ソロアイドル 寺嶋由芙が明かす、“好き”を仕事に繋げる方法 多岐にわたる活動の軸も
6月30日に3rdアルバム『サバイバル・レディ』をリリースした寺嶋由芙。ソロアイドルとしての活動はもちろん、昨今は“ゆるキャラ”や“クイズ”、“サンリオ”と、自身の趣味を生かした活動も盛んだ。『マツコの知らない世界』などを通じて彼女の存在を知った人も少なくないだろう。
そこで今回、改めて“寺嶋由芙とは何者なのか?”を紐解くインタビューを行った。ゆるキャラやクイズ、サンリオへの思い、多岐にわたる活動の軸、そして「死ぬまでやりたい」というアイドル活動への思いなどをじっくりと聞いた。(編集部)【記事最後にプレゼント情報あり】
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“ゆるキャラ”を通じて好きなことが仕事になると分かった
――アイドル界の中でも多岐にわたって活動されている方なので、今回は「寺嶋由芙とは何者なのか?」をテーマに話を聞こうと思います。
寺嶋由芙(以下、寺嶋):ふふ、ありがとうございます。
――まず「何者ですか?」と聞かれて、どう答えますか?
寺嶋:アイドルです、と言いたいですけどね(笑)。あとは……ゆるキャラが好きだったり、クイズもやらせてもらったり、教員免許を持っているとか。アイドルと並行しながらいろいろなことをやっている、という感じです。
――元々は、ゆるキャラ好きとかクイズキャラでもなくて、「清純&古風なアイドル」というイメージでしたよね?
寺嶋:というか、最初は何もわからなかったです。「古き良き時代から来ました。まじめなアイドル、まじめにアイドル。」というキャッチフレーズは、黒髪だし、地味だし、服装もオシャレじゃないし、流行りにも疎いし、みたいなところをうまく言い換えられないかなと思って言ったんです。それと単に地味なわけじゃなくて、地道にやっているということで「まじめなアイドル」と言ってみたり。私がデビューした2010年はすごく個性的なアイドルが多かった。だから「逆に、何もないことをうまく言い返してやろう」という考えで名乗り始めたキャッチフレーズですね。
――当時は48グループやももいろクローバーZが台頭していた「アイドル戦国時代」でしたからね。そこに対するカウンターだった、と。
寺嶋:そうです。そうしたら他の子にはない「地味さ」とか「飛び道具のなさ」を逆に面白がってくれる人が増えていって。
――そんな中で武器になったのは、ゆるキャラ好きですよね。
寺嶋:元々、自分の武器にするつもりはなかったんですよ。趣味でゆるキャライベントに行ったりとかグッズを集めたりしていたら、端からは真面目にやっているように見えたみたいなんですよね。「あの子、真面目にヲタ活をしている」と言って面白がってもらえた。ちゃんと、ゆるキャラ好きを押していこうと思ったのが『ミスiD 2014』。自分が何もない状態で受けざるを得なかったオーディションでした。前にやっていたグループの活動に頼らず、今の寺嶋由芙を知ってもらうために受けようと。で、審査員にアピールする上で、私にあって他の人にないものは何なんだろうと考えた時に、ゆるキャラ好きだと気づいて。みんなが水着とか可愛い格好をしている中、私はゆるキャラの被り物で講談社へ行き、とにかく非常に浮いていました(笑)。
――どのように、ゆるキャラ好きを浸透させたんですか。
寺嶋:キャラさんたちの口コミで広まっていきました。あとは、ゆふぃすと(※寺嶋ファンの呼称)の皆が地元のゆるキャラに「寺嶋由芙ちゃんという子がゆるキャラ好きだから、仲良くしてやってくれ」とSNSで声をかけたり直談判してくれたり(笑)。ゆるキャラ好きが浸透したのは、SNSの口コミとヲタクのみんなのおかげです。面白いのが、イベントに新潟県のレルヒさんというゆるキャラを観に行ったら「アテンドが今日来てないから、もしできるならやって」と急にステージに上げてくれたりとか、そういうことが続いて。「MCができる子がいるらしい」「しかも、ゆるキャラに詳しいらしい」みたいな感じで、いろいろと呼んでもらえるようになったんです。それから『ゆるキャラグランプリ』の司会までやらせてもらえるようになった時に、「仕事になったんだな」と実感しましたね。
――2015年には、みうらさんと安斎さんの番組(『みうらじゅん&安齋肇のゆるキャラに負けない!』)のMCに抜擢されて。いわば、ゆるキャラの名付け親に公認されたわけですよね。
寺嶋:すごいですよね! ちょうど前任のMCだった方が辞められるタイミングだったらしく、「次のMCはゆるキャラ好きな子がいいんじゃないか?」ということで、声をかけてもらいました。実は、番組が決まる前にイオンが幕張メッセで開催していたイベントがあって。そこに、みうらさんと安斎さんがいらしてトークをする機会があったんですよ。
――まさか、そこに寺嶋さんがいた?
寺嶋:はい(笑)。私は、お客さんとして観に行って。なぜなら、うなりくんが来るから(笑)。
――うなりくん?
寺嶋:私が推している、ゆるキャラです(笑)。それで、私はうなりくんのコスプレをして行ったんですよ。みうらさん達に見せようとかじゃなくて、うなりくんに見せたくて。うなりくんの格好をしてトークショーを聞いていたら、お二人が気づかれていたみたいで。番組でご一緒した時に「あの時の子、君だったんだね!」って。
――覚えていたんですね。
寺嶋:……覚えられちゃうぐらい、やばいヲタクとしてゆるキャラの現場に通っていた結果が今です(笑)。
――好きなことを極める姿勢は、みうらじゅんイズムを感じますよ。
寺嶋:恐れ多いです! みうらさんの著書『「ない仕事」の作り方』を読んで感激して、私も好きなことをどうやったら仕事にできるかなと思ってやってきたアイドル活動なので。一方的に目指しているだけですよ。
――『「ない仕事」の作り方』では、みうらさんが誰も注目していないものを見つけ出し、それを出版社に売り込んだり地道に宣伝活動をしていた話が紹介されてますね。
寺嶋:企画を出す、ネタを考える、宣伝も全て1人でやることを「一人電通」とおっしゃっていましたよね。分かるというとおこがましいですけど、何でも広めていくのが大事なのは実感としてあります。ゆるキャラも最初は趣味で「好きだ」と公言していたら、みんなが広めてくれた。おかげで好きなことが仕事になると分かったんですよね。
サンリオが目指しているものと、アイドルが目指すべきものは近い
――サンリオはどうですか? 何か形になりました?
寺嶋:サンリオも、好きだと言っていたら『マツコの知らない世界』に呼んでいただいて。番組に出演したことがきっかけで、サンリオとコラボしているアパレル企業さん(「d fashion®」)でモデルをさせてもらったりとか、新しい広がりがあったのは新鮮でした。ゆるキャラは地元のためにのほほんと活動するスタンスなので、キャラクター運営が本業じゃない人たちがやってる面白みがある。だけど、サンリオはプロなので。そっちはそっちでアイドルと親和性があって。サンリオが作っているエンタメを私も目指したいんですよね。
――サンリオのエンタメがアイドルにも活かせるんですか?
寺嶋:活かせると思います。サンリオは「世界平和」や「世界中がみんななかよく」というスローガンのもとにエンタメを発信している。仲良くというのは友達とか家族とか身近な関係だけじゃなくて、民族同士や世界中の国々が仲良くするところまで考えているわけですよ! しかも「戦争をやめましょう」という言い方じゃなくて「世界中がみんななかよく」と、子供でも理解できるワードに落とし込んでいるのが素晴らしい。アイドルだって、子供にも分かる存在であることが大事なんです。小さい子にとっては「可愛いな」とか「ああなりたいな」だけど、大人が見たら「実は泣ける」とか「自分も頑張れる」っていう。その二面性を持っているのがアイドル。だからサンリオが目指しているものと、アイドルが目指すべきものは近いと思ってます。
――本質の部分をいかに分かりやすく大衆へ届けるかが、エンタメの醍醐味ですよね。確かに、二面性は共通点かもしれない。
寺嶋:例えば、ハロプロ(ハロー!プロジェクト)を題材にした映画『あの頃。』を観たんですけど、そこに描かれているのは、私が小学校高学年か中学生になるくらいの頃に見ていたモーニング娘。なんですよ。当時、モーニング娘。を「憧れのお姉さん」と思って見ていたから、その視点のハロプロしか知らなかったけど、『あの頃。』で描かれているハロヲタの皆さんは大人じゃないですか。全然立場の違う人があれだけ熱狂していたのを映画で知って、改めてすごい存在なんだなって。だから、私も大人から子供まで熱中させられたらと思ってます。
クイズは勝っても負けても勉強になるから最高!
――寺嶋さんはエンタメの素晴らしさを伝える一方で、アイドルが労働問題で悩んでいる状況についても言及してますね。
寺嶋:5年前だったら「パワハラ、セクハラで悩んでいます」と声を上げるとゴシップ的な取り上げ方をされちゃうことが多かった。被害者なのに炎上してしまうみたいなこともあって。だからこそ、すごく声を上げづらかったと思うんですよ。
――そっちにも責任ありますよね? って。
寺嶋:そうです。痴漢された側が「そんな服を着ているから悪いんだ」と言われるような話で。それが嫌だったから、黙っている子も多かったと思うんです。でも、最近は「こういう問題があります」と言ったらゴシップ的な取り上げ方じゃなくて、ちゃんとABEMAの番組(『ABEMA Prime』)みたいに専門家を呼んで「解決に向けて動きましょう」と発信をしてくれる場所が増えた。それで言いやすくなったというのはあります。
――寺嶋さんが持続化給付金を説明した、YouTubeの動画も話題になりましたね。
寺嶋:でもあの動画をあげた後、「どうせアイドルは確定申告してないから給付金も申請できないだろう」という声を耳にして。確かに、まずは普段のことから伝えなきゃいけないと思っています。アイドルが社会の一員であることを、もっとアイドル側も自覚しなきゃいけない。そもそもコロナ禍になってアイドルの解散が増えたじゃないですか。「しょうがないや」と思って諦めるんじゃなくて、活動を続けていくための選択肢として、社会の一員だからこそ、国から助けてもらえる術があるのを知って欲しかったんです。動画を出すことで「アイドルも仕事なんだ」とアイドル本人、そうじゃない人にも気づいてもらえたら良いなと思いました。
――それでいうと、寺嶋さんが編集長を務めている『Pop'n'Roll』(※アイドルのパーソナリティや隠れた才能にフォーカスするアイドルメディア)もアイドルの認識を深める活動に繋がっていますね。
寺嶋:例えばグループの中にメンバーが5人いたら、「可愛らしい子が好きだからピンクの子を応援しよう」とか「ダンスが上手なブルーの子を推そう」と選択できる。パッケージで出されて「好きなのをどうぞ」と選択肢を与えられると、どれか1つを選びたくなるじゃないですか。だからこそグループアイドルが流行っているけど、ソロは選ばれようがないんですよ。
――選択肢がないですからね。
寺嶋:ソロは「好きか嫌いか」しかないんですよね。ということを考えた時に、アイドル業界が盛り上がってくれていて、Aグループがいる、Bグループがいる、Cグループがいる、そして寺嶋がいる、みたいな大きな意味での選択肢の中で、私を選んでもらうという選ばれ方しかないから、みんながいてくれないと困るんです(笑)。だからこそ、みんながアイドルを続けられるお役に立てたらと思って編集長を引き受けました。
――具体的に何をしているんですか。
寺嶋:一緒にアイドル界をサバイブしてきた仲間と対談をさせてもらってます。二丁目の魁カミングアウトのミキティー本物さんとか、元ドロシー(Dorothy Little Happy)の(高橋)麻里ちゃんとか。あと、アイルネ(アイドルルネッサンス)が解散した後も新しい道で頑張っている原田珠々華ちゃんも。そういうサバイブしてきた皆さんにお話を聞く企画が1つ。もう1つは『TIF』の運営さんだったり、アイドルゲームを作っている会社のGMOさんだったり、アイドルを仕事相手にしている方たちに話を聞く企画もやってます。
――あとはクイズ番組でも活躍されてますよね。きっかけは何ですか?
寺嶋:2017年に『TIF』でクイズ大会が行われると聞いて、試しに受けたら優勝しちゃったんですよ(笑)。そこから調子に乗って「クイズアイドルとして頑張りたいです」と言っているうちに、去年の夏に『ザ・タイムショック』(テレビ朝日系)の本編に出る特訓生に選んでいただきまして。
――相当勉強されたみたいですね。
寺嶋:すごかったですよ! 一冊1000問あるテキストを渡されて「来週までに覚えてきてね」ということを毎週やっていたので。その時、私の他に候補生が3人いて、全員が満点に近い点を取るのが衝撃だったし超楽しくて。勝敗に関係なく楽しいのがクイズだし、勝っても負けても勉強になるから、無駄がなくて最高だなと思いました(笑)。