『君は音楽で泣いた』インタビュー

新世代SSW・トラックメイカー、“音楽かいと”とは何者か 高校卒業目前に語る、ルーツから目指すアーティスト像まで

「日本人の曲ももっと世界で聴かれるべきやろ」

ーー今回は直近の楽曲ばかりなんですか?

かいと:全部高校生になってから作った曲しか入ってないので、最後に入っている「春の前」は本当に最近できた曲で。

ーーこういうご時世なので、これまでの学生生活とも違ったと思うんですけど、コロナ禍は表現にも影響がありましたか?

かいと:やっぱりちょっとありました。自粛が続いているので、周りと接する機会がなくて一人で抱え込む人が多いのかなというのがあって。そういう人たちに、一人じゃないっていうことも知らせたいなと思って、「希望」というタイトルの曲もあるんですけど、希望を持って生きていきたいなって感じですね。

ーー「希望」の最後の締めの作文的な〈私は私で良かったと思う〉という歌詞に、個人的にはMrs. GREEN APPLEの大森(元貴)さん的な印象が重なりました。

かいと:確かにMrs. GRREN APPLEの曲はすごいなと思って聴いてた時期があったので、ちょっと影響は受けていたかなと思います。

音楽かいと「希望」

ーー〈私は私で良かったと思う〉って書き切れたのはなぜなんでしょうね。

かいと:いつも不思議なんですけど、歌詞を書く時は物語を書く感じで書くんですよね。「希望」を書いた時は女性目線でずっと物語を書いていて、すごくスラスラと書けて。なので自分でもなんでここまで言い切れたのか分からないんですけど、もうその歌詞の中の人になり切ってずっと書いていったら最後、こういう歌詞が生まれたんですよね。

ーー今作は女性が主人公の歌詞が多いですよね。

かいと:自分でも思いました(笑)。あとで見て、「これも女性目線か」って。自分とちょっと切り離せるので、女性目線の方が歌詞が書きやすいんです。たぶん自分のままだと恥ずかしくなっちゃうので(笑)。

ーー「傘の下」もそうですね。ちょっと住野よるさんの作品みたいな感じ。

かいと:ちょうどこの歌詞を書いていた前ぐらいに住野よるさんの小説を読んでいた気がします。何冊も読んだことがあって、その時は『よるのばけもの』だったと思います。小説はもともと好きで、一番影響を受けたなと思うのは河野裕さん。その方の小説の言葉の表現がすごく好きなので、そういう要素も取り入れながら作った感じですね。

ーーなるほど。「Love Myself」はキックが割れた音で、音像としては空間が狭い感じがして。ミックスまで手掛けられるから、そこにも意識的ですか?

かいと:そうですね。ドラムは一番こだわったかなと思う曲で、その時たぶんルイス・コールの曲を聴いてたんですけど、ドラムがすごく印象的な曲があって。自分もこういうドラムの音にしたいなと思って、いろいろ試行錯誤した結果だったと思います。

ーーシンガーソングライターではあるけれど、音像も自分のビジョンがあるとやっぱり特徴的になると思うし。リスナーとしてもパッと聴いて、そういうところが印象に残る方ですか?

かいと:それこそ中田ヤスタカさんの影響も大きいと思うんですけど、自分で全部やるってすごいなって。この世界観を壊さない音にしたいなっていうのが一番にあります。

ーー「Tears」は音数がミニマルですね。

かいと:はい。これは最近の僕の、こういう音楽をしたいなっていうのが結構詰まっている楽曲で。BTSが世界で売れて、日本人の曲ももっと世界で聴かれるべきやろっていう思いがあって。それでちょっと海外を意識し始めたような音が「Tears」かなと思います。

ーーかいとさんは、どうすれば日本とかアメリカとか関係なく音楽が聴かれるようになると思いますか?

かいと:まずはどういう音を作るかが一番大きいかなと思っていて。たぶん日本で今流行っているような曲たちじゃ、海外に行けないなと思うんです。でも海外を意識しすぎても海外には勝てないので、J-POPの良さと海外っぽい音の融合のちょうどいいところを突いた時に、ワッと海外に行けるんじゃないかと思います。

ーー言語の壁はあまり関係ない?

かいと:いや、それもあるとは思っていて。やっぱりBTSを見ていても、結局ビルボードで1位とったのは全部英語の歌詞ですし。「Dynamite」の次に出した「Life Goes On」はほとんど韓国語でしたけど、1回海外に行くには英語が多い曲......全部英語とは言わなくても、英語を入れるのは大切かなと思います。

「世界観を全部自分で作り上げるなら、音楽以外の武器も欲しい」

ーーそういえばかいとさんの曲は尺が短いですね。

かいと:サブスクを意識しての構成は多いです。ただ、今回のEPはそこまで海外を意識した曲ではなくて、「春の前に」とか「希望」はJ-POPの歌詞を重視して作った曲なので。これからそこをどうしていくかなっていうのは、自分の中でも課題ではあるんですけど。

ーーその「春の前に」は卒業式のために書いたそうで。本当に式で歌うんですか?

かいと:卒業式本番に全員で歌うのはコロナの影響で無理になったので、しっかり距離を開けて1クラスずつ録音して、音源化したものを卒業式で流すっていう計画になってます。

ーーもしかしてその録音担当もしているんですか?

かいと:全部やってます(笑)。学校にパソコンとマイク持って行って。

ーーそういう学校での立ち位置も新しいですね(笑)。

かいと:確かに(笑)。高1、高2くらいまではずーっと黙ってバレないようにやってきたつもりだったんですけど(笑)。

ーーデビューのタイミングで周囲に広まったんですか?

かいと:先生方はデビューするときのCDで知ってくれたんですけど、クラスの子たちには三阪咲さんに楽曲提供した時からバーっと広まった感じですね。

ーーかいとさんは学校ではどういうキャラの人なんですか?

かいと:自分でも分からなくて。体育祭で応援団に入るみたいなキャラではないし、どちらかというと隅で友達とひっそりしゃべっていたいようなタイプですね。1年生の時も応援団に入らずで、2年生の時も入らず、最後3年生の時もやっぱり入らなかったんですけど、「音楽を担当してくれ」と言われて、応援団の子たちと卒業式のために作り上げたっていうのはありますね。

ーー周りからしてみたら、あまりかいとさんの正体が分かっていなかったのに、卒業のタイミングで曲を作ってきたみたいな?

かいと:はい。「あいつ急に卒業式の曲、作ってきた」みたいな感じですね(笑)。

ーー面白いですね。同級生以上に外の世界に知ってる人が増えてるという。

かいと:自分でも追いついてないですね、理解が。

ーー高校卒業後はどうするんですか?

かいと:高校卒業後は映像と写真を学ぼうと思って芸術大学に行きます。やっぱり音楽以外の武器も欲しいなと思って。世界観を全部自分で作り上げるんだったら、写真とか映像もできた方がいいなと思ったので、その2つを学びに行きます。

ーー総合的なクリエーターという意味ではどんな人にシンパシーがありますか?

かいと:これも特になくて......。周りと違うアーティストとして上に行くにはどうしたらいいかなって考えた時に、映像と写真が思い浮かんだので、誰かに影響受けてとかいうこともなく決めた感じです。自分でもどうなるのか分からないですけど、周りとは違う異質な感じで出たいなってずっと思ってるので、そこは異質なまま行こうという感じですね。

音楽かいと『君は音楽で泣いた』

■配信リンク
音楽かいと EP『君は音楽で泣いた』
配信中 ダウンロードはこちら
<収録曲>
1.希望
2.Love Myself
3.傘の下
4.逆転
5.Tears
6.春の前に

音楽かいと Twitter

関連記事