和田彩花、“次世代担う存在”としての発信力 同じ立場でまなざす力がポイントに

 『Forbes JAPAN』が主宰する「世界を変える30歳未満の30人<30 UNDER 30 JAPAN 2020>」に選出された和田彩花は、同誌のインタビューでこう答えた。「私はアイドル像を変えたいのではなく、選択肢を増やしたいんです。(中略)従来のアイドル像と異なる私に違和感を抱いてくれたら、発信する意味があると思うんです。いろんな人のアイドル像、そして人間の生き方がカラフルになれば良いと、強く願っています」。

和田彩花『美術でめぐる日本再発見 - 浮世絵・日本画から仏像まで』

 2019年6月に15年間所属したアイドルグループ・アンジュルム及びハロー!プロジェクトを卒業した和田は、卒業後も「アイドル」という肩書きを名乗り続け、ライブ以外にも社会問題や自身の問題を頻繁に発信してきた。アイドル活動の中で自身の違和感に気づきを与えてくれた「美術」に関連するトークや執筆活動、文芸誌への寄稿、生理ケアの知識と選択肢を発信するプロジェクト「#No Bag For Me」への参画、最近ではAbemaの報道番組『Abema Prime』にて週替わりMCを担当する。コメンテーターとして出演したニュース番組『スッキリ!』(日本テレビ系)での確かなコメント力が話題になるなど、多様性を考える人々を巻き込むような発信者のひとりとなっている。アイドルとコメンテーターというキーワードが結びつかない人もいるかもしれないが、彼女はグループ在籍時からジェンダーの視点を持って発言してきた。グループを卒業し、個人活動をスタートさせた際にも「私が女であろうが、なかろうが、私がアイドルであろうが、なかろうが、私の未来は私が決める」とオフィシャルホームページに残した言葉は、既存のアイドル像を揺るがすものだったと確信している。

 和田はメディアに出る際に、これまで自分自身が経験してきた違和感や葛藤も交えて話をする。特に“女の子らしさ”が当たり前に求められることに対する違和感は、たびたび語られてきた。濃いメイクをしてはいけず、髪型や言動に制限がある。主体性を殺し、誰かの理想を重ねることはとても窮屈だったろうと思う。だから彼女は、「自分で選びとることの大切さ」を何度も伝える。「自分で考えて“いい”と思ったことを選びとる。その行為が素敵なことだと思うから、似合っている/似合っていないは後で自分が判断するとして、行動を制限してしまうのは違う」(She is)。「服装や見た目、発言も、どんなことも選択できるようになればいいですよね」(TOKION)。

 そうした違和感に気づかせてくれた「美術」、視野を広げてくれた「ジェンダー」や「フェミニズム」といった視点も交えて、彼女は語る。センシティブなキーワードであるが、彼女は「勉強中」という姿勢を持ちながら、私たちを巻き込んでいく。表現者としてライブの映像に取り込んだり、歌詞に落とし込んだり、ポエトリーリーディングをしたり、伝え方は様々だ。『Quick Japan』の連載「未来を始める」などで綴られる“揺らいでいる様”は、不思議と同じ立場でまなざす力を持っている。「エンターテインメントではなく、文化を発信したいんです。見せ物としてのショーは私にとって心地が悪い。演者や裏方や観客……全員がフラットな関係で、ひとつの世界を提示したい」(Forbes)。演奏者たちと半円をつくり、彼らの意見や考えも映像に落とし込むことで、私たちは多様な生き方を目の当たりにする。

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