秋山黄色、愛溢れる濃密なワンマンライブ 東京公演で見せた“ロックミュージシャン”としての姿

 先述の「サーチライト」、スツールに座ってしっとりと歌い上げられた「夢の礫」、そして溜め込んだものを爆発させるようにして鳴り渡った「アイデンティティ」をはじめ『FIZZY POP SYNDROME』の楽曲たちは、どの曲も今だからこそ歌うべきことを結晶にしたような強さとシリアスさを持っているが、それをこうしてワンマンライブの場で届けることこそ、彼がずっと待ち望んでいたことなのだろう。「1年間お待たせしました。俺が秋山黄色です!」という叫びと4カウントから「猿上がりシティーポップ」に突入した瞬間、そこに秋山が見つけた音楽をやること、音楽で何かを伝えることの答えがあるような気がした。

 もちろん、ライブ冒頭でいきなりポケットティッシュを取り出して鼻をかむとか、井手上がソロを弾いている間に彼のマイクをあさっての方向に向けるというイタズラを仕掛けるとか、ライブ中盤でいきなり「大幅に休憩します」といってドラムのライザーの上に寝転がってスマホをいじり出したかと思えば、実は「ママに電話してたけど出ませんでした」とか、秋山黄色らしいひねくれた振る舞いも随所にあったし、「信じていなかったかもしれないけど、僕は存在してるんです」という自虐(?)にはルールを忘れて思わず笑い声を上げそうになったが、それでも秋山はできる限り、ミュージシャンとして、表現者として、真っ当であろうとし続けていたと思う。

 過去曲も新作の曲も全盛りの2時間。「(楽しくて)体感時間としては3分くらいだった」と本編の終わりに彼は言っていたが、それは観ているこちら側も一緒だった。秋山黄色とはなんなのか、なぜ彼は『FIZZY POP SYNDROME』という優しいアルバムを作ったのか。彼と彼の表現の根底にある、音楽とその周りにいる人々への愛が溢れかえる、濃密なワンマンライブだった。

秋山黄色公式サイト

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