ヒゲダンにも影響与えたメロデスバンド Children Of Bodom ジャンルの壁を越えて挑んだ、アレキシ・ライホの音楽的功績

Children Of Bodomの影響はヒゲダンにも

 2010年代に入ってからも、新たなプロデューサーと組んで音像の一新を図った『Relentless, Reckless Forever』(2011年)、初期ブラックメタル色も強く感じさせる<Nuclear Blast>移籍作『Halo of Blood』(2013年)、セカンドギタリストのローペ・ラトヴァラが脱退したことで、メロディよりもバンドとしての“塊”感が強く出た『I Worship Chaos』(2015年)、近作のなかでは特に多彩かつバランスの取れた『Hexed』(2019年)と、比較的コンスタントに作品を残してきた。チャートアクションも変わらず好調で、フィンランドでは絶えず1位~2位を獲得し続ける国民的な人気ぶりである。そして、過去の名曲に安住することなく、10枚のアルバムを通して絶えず意欲的な創作を続けたアレキシ・ライホは、次なる変化として新バンドの結成を考えていた。その名も、Bodom After Midnight。3rdアルバム『Follow The Reaper』収録曲から名を取ったものだ。Children Of Bodomにいったん幕を下ろし、アレキシは新たな音楽の旅に出ようとしていた。刺激に満ちた2020年代が待ち受けているはずだった。

 そんな矢先に届いた突然の訃報。死因の詳細は発表されていないが、アレキシは以前から体調面での問題を抱えていたようだ。間違いなく一時代を築いた素晴らしい音楽家であっただけに、新しいバンドでの活躍が見られないのは心の底から残念で悔しい。本稿で述べた彼の功績はほんの一部に過ぎず、影響を受けたバンドの数は計り知れない。繰り返しになるが、チルボドがいなければメタルとの接点がなかったリスナーもきっと多いはずだ。メロディック・デスメタルを確立し、外へ広げてポップスにも接続し、それでいて誰よりもメタルバンドとしての信頼と矜持に満ち溢れていたアレキシ・ライホ。彼の作った美しくも破壊的な名曲たちは、大きなリスペクトを以ってこれからも人々の心に残り続けるだろう。

CHILDREN OF BODOM - Morrigan (OFFICIAL TRACK)

 最後に。そんなチルボドからの影響を公言するミュージシャンが、日本にも数多くいる。その一人がOfficial髭男dismの藤原聡だ。メタラーだったと自ら名乗り、「高校の時の失恋ソングはSlipknotなんです」(引用:『MUSICA』2018年5月号)とも発言していた藤原だが、『Stand By You EP』収録の「FIRE GROUND」について、インタビューでこのように語っていたことがある。

「チームのみんなとディスカッションしていく中でも『ヒゲダン流のハードロックをやれたら面白そうだよね』みたいな話が出て。(中略)ソロのギターとキーボードの掛け合いは結構Children Of Bodomとか参考にして作ってて」(『MUSICA』2018年11月号)

Official髭男dism - FIRE GROUND[Official Video]

 今のJ-POPを最前線で牽引するヒゲダンの中にも、こうしてアレキシ・ライホのDNAは息づいているのだ。ジャンルの境界がますます曖昧になってきている昨今、J-POPのフィールドでもメタルやハードロックからの影響を公言するアーティストは増えていて、マカロニえんぴつのはっとりも以下のように発言している。

「ハードロックの曲は小さい時から家で流れたりしてたんですよ 。(中略)ScorpionsとかDeep PurpleとかMichael Schenker Groupとかのライヴ映像を凄く観させられてて、俺も凄く好きで。だからギターというものに対して、無意識に憧れとかカッコいいって思うものがあったのかもしれない」(『MUSICA』2019年2月号)

 何気なく聴いている音楽の中にも、実は様々な要素が混ざり合っており、そのルーツを辿っていくことで思いがけない素敵な音楽との出会いがあるかもしれない。アレキシ・ライホ亡きこれからの世界でも、彼は音楽のなかで生き続ける。そして、Children Of Bodomはいつまでも人の心を震わせるメタルバンドであり続けるのだ。

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