大森元貴、バイラルチャート首位 ダンス&ボーカル表現への挑戦で示した“ソロキャリアの現在地”

 ミュージックビデオで表現されているミニマルな美意識は、サウンドデザインにも通底しており、エフェクトのかかった弦の音色やドラムパターンのループからは装飾に頼らないシンプルで洗練された印象を受ける。そして、ドリーミーなトラックとハイトーンのボーカルが溶け合う神秘的な汽水域が、ミニマルなループに永遠の奥行きと緊張感をはらんだ繊細さを与えているのだ。白眉でもあるA5の音域に届くハイトーンは、Mrs. GREEN APPLEでもほとんど披露されたことがなかったように思う。裏声より高い高音をホイッスル(=笛)にたとえてホイッスルボイスと表現するが、本楽曲のボーカル表現では大森自身が楽器そのものとなり、歌い上げるというより自分自身の身体を鳴らすことで、音楽と一体化しているようだ。

 音楽を総合芸術として複合的なアプローチを仕掛けてきたこれまでの大森のキャリア。今作では、ダンスパフォーマンスや満身のボーカル表現にも挑戦することで、グッと作品を自分自身に引き寄せてきた。主題に戻ってみよう。大森元貴がひとりの音楽家として表現したかったものはなんだったのだろうか。それは、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴ではなく、「大森元貴」一個人そのものを表現したかったのではないだろうか。「French」は、ネイキッドな自身の姿に迫った自画像であり、その画題たる大森元貴が立っている現在地の記録であるように感じられて仕方ない。

■Z11
1990年生まれ、東京/清澄白河在住の音楽ライター。
一般企業に勤務しながら執筆活動中。音楽だけにとどまらず映画、書籍、アートなどカルチャー全般についてTwitterで発信。ブリの照り焼きを作らせたら右に出る者はいない。
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