yama、くじらなど参加する謎のプロジェクト“MAISONdes”とは? 若者の孤独や憂鬱に寄り添う音楽的コンセプトを考察

MAISONdesに期待するもの

 さて、沸々と盛り上がりを見せているこのMAISONdes。この新しい”アパート”に期待することを考えてみたい。

 たとえば現在人気の音楽チャンネル「THE FIRST TAKE」が発足からわずか1年ほどで巨大なブランドへと成長したように、MAISONdesもそれに続く人気音楽チャンネルへと成長する可能性は十分にあるだろう。その中で、THE FIRST TAKEが一発撮りの緊張感や洗練されたデザイン性を特徴としているのならば、MAISONdesのストロングポイントは貴重なコラボのプレミア感とテーマの一貫性だ。六畳一間で暮らす若者の孤独や憂鬱といったような近代社会の普遍的なテーマに対して、新時代のアーティストたちがどう立ち向かうのか。他では見られないコラボによる化学反応も起きるだろうし、若手クリエイターにとってのある種の腕試しにもなるだろう。

For ten minutes, for a hundred yen feat. さとうもか, くじら / MAISONdes

 またネットにおける作品発表は、乱立するよりも(一時期海外のネット音楽シーンでも流行っていた”コレクティブ”的に)共通のラベルを貼ってあげた方がシーンを形成し易い。もっと言うと、美学が生まれ易い。美学は共感を呼び、やがて後継者を生み出し、いずれは時代を作っていく。ここ数年で急激に増えたネット発のヒット曲は、どこか互いに影響し合いながら、ゆるやかに繋がった一種の現象のような印象がある。今は単なる同時多発的な現象であっても、将来これらの音楽が”メゾン系”のような言葉で括られバトンとなり、受け継がれていく未来がやってくるかもしれない。

 そして何より最も期待したいのは、彼らのリアルな叫びである。参加しているのは現在10〜20代、俗に言う”Z世代”に多くファンを抱えるアーティストたち。この世代が持つ見えない怒りや不満、内に秘めたる熱い思いを精一杯受け止めてほしいのだ。コンセプト先行のガワだけの作品でなく、若者たちの生きた声、新しい価値観が詰まった音楽。そういうものが集まるプラットフォームになると期待している。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)https://twitter.com/az_ogi

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