桑田佳祐、ライブハウスから音楽を届けるミュージシャンとしての矜持 サザン無観客配信を経たブルーノート東京公演に寄せて
桑田佳祐が2021年3月7日、無観客配信ライブ『静かな春の戯れ 〜Live in Blue Note Tokyo〜』を開催する。会場は東京・ブルーノート東京。世界中の偉大なミュージシャンが名演を繰り広げてきたこの会場に桑田が出演するのは、今回が初となる。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、甚大なダメージを被っている音楽シーン。この未曾有の状況のなかで桑田は、“どんなときも音楽を届ける”という姿勢を貫き、アクションを起こしてきた。昨年6月25日には、ライブを行うのが困難な時期にも関わらず、コロナ禍において誰よりも早く大規模コンサート会場である横浜アリーナで無観客配信ライブ『サザンオールスターズ 特別ライブ 2020 「Keep Smilin' 〜皆さん、ありがとうございます!!〜」』を開催。困窮した数百人にわたるスタッフの雇用を生んだこのライブは、「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」「希望の轍」「真夏の果実」「東京VICTORY」「勝手にシンドバッド」「みんなのうた」などのヒット曲、代表曲を網羅したセットリスト、そして、エンターテインメント性に溢れたステージングによって、日本中の音楽ファンを熱狂させた。さらに大晦日には、無観客年越しライブ『サザンオールスターズ ほぼほぼ年越しライブ 2020『Keep Smilin'〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜』』を行い、「いとしのフィート」「世界の屋根を撃つ雨のリズム」などレアな楽曲から「My Foreplay Music」「夕方HOLD ON ME」といった人気曲まで幅広いナンバーを披露。ファンからも“神セットリスト”という声が集まる充実のステージを繰り広げた。
「Keep Smilin’」を掲げた2回のライブに共通していたのは、音楽ファンに楽しい時間を提供したいという思い、音楽関係者へのエール、そして、エッセンシャルワーカーや医療関係者への感謝。“音楽のポジティブな力によって、少しでも日本を元気にしたい”という強い願いを込めたステージは、サザンのファンのみならず、先が見えない生活を余儀なくされている我々に大きな力を与えてくれた。
そんな2つのビッグコンサートを経て緊急事態宣言下で行われる今回の桑田佳祐のソロライブ。会場も伝統あるジャズクラブであり、去年行われたサザンのアリーナ公演とは大きく異なるが、“音楽で日本を元気にしたい”という思いはしっかりとつながっているはず。そのことは「今はまだ耐え忍ぶ時期が続いておりますが、春の訪れとともに、新しい時代がやってくることを祈りつつ・・・。このライブが、そんな“静かな春”の戯れとして、皆様のささやかな楽しみの一つになりましたら嬉しい限りです」という桑田のコメントからも感じてもらえるはずだ。
さらに桑田は、今回の公演に対し「世の中がどんな状況だとしても、できることといえば引き続き「音楽を皆様に届けること」これに尽きます。今回は、「ライブハウス」というライブの原点の場所に立ち返り、一緒にいてくれる仲間たちと共に、シンプルかつ「少々大人な感じ」のライブをやらせていただきます」という言葉を寄せている。“ミュージシャンである限り、どんな事態になっても、音楽を届けなければいけない”という覚悟と矜持。そして、彼自身の原点でもあるライブハウスーー国民的バンド、サザンオールスターズも当然、ライブハウスから始まったーーでのパフォーマンス。この二つのポイントもまた、今回のライブも大きな見どころだろう。なお、今後も音楽の力が多くの人々の気持ちに寄り添い続けられるよう、またそんな音楽を提供してくれる素敵な場所や人達がこれからも活躍していけるよう願いを込めて、この配信ライブの収益の一部を「Music Cross Aid ライブエンタメ従事者支援基金」に寄付するという。ここにも桑田の音楽に対する、世の中に向き合う姿勢が表れている。
「ひとり紅白歌合戦」などのイベントを除いた桑田のソロライブは、2017年の『桑田佳祐 LIVE TOUR 2017「がらくた」』以来、約4年ぶり。もちろん、聴きたい曲は山のようにある。数々のヒット曲が、ブルーノート東京という場所でどう表現されるかにも注目が集まる。自身のソロ楽曲がユニクロの新TVCMシリーズに、シリーズを通して複数曲タイアップ展開されるなど(第1弾は「若い広場」、第2弾は「いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)」、ソロのキャリアにも再びスポットが当てられているタイミングだけに、今回の公演は“ミュージシャン・桑田佳祐”の豊かな魅力に触れる絶好の機会となるはずだ。
また、今回の公演はブルーノート東京にとっても大きな意味を持っている。コロナ禍以降、多くのアーティストがブルーノート東京に“初出演”を果たしたが、桑田の公演はエポックメイキングな出来事と言えるだろう。この公演に対してブルーノート東京は、「長きにわたり、日本の音楽シーンの象徴的存在の桑田佳祐さんに、ライブの場としてブルーノート東京を選んでいただき、かつ“憧れ”とまでお話してくださって、とても光栄に感じております」とコメント。さらに「将来的に、いつかはお客様をお迎えしてのステージ開催も夢見ています」と“桑田×ブルーノート東京”の今後の可能性にも期待を寄せている。
一都三県に引き続き発出されている緊急事態宣言の最後の日になるはずの3月7日に届けられるパフォーマンスは、“静かな春の戯れ”というタイトル通り、静けさと豊かさ、そして、必ず訪れるはずの平穏な日々を想起させるものになるはず。祈りと感謝を込めたステージングをぜひ、じっくりと堪能してほしいと思う。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。
■公演概要
『桑田佳祐「静かな春の戯れ ~Live in Blue Note Tokyo~」』
配信日時:2021年3月7日(日)19:00~
見逃し配信期間:2021年3月14日(日)23:59まで
チケット料金:¥4,500(税込)
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