Panorama Panama Town、ライブでつなげたバンドの軌跡と現在地 メンバーソロ企画も披露したボリューム満点な一夜に

 岩渕のテレマスターのカッティングが冴える「マジカルケミカル」、バースのトーキングボーカルがより明瞭になった「HEAT ADDICTION~灼熱中毒~」。隙間が多くとも、タノがしっかりボトムを支えることで、グルーヴで聴かせるライブアレンジも冴え渡っている。続いて、雪崩れ込むように「クラリス」へ。四つ打ちダンスロックでありながらもポストパンクのDNAを感じさせ、2000年代の『SUMMER SONIC』のSONIC STAGEが脳裏に浮かんだ。メンバー曰く、「HEAT ADDICTION~灼熱中毒~」のベスト10入りは意外だったそうだが、順位通りに組んだセットリストは偶然にしても、流れがすごく良いとも話していた。

 そして、岩渕が「上京する時に作った曲」と一言述べ、「リバティーリバティー」へ。レゲエ/ダブビートにテンポダウンしてから、再びダッシュするという構成に湧きまくるフロア。順位通りに演奏することで、これまでならメッセージに重きを置きがちだった「世界最後になる歌は」では、シュアな浪越のカッティングやループするリズムが強調され、機能的なファンクの側面が際立っていたのも面白い。続けて、ベスト10にはなかったが、「曲と曲のつなぎに最高だから」という理由で、急遽「パノラマパナマタウンのテーマ」が挟まれ、感情と情景が矢継ぎ早に連射される「ロールプレイング」へ。

 残すは2位と1位だが、2位の曲について岩渕は「作った当初はそれほど好きではなかったのに、いつの間にかライブに欠かせない曲になった」と言って、「MOMO」を演奏。オーセンティックなコード&リフの8ビート上でラップするスタイルで、オリジナリティを確立した2016年のEP『PROPOSE』は今もこのバンドの武器であり続ける。

 そして第1位は、メジャー1stミニアルバム『PANORAMADDICTION』から「フカンショウ」。彼らの中では分かりやすくキャッチーなサビを持ち、悩みや逡巡の中でも、ヤケクソではない自己肯定感を得られる楽曲だ。こうしてリクエストベスト10を並べてみると、インディーズ時代からメジャーデビュー直後あたりまでの楽曲が多いが、それだけパノパナが提示していた“バンドで昇華するヒップホップ”と“リフ主体のアレンジ”の食い合わせが、今も個性として強いということだろう。

 アンコールを受け、ラストには配信されたばかりの新曲「Strange Days」を演奏した。紆余曲折を経ながら続くバンドストーリーが、たった今、バンドを始めたばかりのような瑞々しさを携えて鳴っていた。ジャンルの交配よりも、ストレートなメロディやリフ、楽器の音の必然性に軸足を置いている今のPanorama Panama Townを象徴する曲だが、この日のセットリストの流れにあっても違和感を感じなかった。それはリクエストライブの演奏がアップデートされていた何よりの証左だろう。岩渕は相当数の新曲を書いており、年内に何らかのリリースを予定していると発言した。2021年後半、“Panorama Panama Townの今”を体現する作品を心待ちにしたい。

Panorama Panama Town オフィシャルサイト

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