乃木坂46 大園桃子、“涙”とともにあったアイドル活動に幕 白石麻衣のポジション担う人気メンバーとしての歩み

 ずっと見つけられずにいる目標、未来への不安ーー多くのインタビューでありのままの気持ちを吐露していた大園が、少しずつ前を向き始めたのは体調不良による一時休養明けの2019年後半から2020年にかけて。その象徴とも言えるのが、2020年6月に放送された『乃木坂46時間TV』内で大園が歌唱した「変わらないもの」である。歌に自信がなかった大園がカバーした奥華子の「変わらないもの」は、緊張から声が震える箇所はあるものの、そのまっすぐな歌声がメンバーを始め、多くの視聴者の心を掴んだ。何よりもその「変わらないもの」というタイトルが、純粋な大園のままでいいのだということを示してもいる。

 同年10月には「白桃姉妹」として加入当時から公私ともに仲の良かった白石麻衣が卒業。ドキュメンタリー映画『いつのまにか、ここにいる』でいつか来る大好きな先輩の卒業に「耐えられない」「会えないことに強くなる必要ありますか? 好きなんだもん仕方ないよ」と答えていた大園だったが、いざ卒業を前にし「白石さんと一緒に活動できる期間ずっと幸せでいること、そして笑顔で送り出すことが自分の役割だと思っています」と心境の変化を語っている(『日経エンタテインメント! 乃木坂46 Special 2020』より)。白石の卒業シングル曲「しあわせの保護色」では白石の真後ろのポジションを、彼女が卒業した後の『9th YEAR BIRTHDAY LIVE』ではセンターポジションを担った。

遠藤さくら・大園桃子『友情ピアス』

 今年2月に発表された遠藤さくらとのユニット曲「友情ピアス」は、「変わらないもの」の透明感溢れる歌声を生かした楽曲であると同時に、大園がお姉さんであり先輩として先導している姿から彼女の成長を実感できる楽曲であった。

 そして、5月に開催された『乃木坂46 9th YEAR BIRTHDAY LIVE ~3期生ライブ~』。ライブの幕を開けたのは大園センターの「三番目の風」。そこには緊張の色を隠せなかった4年前の彼女はいなかった。岩本蓮加、向井葉月のアコースティックギター伴奏に乗せて歌った「僕だけの光」は、3期生12人の絆が涙となって流れ出た温かなパフォーマンスに。大園が乃木坂46として活動する最後の日は、3期生12人で5周年を迎える9月4日となる。

 大園は人一倍涙を流してきたメンバーに間違いはない。けれど、その分だけ人の優しさに、愛情に触れ、一歩ずつ強くなっていった。もう、大園は悔し涙は流さない。今、大園が流すのは幸せの涙だけだ。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

関連記事