14thシングル『Blessing』インタビュー

結城アイラ、「苦手だった作詞」を“武器”に変えて切り開いた道 『聖女の魔力は万能です』音楽プロデュースの挑戦を語る

自身の作詞作曲だからこそ出せる結城アイラの自我

ーーこの歌詞はアニメを見てない人にも刺さりますよね。

結城:そうだといいなと思っていて。キャラクターの気持ちに寄り添っている部分もあれば、あまり特定せずに聴けるようにもなっています。例えば、自分の好きなことや好きな人と重ねることもできる。〈笑って佇む光景が/胸に優しい温もりを連れて来るのです〉という歌詞がありますけど、それは好きな人でもいいし、自分の夢でもいい。そういうものに当てはめていくと、歌が変わっていくと思うんです。だから、自分が今、打ち込んでいるものだったり、大事に思っている人のことを思い浮かべながら聴いていただけたら嬉しいです。

ーー結城さん自身は何を思い浮かべましたか。

結城:このコロナ禍でなかなか会えないファンの皆さんのことを考えて歌っているかもしれないです。

ーーそう聞くと、ますますDメロの〈届いてあなたへ…〉を聴いてもらいたいですね。ここの歌いっぷりの良さといったらない。胸がすく思いがしました。

結城:ありがとうございます。自分で作る曲は、誰かに提供する時よりも、遠慮がなくなるというか(笑)。ここは歌いづらいかな? とか考えずに作っちゃうところがあるので、この曲もすごく音の幅が広かったりとか、声の使い方が広いので。大変でした(笑)。

ーー(笑)サウンドもシンプルだから余計に凛として強く響きますね。

結城:アニメのタイトルだけ聞くと、ファンタジー要素やキラキラ要素を入れたい気持ちになっちゃうんですけど、ディレクターとも話して、そこはできるだけ取り除きました。最初に私がデモで作った時は、盛りだくさんのコーラスもあったんですけど、それも思い切って取り除いていく作業をしました。

ーーそれは歌への信頼があってこそだと思うんですよね。音楽プロデュースとして、作詞家や作曲家として、シンガーの結城アイラに求めたものは何でしたか?

結城:今年でデビュー14周年になるので、作品に頼っている結城アイラじゃなくて、もっと自我を出していく結城アイラにしていきたいなと思いました。皆さんの中であまり低音で歌ってるイメージがないと思うんですけど、ちょっと大人になって、一つ、肝が据わった感じというか(笑)。低音の部分も聴かせたいなと思ったので、今までのキーだったら、半音か一音高い楽曲だったと思うんですけど、あえて下げたんです。低音の落ち着いた部分を聴いていただきたいなっていうのが、今回、結城アイラに求めた部分かもしれないです。今の私はこれだよっていうのを聴いていただければなと思ってましたね。

ーーより自我を出せるようになりましたか。

結城:大きな違いは、自分で曲も作ってるっていうところですかね。これまでは本当に素晴らしい楽曲を提供していただいてきたので、これまでの部分を踏襲しながら、今の結城アイラを客観的な視点で作っていく作業ができたので、より思い入れが深い曲になりました。自分としても、こういう楽曲を作れるとは思ってなかったし、すごく新たな1ページというか。チャレンジする機会をいただけて、本当にありがたかったなって思います。

ーーアニメのOP映像は見ましたか。

結城:ショートムービーを見ているような物語性を感じましたね。それに、偶然なんですけど、MVの映像が似た世界観になっていて。優しい楽曲なので、森や海などの自然を舞台に、全編外ロケだったんですね。森の中ではスタッフさんが霧をずっとたいてくださっていて。寒いけど、心の中はあったかくなった、私自身も癒された撮影でした。

ーー一方で、アニメのED主題歌の方はどう考えていましたか。

結城:オープニングは、キャラクターでいうセイちゃん、エンディングはセイちゃんだけではなく、セイちゃんと同じく異世界に召喚された(ミソノ)アイラちゃんにも当てはまるようなイメージにしたいなと思っていました。エンディングもコライトで作らせていただいたんですけど、ちょっと卒業式みたいな雰囲気と、ミドルテンポの日常的なゆったり感を意識して。あと、誰が聴いてもどこかしら共感できるような楽曲にはしたいなと思っていました。セイちゃんはわりと異世界にもすぐに馴染める順応性があるんですけど、アイラちゃんは葛藤があるキャラクターなので、オープニングの方は聖女感、願い、祈りをメインにしたんですけど、エンディングの方では、いい日もあれば、辛い日もあるし、乗り越えなきゃいけない葛藤もあるけど、それでも自分の物語を大事にして、明日に進んで行こう、というテーマで歌詞を書かせていただきました。

ーーED主題歌「Page for Tommorow」にも祝福感がありますよね。〈笑って佇む光景〉と歌うオープニング、〈笑いたいな/一緒に 笑えるように〉と呼びかけるエンディングと、ともに笑顔の未来に向けた希望や祈り、願いを感じますし。

結城:他にも、「Blessing」の〈抱きしめていたい、抱きしめよう〉と「Page for Tommorow」の〈抱きしめて行こう〉もあったりして。そういう共通のものというか、繋がりが感じられるようなものは作りたいなと思っていました。希望を無くさずに生きていこうねっていうことが、二人の共通項でもあるのかなと思います。

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