登場し、「無事、3日間ご終わりそうで、今すごくホッとしています。ここにきても本当に悔いが何ひとつなくて、清々しい気持ちでいっぱいです」と挨拶。「今日は何よりも感謝を伝える日にしたいなと、始まる前から思っていて」と話す寺田はスタッフ、メンバー、家族、そしてファンへの感謝の気持ちを口にしていく。そして、「蘭世を推してよかったと、何年後も思っていてくれたらいいな。今まで本当にありがとうございました。卒業はもうちょっと先なんですけど、これからもよろしくお願いいたします」と挨拶を終えた。

　思いの丈をしっかり伝え終えると、ライブTシャツに着替えたメンバーとともに、「ここから歌う楽曲は私が選曲しました」と言って「左胸の勇気」からパフォーマンスを再開。寺田はメンバーとアイコンタクトを取りながら笑顔で歌い、一方のメンバーたちも寺田を優しく囲み込む。間奏では、和田が「ここにはたくさんの仲間がいるので、これからも頑張ってください！」と伝える一幕もあった。続いて、自身が初めてセンターに立ちたいと思った1曲「気づいたら片想い」を披露。過去のライブでも一度もセンターに立てなかったが、その目標を乃木坂46として最後のステージで実現させることができた。さらに、「何もできずにそばにいる」では涙を流すメンバーたちにエールを送り、「心の薬」では1人ひとりとハグやハイタッチを交わしていく。

　「私自身はすごく清々しいんだけど、1人ひとりに挨拶させてもらったときに泣いてくれたりとか目に訴えてくるものがあると、ちょっと寂しいし不思議な気持ちではあるけど、でも乃木坂46の寺田蘭世じゃなくなるだけで、寺田蘭世としては全然会えないわけじゃないし」と彼女らしい言葉に続き、いよいよライブ最後の曲に。「乃木坂46の寺田蘭世」として歌う最後の1曲に選ばれたのは、彼女を含む2期生たちが研修生から正規メンバーに昇格した際に送られた「ボーダー」。「オリジナルメンバーも少なくなってしまって、歌いづらい曲になってしまうんじゃないかなと心配していて。でも、歌いづらいとかじゃなくて、歌い継いでほしい。今も大事だけど過去も大切にしてほしいなという思いで選ばせていただきました」と語る寺田は、乃木坂46での8年半の経験のすべてをこの曲に注ぎ込み、送り出すメンバーの涙とは裏腹に笑顔のまま、『乃木坂46 28thSG アンダーライブ』最終公演に幕を下ろした。

　ここでライブは終了と思いきや、メンバー1人ひとりから寺田に手紙と花束が贈られるサプライズを用意。代表して同期の山崎が手紙を読み上げると、寺田は「私のことをよくわかってる」と笑みを浮かべて喜びを口にした。そして最後、ステージにひとり残った彼女は「こんな私を愛してくれて、見つけてくれて、出会ってくれて、本当にありがとうございました」とメッセージを残し、ステージをあとにした。

　乃木坂46の2期生として加入して以降、筆者は何度も寺田に取材してきたが、常に強い思いを抱え走り続けた彼女の、この先がより輝かしいものになることを願っている。負けず嫌いな彼女のこと、ここからどんな場所でも力強く生きていけるはず。乃木坂46を離れた彼女がどんなジャンルで、どんな活躍を見せてくれるのか、吉報を楽しみに待ちたい。

　話題をアンダーライブに戻そう。派手な照明演出こそ今の乃木坂46ならではだが、LEDスクリーンを排除してメンバーの歌とダンスに集中させるライブの作り方は、アンダーライブ本来の形に立ち返ったものと言える。次世代へとバトンをつなぐためにも、ここでもう一度初心を思い出そうとした今回のアンダーライブは11年目に突入した乃木坂46にとって非常に大きな意味をもたらしたのではないだろうか。特に、4期生はアンダーライブ初参加という試練の場をひたむきさで乗り切ったのだから、彼女たちにとっても、そして5期生加入を控えた乃木坂46にとっても、未来は非常に明るいものになるはずだ。

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