菅田将暉、映画『STAND BY ME ドラえもん 2』主題歌「虹」バイラル首位 ウエディングソングを越えた“大切な誰か”を想う1曲に

 菅田将暉の素直でまっすぐな歌声は、スッと胸に刺さる不思議な力を秘めているような気がしてならない。これほどまでに抵抗なく言葉が心に飛び込んでくる生理食塩水のような歌声は稀有だ。歌い出しの〈泣いていいんだよ〉の一言はまぎれもない自分自身に語りかけられているようでドキッとさせられる。誰しも少なからず泣きたい気持ちを抱えて生きているのだ。日常では平静を装い、しっかりガードしているそんな心の襞にそっと寄り添ってくれる歌声は、まるで人懐っこい犬のようでもある。

 菅田将暉の魅力をしっかり理解し、素晴らしいプロダクションに落とし込んでいる石崎ひゅーいのクレバーさも忘れてはならない。壮大なストリングスを用いて大げさに盛り上げたり、半ば強引に琴線に触れさせるのではなく、菅田将暉のシンガーとしての強度を最大限に引き出すシンプルな楽曲のアレンジにも好感が持てる。「わざとらしさ」と「素朴さ」の見極めが難しいウエディングソングの歌詞の制作にも苦労したのではなかろうか。ましてや、菅田将暉のまっすぐな歌声にかかれば歌詞の弱さはすぐに露呈してしまう......が、かねてより交友のある菅田将暉と石崎ひゅーいの親密な関係性と相互理解があってこそ成立した特別な楽曲なのかもしれない。

 菅田将暉「虹」はウエディングソングの枠にとどまることなく「わたし」と「あなた」をテーマにした幅広い解釈もできるだろう。たとえば夫婦や恋人だけでなく、友人や親子の関係にも置き換えられるかもしれない。もちろん未来の「あなた」との関係にも。現代を生きる誰しもに寄り添ってくれる本楽曲は、辛いことや我慢の多かった2020年をそっと包み込んでくれる大切な1曲になりそうだ。

菅田将暉 『虹』

■Z11
1990年生まれ、東京/清澄白河在住の音楽ライター。
一般企業に勤務しながら執筆活動中。音楽だけにとどまらず映画、書籍、アートなどカルチャー全般についてTwitterで発信。ブリの照り焼きを作らせたら右に出る者はいない。
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